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(画像=PIXTA)

営業は、すべての会社で必須の部門である。そのため、経営者も営業についての知識が求められる。「誰に」「どんな商品を」「どう売るか」という自社の営業方針を示すには、経営者が営業の知識を持つことが不可欠だ。今回は、経営者に役立つ営業関連の資格や、資格の取得難易度について解説していく。

目次

  1. 経営者に営業の資格は必要?プレイヤーは必須
  2. 資格を持っておいたほうがいい3つの理由
    1. 理由1. 総合的な能力の向上
    2. 理由2. キャリアアップ
    3. 理由3. 営業ノウハウの伝達効率がいい
  3. 営業にも活かせる!経営者におすすめの資格6選
    1. 資格1. 中小企業診断士……企業の経営に関する知識が身につく
    2. 資格2.日商簿記検定……帳簿から会社を読み解く
    3. 資格3. マーケティング・ビジネス実務検定……マーケティングの理解促進
    4. 資格4. ビジネスマネジャー検定……業務・人・リスクのマネジメント力を身につける
    5. 資格5. 知的財産管理技能検定……知的財産権のエキスパート
    6. 資格6. MBA(経営学修士)……経営者としての基本を学び直す
  4. 余裕のある経営者は営業に関する資格取得検討をしてみよう

経営者に営業の資格は必要?プレイヤーは必須

そもそも、経営者に営業の資格が必要なのか疑問に思う方もいるだろう。しかし、資格というのは他者にその実力の程度を見せる信用のために存在するものではない。経営者が営業の資格を取得すれば、営業不振の際に問題点を見つけやすいなど、社員の力を底上げするのに役立つのだ。

また、プレイヤーは営業の資格を持っておくことが必須である。なぜなら、営業はやり方を間違えると成果を上げることが難しいからだ。以上のことから、実際に営業を行うプレイヤーはもちろん、指揮を執る経営者も営業の資格が必須といえる。

資格を持っておいたほうがいい3つの理由

次に、経営者が営業の資格を取得しておくと役立つ具体的なケースを見ていこう。この章の最後では、経営者が営業の資格を取得していると営業ノウハウを部下に伝達するときに役立つことも解説していく。

理由1. 総合的な能力の向上

人は経験によって成長していく。トラブルに一度でも対応できれば、それが自信となり、知識となる。次のトラブルを防ぐ対策が練られたり、トラブルが発生したとしても冷静で迅速な判断ができるようになっていったりするだろう。

しかし、すべての方面で豊富な経験が積めるわけではなく、自分が得意ではない分野や、あまり知見がない分野でも経営者は対応しなければいけない。そのような状況において、資格取得は効率的に知識と技術を身につけるために有用だ。どの業界でも共通するような基礎的な知識が得られると同時に、いくつかの資格取得により、そのプロセスから総合的な能力の向上も期待できる。

理由2. キャリアアップ

キャリアを積み上げていくと、より専門的な知識の必要性が高まる。また、いずれ部下を持つ立場になると、業務の遂行責任や部下の指示・管理責任を負うようになっていく。経営者としても、時代に即した商品展開やサービス提供を視野に入れなければならない。時代の変化を認識し、うまく自社の経営に取り入れていかなければ、売り続けることができなくなるからだ。

つまり、常に学び続ける者だけがキャリアアップしていけるといえる。そのための指標として、資格取得は分かりやすい成果となるのだ。

理由3. 営業ノウハウの伝達効率がいい

社員への営業ノウハウの伝達については、忙しい中でたくさんの時間を割かなければいけない上に、何度言っても理解されているのか手応えもない状態で、うまくいかないと悩んでいないだろうか。

社員が少人数の会社の場合、経営者本人が社員教育に携わる機会も少なくないだろう。社員へゼロから知識を伝えていくのは伝達効率が悪く、少し前まで学生だった新入社員だと専門用語などの言葉自体が伝わらないという問題まで起こってくる。これでは、多くの時間と労力がかかって疲れてしまう可能性が高い。

このような場合、資格取得を促すと効率がいい。資格はどの業界でも共通する、ビジネスにおける基礎知識を初歩レベルに据えているものも少なくない。そういったものから学び、教育を担当する経営者自らも同じ資格を取得しておくことで、基礎知識を持った社員への、自社でのノウハウを共通言語で伝えることができる。

また、自他ともに評価基準がはっきりしているため、社員のレベルを計りやすいといったメリットもある。基礎レベルの教育を資格に任せてスキップできる上に、共通言語を持てることで伝わりやすくなり、営業ノウハウの伝達効率において大幅な改善が期待できる。

営業にも活かせる!経営者におすすめの資格6選

経営者が取得しておくと便利な営業関連の資格を6つ紹介し、各資格の中で具体的にどう役立つのかを解説する。

資格1. 中小企業診断士……企業の経営に関する知識が身につく

国家資格である中小企業診断士は、経営について一通りの幅広い知識があると認められる資格である。業種に関わらず、どのような企業でも通用する経営知識であるため、異業種でも経営内容が理解しやすく、営業としての提案がしやすくなるなどメリットが多い資格だ。

試験内容は、1次試験では経営に関する法務だけでなく経済学や財務、会計、生産管理や店舗運営などの運営管理のほか、2次試験では人事やマーケティングなどに関する実務事例による記述試験や面接が行われる。

この資格の勉強には、通学以外にもテキストを買いそろえて独学で勉強する人もいる。しかし、経営者がプライベート時間で勉強して合格を目指すには複数年かかる上、合格率も低く、難易度が極めて高い資格であるといえる。

この資格取得ができれば企業の経営体質が分かり、経営者として自社の経営に役立つことはもちろん、営業先の企業や、部下の提案の良し悪しが判断できるなど、知識を強力に下支えしてくれることだろう。

資格2.日商簿記検定……帳簿から会社を読み解く

正式名称は「日本商工会議所及び各地商工会議所主催簿記検定試験」という。その名の通り、日本商工会議所または各地商工会議所が実施しており、初級・3級・2級・1級の4段階がある(平成29年度に初級が創設され、4級は廃止された)。企業活動のお金の動きを帳簿に記し、最終的に1年の資産の増減や収益について、下記の2つにまとめるものだ。

・貸借対照表(たいしゃくたいしょうひょう)
・損益計算書(そんえきけいさんしょ)

貸借対照表では会社の財産が、損益計算書では1年間お金をいくら使っていくら儲けたかが、分かるようになっている。これらは自社における1年間の収益活動の成果が見えるもので、銀行や投資家が企業評価のために見る重要な表である。経営者としては、表から会社の成長や問題が読み取れるようになっておきたいものだ。

資格3. マーケティング・ビジネス実務検定……マーケティングの理解促進

マーケティング・ビジネス実務検定とは、国際実務マーケティング協会が実施する民間資格である。BtoBビジネスにおいて、現在のセールスでは商品やサービスを実際に売るまでに、見込み客を集めるところから顧客への育成、商談へと長い期間を必要とするプロセスが主流となってきており、マーケティング知識が必要不可欠だ。

段階的には、マーケティングについて実務における基礎レベルがあると認められるC級から、マーケティング戦略を運用できるとするB級、立案から運用管理までマネジメントできるとするA級の3つに分かれている。

営業が必要とする知識であることはもちろん、経営者にとっても、経営の方向性としてマーケットの変化や消費者動向を敏速に取り入れていくために知っておきたい知識だ。

資格4. ビジネスマネジャー検定……業務・人・リスクのマネジメント力を身につける

ビジネスマネジャー検定は、東京商工会議所が実施する検定試験である。管理職であるマネジャーは、経営者の意思決定を社員に伝え、チームとしてその内容を遂行し、成果を出すために重要な役割を担っている。

マネジャーは業務マネジメントのほか、人や組織のマネジメント、リスクのマネジメントなど、求められるマネジメント範囲が広い。しかし、マネジャーになる人の中にはマネジメント経験がない場合もあり、マネジメントの手法について改めて勉強する必要がある。この検定では、ビジネスマネジャーとして身につけておくべき基礎知識が網羅されているため、取得の勉強は適しているといえる。

経営に関わる基礎知識から経営計画、事業計画の策定も範囲にあり、経営者にとってもリーダーやマネジャーなど管理者クラスのマネジメントをしていくために役立つ知識だ。

資格5. 知的財産管理技能検定……知的財産権のエキスパート

国家試験である知的財産管理技能検定は「知財技能士」とも呼ばれる資格だ。国家資格で、知的財産権に関わる幅広い事柄についての問題を、判断、解決できるスキルを身に付けることができる。

知的財産とは、特許庁によると以下のように定義される。  

「発明、考案、植物の新品種、意匠、著作物その他の人間の創造的活動により生み出されるもの(発見又は解明がされた自然の法則又は現象であって、産業上の利用可能性があるものを含む。)、商標、商号その他事業活動に用いられる商品又は役務を表示するもの及び営業秘密その他の事業活動に有用な技術上又は営業上の情報をいう」
※引用:特許庁HP

ここに含まれる技術やデザイン、コンテンツ、アプリなどの著作物といったものは、手に取れるような形はないが、価値あるものだからこそ適切に管理・活用できるか、その方法の習得を図る検定である。

もし自分の会社が「なんらかの発明やデザインアイデアなどを保有しているが、その著作権や特許についてどう取り扱えばいいかわからない」といった場合には、非常に有効な資格だろう。

資格6. MBA(経営学修士)……経営者としての基本を学び直す

MBAとは「Master of Business Administration」の略称で、日本では経営学の大学院修士課程を修了すると与えられる学位である。そのため、取得には大学院で1~2年経営学を学び、修了することが必要だ。

MBA資格は、今回紹介してきたほかの資格と同様に、MBA有資格者のみに与えられた独占業務はない。この資格自体が、マネジャーやリーダーといった管理者クラスの育成を目的としたものである。

経営者として2年間大学院に通うことは大きなハードルになり得るが、今後の時代の変化に対応していくためにも、そういったテクノロジーなどに対応したMBAを学ぶことは決して無駄にならないのではないだろうか。

余裕のある経営者は営業に関する資格取得検討をしてみよう

営業の資格は経営者も持っていたほうがよく、プレイヤーには必須であることが伺えた。経営者が資格を取得するメリットとしては、総合能力アップ・キャリアアップのほか、社員教育として営業ノウハウの伝達効率がよくなるというメリットもあるため、余裕のある経営者であれば資格取得は検討の余地ありだ。

社員も経営者も常に学び、変化し続ける者のみが今後の変化が激しい市場の中で生き残れるのではないだろうか。しかし、学び続けるということは、誰もができるような楽なことではない。まずは、経営者がお手本として学ぶ姿を示してみることをおすすめする。

文・THE OWNER編集部

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