目次
産経ニュース エディトリアルチーム
共和建物管理株式会社の設立は1991年。2023年に32年目を迎える。平浩代表取締役が勤めていた百貨店を退職して、母親が営んでいた清掃事業を引き継いで株式会社として再スタートした。平社長は単なるビルの清掃業務だけではなく、ビル内設備管理や内外装工事、建物管理コンサルティングまで請け負うビル総合管理サービスを視野に、最新技術や手法を積極的に取り入れてICT活用でも業界の先陣を切ってきた。(TOP写真:「人にかかわる仕事だからこそ、親切と丁寧を信条にしてきた。これが経営理念です」と話す平浩社長)
設備工事の売上比率は5年後の2028年に3割を目指す。そのため、高度なスキルの人材採用と一般建設業許可を取得
現在の事業別売上比率は、ビル清掃業務が8割、設備・工事が2割だ。清掃業務は神奈川県内や東京都を中心に120ヶ所以上のビル清掃現場に400人以上が従事している。15年ほど前に始めた設備・工事業務は今後の急成長を見込んでいる事業だ。
電気機械設備の保守管理や内外装施工などビルの資産価値を高めるトータル施設管理が強みで、受注拡大を目指して高度なスキルの人材採用にも乗り出した。平社長が「5年後には清掃と設備・工事を5対5に持っていく」と話すように、高度なビル総合管理ノウハウを武器にしたスペシャリスト集団を目指している。
2022年12月には大型受注を請け負えるよう一般建設業許可を取得したほか、1級建築士に加え1級建築施工管理技士など高スキル人材を採用。メガバンクの店舗改装の受注は「3年先まで予定が埋まっている」(平社長)ほど好調だ。メガバンクの指定業者に選定されたことでさらなる受注拡大も期待できるという。
ビルメンテナンスに関わる現場からの情報・報告を即把握できるシステムを独自開発し「横浜知財みらい企業」の認定を受けた
一般的なビル管理会社と一線を画す試みが、業界に特化したビルメンテナンス管理システム「iCoCoChi(いここち)」の開発だ。iCoCoChiは多岐にわたる現場のスマートフォンやタブレット端末から送られてくる様々な報告(写真付)をリアルタイムで確認できるアプリで、現場の「気付き」を即座に把握してやり取りができる業界初のシステムだ。
平社長は「6年ほど前に現場の情報をすべて知りたいと思って作った。管理職からの報告を待っていてはタイムラグが生じてしまい、現場で起きている日々の出来事がわからなくなる」と開発経緯を説明する。iCoCoChiをはじめ従来にない発想で業務へのICT活用を進める同社は、横浜市から2013年に「横浜知財みらい企業」として認定を受けた。
しかし、専任のソフトウェア技術者のいない同社にとってiCoCoChiを長期にわたり保守や機能強化していくのは負担が大きい。2024年以降は外部のICTベンチャーのアプリにiCoCoChi機能を付加して、新たに受注する大規模ビルの管理に導入していく方針だ。
2014年には人事管理業務は人事給与管理システムで、ビルメンテナンス業務は専用アプリで再構築し、全社管理に移行
同社が業務にICTソリューションの活用を始めたのは10年ほど前にさかのぼる。2014年には各部門の担当者がExcelで表計算していた個別業務を見直し、人事管理業務は人事給与管理システムで、ビルメンテナンス業務は専用アプリで再構築し、全社管理に移行した。
現場の増加とともに煩雑化していた管理業務をそれぞれ定評のあるアプリで一元管理したことで業務効率は向上。導入作業を担当する柏井有希子取締役総務部長は「人事給与管理だけでなく、スケジュール管理や請求書発行、原価管理も一貫して行えるようになった」と効果を実感している。
コロナ感染拡大前にテレワーク導入。クラウドストレージ、Web会議も利用。業務効率も大幅に上がり働き方改革を実践
2019年には新型コロナウイルスの感染拡大が社会問題化する前に、営業の業務効率化を目指してテレワークのテスト利用を実施。営業部門にノートパソコンやモバイルルーターを配布して、事業所に帰社せずに自宅からでも業務報告できるようにした。その後、新型コロナウイルスの感染拡大により産業界で一斉にテレワーク導入が進んだが、いち早く実践していた同社は大きな混乱もなく感染防止と業務効率化を実現した。
平社長は「業界全体の課題だが、誰かがどこかで365日働いている仕事なので、働き方にメリハリをつけたかった」と早くからテレワークに注目した理由を説明する。さらにテレワークの本格実施に向けてクラウドストレージを導入し、データの共有化とセキュリティ対策を図った。外出先からでも業務データにアクセス可能になったことで業務効率も格段に向上した。クラウド環境でファイルサーバーとストレージの間で双方向の同期を取ることでBCP(事業継続計画)対策も行っている。
メール管理やWeb会議のアプリも順次追加し、全社的なテレワーク環境を整備するとともに、業務効率化による残業時間削減や有給休暇取得を推進。働き方改革にもつながっている。
2021年には安否確認サービス、請求書業務の電子化・自動発送システムを導入し、業務部門のテレワークも実施した。さらに静脈認証による勤怠管理システム、文書管理の電子化によるペーパーレス、電子帳簿保存法への対応開始と、ICTベンダーと相談しながら矢継ぎ早にICTソリューション活用による業務改革に取り組んできた。
ビル全体の資産価値向上をサポートする次世代型トータルマネジメントを目指す。しかし最後は現場力
従来のビル管理会社の業態から脱却し、ビル全体の資産価値向上をサポートする次世代型トータルマネジメントを目指す同社にとっては「ICT化はまだ途上だ。技術はどんどん進んでいる」(平社長)と先進技術の活用にあくまでどん欲だ。
現在検討しているのは、紙への入力が主体の勤怠管理をスマートフォン入力に変更することだ。清掃業務の現場では高齢のパートタイマーも多く、スマートフォン利用が課題だが、「60%がスマートフォンを利用するならコストは半減できる」というICTベンダーの試算を参考に、アンケート調査を実施中だ。
ICT武装にまい進する同社だが、平社長は「当社の一番の強みは現場力だ。管理職も皆、現場からスタートして現場をよく知っている。商社型ではなく実務型企業であることに変わりはない」と言い切る。ICTソリューションによる業務改革と現場力の両輪で業界をリードするビルのトータルサポート企業に突き進む。
企業概要
企業名 | 共和建物管理株式会社 |
---|---|
本社 | 神奈川県横浜市中区長者町4-9-8 |
HP | https://www.eco-buil.co.jp |
電話 | 045-651-7611 |
設立 | 1991年12月 |
従業員数 | 450人(パート含む) |
事業内容 | ビル内外清掃、設備保守・点検管理、ビル内外装施工等 |