ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
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この記事は2023年7月27日に「テレ東BIZ」で公開された「日本独自の戦略で復活!~フライングタイガー 執念の闘い:読んで分かる「カンブリア宮殿」」を一部編集し、転載したものです。

パーティグッズ、キッチン用品…~デンマーク発のオシャレ雑貨店

子どもの誕生パーティーをはじめ、若い母親たちが「パーティーに欠かせない」と言うのが「フライングタイガー」の雑貨だ。

「フライングタイガー」は北欧・デンマークで1988年に創業。最初は全ての商品が10デンマーク・クローネ(当時のレートで約200円)という、いわばデンマーク版の百均ショップだった。まだ創業35年だが、34の国と地域で900店舗近くを展開するグローバル企業に成長した。

2013年に表参道スクエアにオープンした東京1号店。迷路のような店内には、カラフルな商品がぎっしり。ここだけで約2,500アイテムが販売されている。

持っているだけで、「何それ?」と聞かれそうな「電卓付きノート」は660円。ワンタッチでテーブルに付けられるカップホルダーは330円だ。客が口を揃えるのが「お手頃」「リーズナブル」。中心価格は100円から500円ほど。買いやすさが大きな魅力となっている。

▽持っているだけで、「何それ?」と聞かれそうな「電卓付きノート」

ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

「フライングタイガー」には熱烈なファンもいる。

都内在住の江口由夏さんのキッチンは「フライングタイガー」だらけだ。たくさんあるカッティングボードは全て「フライングタイガー」。かわいいハート型の「メジャーカップ」(385円)や、バナナの皮を剥いて上から押すだけで、一瞬にしてちょうどいい輪切りができる「バナナスライサー」(165円)も。中でも最も重宝しているのがコットンをミツロウでコーティングした「ミツロウフードラップ」(660円)だという。

アウトドア用品のコーナーにもアイデア商品が並ぶ。缶ビールや調味料が全て収まる便利なホルダー「フェスティバルベルト」は880円。「物干しロープ」(550円)にはビーズがついていて、間隔を調整しながら洗濯物を挟むことができる。張るだけで使えるので家で使うのにも便利。ちなみに使い終わったら小銭入れほどのサイズになる。

▽缶ビールや調味料が全て収まる便利なホルダー「フェスティバルベルト」

ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

「フライングタイガー」の日本初上陸は2012年。大阪のアメリカ村に作られた1号店には客が詰めかけ、長蛇の列ができた。オープンからわずか3日で全ての商品が売り切れ。売る物がなくなり休業するという盛況ぶりだった。

その勢いのまま2013年に東京に初出店するなど都内に大型店を続々出店。「北欧版百均」と評判を呼び、特に若い女性たちの間でブームになった。

だが、飽きられるのも早かった。潮が引くように客は減り、多くの店が赤字に陥った。

その「フライングタイガー」が今、復活している。店舗を年々増やし、現在44店舗と上陸以来最大の数に。今年度の売り上げは過去最高になる見通しだ。

リピート販売に郊外型店舗~日本法人の独自戦略で復活

ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

復活の立役者と言われるのが「フライングタイガー」の日本法人ゼブラジャパン社長・松山恭子(58歳)だ。

松山がゼブラジャパンに入社したのは、多くの店が赤字になっていた2017年。まず店に立ち、どうすれば業績が改善するかを考え抜いた。

「我々のブランドは広告をかけない。ある程度ターゲットを絞って、(客と)コミュニケーションを図ることが大事なのではないか、と」(松山)

▽「コミュニケーションを図ることが大事なのではないか、と」と語る松山さん

ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

それまでの「フライングタイガー」は全世代の客を相手に商品を作り、販売していた。そのため商品は全てのカテゴリーがまんべんなく揃えられ、客によっては関係のない商品も多かった。松山は、メインターゲットを小さな子どもを持つファミリー層に絞り込んだ。

それにともなって若い母親達が興味を持つキッチン用品や、子ども向け商品の売り場を拡大。ターゲットを明確にした上で渋谷や新宿などの都心の店を閉店。代わりにファミリー層が多い郊外のショッピングモールなどに出店した。

千葉市幕張のイオンモールの中にあるイオンモール幕張新都心ストアをのぞいてみると、メインターゲットのファミリー層で賑わっていた。レイアウトもひと工夫。入ってすぐの場所には子どもたちが喜ぶおもちゃを並べた。狙い通り、子どもが「寄っていこう」と母親を引っ張ってくる。

さらに松山は2023年3月、川崎の駅ビルに50坪もないアトレ川崎ストアをオープン。これは従来の店舗の半分以下で、決まった出入り口はなく、どこからでも入れるようになっている。

「ここはあえて利便性と買いやすさ、見やすさを考慮し、どこからでも入れてすぐ買えるのが、以前と大きなコンセプトの違いになります」(事業開発部・古田秀治)

忙しい主婦が買い物のついでに気軽に立ち寄れる店を作ったのだ。

店舗改革を進める一方、仕入れルールも改革した。「フライングタイガー」の大きな特徴が毎月300アイテムもの新商品を出し続けていること。商品は絶えず入れ替わるスタイルで、新商品の販売は1度きり。「売り切れごめん」がブランドルールなのだ。だが一方、「ほしいと思って買いに行くともう売り切れになっていた」という声も出ていた。

そこで松山は「売り切れごめん」のルールを超えて、新商品のリピート販売を始めた。

「デンマークやヨーロッパで売れる定番品と日本で売れる定番品はちょっと違う。新商品の中に、定番にできるものがあるのではないか、と」(松山)

新たな定番商品を新商品から生み出す日本の独自戦略。本部から再び買う仕組みを松山は「リバイ」と名付けた。毎月、売れ行きを見ながら何を「リバイ」するかを決めている。

「『リバイ』というプロセスが導入されたことで、日本独自で商品を復活させるなど、可能性が広がってきています」(商品部・伊藤歩)

この仕組みによって新たなヒット商品が続々生まれ、売り上げアップに貢献している。

「私がラグビー好きなので『1チーム』と言ってきたのですが、それをやることでブランドの成長が実現できると思っています」(松山)

▽毎月、売れ行きを見ながら何を「リバイ」するかを決めている

ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

毎月300の新商品を販売~3カ月で売り切るのが流儀

「フライングタイガー」の商品は全てデンマークのコペンハーゲンにいる開発チームが作っている。この日は日本のオフィスに8月に発売する新商品のサンプルが届いた。ただし、デンマークで開発した新商品を全て買い付けるわけではない。各部門のバイヤーたちが日本で売れそうな商品を選び、仕入れているのだ。

卸価格はデンマーク本社が指定してくるが、販売価格は日本が決める。仕入れ値に利益を乗せつつ、客が買ってくれる価格を検討する。帽子のように被る「アンブレラハット」は550円で売ることになった。「お店で見て『これで500円か』となる」と言うのだ。

▽販売価格は日本が決める「アンブレラハット」は550円で売ることになった

ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

しかし、価格の検討はこれで終わりではない。閉店後にスタッフが始めたのは、一部の商品の値札剥がしだ。

「毎週、金曜日に価格が変わります」(表参道ストア店長・南結子)

いったん決めた価格も、売れ行きを見ながら1週間単位で変えてしまう。220円で売り出した「ドライブラシ」は165円に、「ポーチ」は660円から550円になった。

フライングタイガーでは新商品は3カ月で売り切るのが流儀。値段を下げても売り切り、絶えず新しい物を提供し、客を飽きさせないようにしているのだ。

「しつこい」交渉の果てに…~日本独自の仕組みを確立

6月下旬、松山のもとを訪れたデンマーク本社グローバル部門のトップ、イェンス・ミケルセン。松山とはさんざん協議を重ねてきた間柄だ。

「ずっと話し合いをしてきたので、彼女の人柄は知っています。とても熱心でしつこい人です」(ミケルセン)。松山の「しつこさ」は本社も評価している。

▽「とても熱心でしつこい人です」と語るイェンス・ミケルセンさん

ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

松山は聖心女子大学文学部を卒業後、世界的な投資銀行ゴールドマン・サックスに入社。その後、キャリアアップを重ね、「ユニクロ」や「ジーユー」ではマーケティング部の責任者として活躍した。その手腕を買われ2017年、52歳にしてゼブラジャパンに入社、経営企画部ディレクターに就任した。

しかしそこには想像以上に厳しい現実が。「どうしないといけないか、(全員が)共通認識を持たないと会社が潰れるなと思いました」と言う。

倉庫には「どうしてこんなに?」という量の在庫が山積みにされていた。デンマーク本社が過去のブームの頃に売れた数量を日本に割り振り、それが売れ残っていたのだ。

日本市場を知らない本社の言いなりではまずい。松山は日本の独自改革を決意する。

まずやろうとしたのが新商品を再生産してもらう「リバイ」。この戦略のきっかけはコロナの感染拡大だった。全世界の店舗を一時的に閉鎖。その結果、生産調整が入り、新商品が入ってこなくなった。

「とにかく過去に売れた商品を再生産できないかとデンマークと協議して、それで買い始めたところ『そんなことができるんだ』ということが分かった」(松山)

苦肉の策だったが、この時、再生産した商品が予想以上に売れた。松山は「これをやめる手はない」と考えたのだ。ただし、日本の戦略として続けていくためにはデンマーク本社を説得しなければならない。

「繰り返ししつこく『なぜこれをやるのか』を伝えて、本社に理解してもらわなければいけませんでした」(松山)

何度掛け合っても歯切れのいい答えは返ってこなかったが、松山は引かない。本社が見過ごせない売り上げデータなどを駆使し、説得し続けた。

「リバイした商品がこんなに売れているというデータを見せて、利益率も高いからこれを仕組みにしたい、と」(松山)

粘り強い交渉を繰り返し、ついに日本はふだんからリピート販売できるようになった。

その中からヒットも生まれる。寝たまま本が読める「寝たままメガネ」(1,320円)は最初に販売された時は5,500本だったが、リピート販売にかけられると売れ続け、4万本以上まで伸びた。新商品として販売された時は9,100個が売れた「スマホプロジェクター」(880円)は、リピート販売で8万個越え。ほしい人が後から後へと現れたのだ。

▽「スマホプロジェクター」(880円)は、リピート販売で8万個越え

ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

「他社さんだとリピート販売は当たり前かもしれないけど、我々の中では当たり前ではない。それをやったことでビジネスのやり方も変わってきたと思います」(松山)

続いての改革は小さな店舗だった。最初に始めたのは限られたスペースでの期間限定ストア。これが思いのほか大盛況となり、常設を望む客の声がいくつも聞こえてきた。さらに施設側からも出店の要請があった。しかし、この件もすんなりとはいかない。

「最初、その売り場面積の大きさだとデンマークから『ノー』と言われたんです」(松山)

「フライングタイガー」では、1箇所の出入り口から迷路のような通路を一方通行で歩いて買い物する。これを創業時からの「ブランドルール」として守ってきた。大きな店舗に一つの出入り口というのは鉄の掟だった。

この件も松山は粘り強く交渉。結局、1年議論を重ね、了承を得た。気軽に入れる小型店舗は主婦層などに支持されて業績を上げる。

この日、グローバル部門のトップとともに来日したのは、グローバル店舗開発責任者のハカン・シュトカレ。日本の店舗の視察に来たのだ。

「実際の店舗を自分の目で見てこそ役に立つ。写真やイラストで見てもだめなんだよ」(シュトカレ)

日本で生まれた小型店舗は今後、グローバルに展開。店舗モデルのひとつになるのだ。 ※価格は放送時の金額です。

~村上龍の編集後記~

ゼブラジャパンCEO 松山恭子,カンブリア宮殿
(画像=テレビ東京)

2002年、ユニクロのマーケティング部リーダーとなり、2010年にはGUのマーケティング部長となる。2019年、ゼブラジャパンのCEOに。

約20年間、何を得たのか。Flying Tigerは数千点におよぶ商品を用意。デンマークの専門チームがデザインを手がけている。

日本で顧客アンケートを行い、狙うべき客層は小さな子どもを持つ母親だと。それまでは言われるままに商品を仕入れていた。売り場を含め、いくつかを日本主導に切り替えた。頑固だと評された。

松山さんは20年間に妥協しない方法論を手に入れたのだ。

<出演者略歴>
松山恭子(まつやま・きょうこ)
1965年、東京生まれ。1989年、聖心女子大学文学部卒業後、ゴールドマンサックス入社。2002年、ファーストリテイリング マーケティング部長就任。2010年、ジーユー マーケティング本部長就任。2017年、ゼブラジャパン経営企画部長就任。2019年、代表取締役CEO就任。

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