伊藤忠食品×テクニカン「凍眠市場」
(画像=伊藤忠食品×テクニカン「凍眠市場」)

冷凍技術を活用する企業は増えており、輸出など新たな市場開拓も視野にあるようだ。

8月23~25日に行われた「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」で、出展していたある冷凍機メーカーは「メーカーの方からも多く話を頂いた。フードロス削減の観点からも有効活用したいという話もあった」と話す。加えて、物流業界で問題視されている「2024年問題」への対応として冷凍機の導入を検討している会社は少なくないようだ。

〈冷食市場は拡大 小売店などで売場広がる〉
コロナ禍に冷凍食品の市場が広がった。日本冷凍食品協会が発表した2022年における冷凍食品の国内生産量は、家庭用が前年比0.8%増の80万4,996トンとなった。2021年と比較すると若干の伸びではあるものの、8年連続で前年を上回り、過去最高を更新している。業務用についても、コロナ下での落ち込みから回復傾向にあり、外食店の人手不足による冷凍品の活用なども見込まれる。今年はインバウンド需要の高まりなども期待されており、更なる拡大が予想される。

スーパー各社においても、冷凍食品への期待は高い水準を維持している。小売大手のイオンでは、冷凍食品専門店「@FROZEN(アット・フローズン)」を2022年8月に千葉県内に初出店し、2024年までに新たに5店舗の追加を予定している。

他社においても、冷凍食品の売場拡大や、自社で手掛けている冷凍商品の卸売を開始するなど、新しい動きも目立ち始めている。大手企業の冷凍食品以外の取り扱いも増加しつつあるという。

これまで冷凍品を販売していなかった企業の参入も増えている。コロナ禍においては、店舗の営業ができなかった外食産業を中心に様々な商品の投入が進んだ。さらに、ある冷凍機メーカーによると「食品以外の業界からも、成長市場として冷凍への注目度はより高まっている。実際、市場参入に向けた準備を進めている会社もある」と話す。

〈刺身として食べられる冷凍鮮魚も 大手コンビニやスーパーなど扱う〉
また、鮮魚などを冷凍品として投入を進める会社も増えている。

コロナ禍では、飲食店の休業などで納品できなかった魚などを、ECや自販機を活用して販売していた。取り組みは徐々に広がり、最近では伊藤忠食品が、冷凍機メーカーのテクニカン(横浜市都筑区)と「凍眠市場」を展開。スーパーなどで展開を広げている冷凍商品の売場で、刺身としても食べられる冷凍鮮魚などを販売している。大手コンビニチェーンのローソンでは、冷凍の真鯛や馬刺しなどを扱っている。販売は順調に推移しているようだ。

フードロス削減としても冷凍機は有効活用されている。日本において、魚の総水揚げ量の30%以上が活用されていないという。そのため、ある冷凍機メーカーは「少量しか取れていなかった魚などを冷凍保存することで、これまで捨ててしまっていた魚をちゃんと活用できるようになった」と語る。漁獲してすぐの、新鮮な魚を凍結することで、高い鮮度を保ちながらも長期間保存できることも冷凍ならではのメリットとなっているという。

また、日本の鮮魚は海外からも需要があるものの、これまでは空輸でしか送れず、輸送費なども高くなってしまいっていた。冷凍の場合、海上輸送ができ、空輸よりも量を輸送できることが、コストを大幅に下げることにもつながるようだ。

さらに、物流の2024年問題を見越して、冷凍機の導入を進めているところもある。ある企業では「トラックの便数が今までより減る可能性もある。冷凍による物流の効率化や、保存できる期間の延長は不可欠になるのでは」と語る。冷凍により、配送便数を減らす取り組みも一部見られる。

〈瞬間凍結需要は伸長 各社の提案も〉
「ジャパン・インターナショナル・シーフードショー」では3社が冷凍機を紹介していた。

液体凍結機の「凍眠」で知られるテクニカンは、既存の「凍眠」を小型化した「凍眠ミニ」を訴求した。「凍眠」は食材などを液体によって高速で凍らせることで、通常の冷凍では実現できなかった品質で商品を提供できるようにしている。

この「凍眠」を小型化することで小規模の飲食店など、より幅広い店舗で活用できるようにした。「フードロス削減の観点からも、冷凍の取り組みは重要だと感じている事業者は多くいる。導入することで鮮度の良い魚を国内外に届けられることを伝えたい」と話す。

テクニカン「凍眠ミニ」
(画像=テクニカン「凍眠ミニ」)

特殊冷凍機などを販売しているデイブレイク(東京都品川区)は、自社で開発した「アートロックフリーザー」を提案した。「アートロックフリーザー」は、優しい冷気で食材を取り囲みながら、高速で冷却することで、食材へのダメージを限りなく減らしている。また、誰がやっても同じ冷凍条件を再現できる業界初の全自動モードを搭載し、質の高い冷凍を、誰でも簡単に行えるようにしている。

「アートロックフリーザー」は他にも、故障に繋がる運転や品質を低下させる使い方を未然に防ぐ機能や、離れ場所からも凍結完了を確認できる機能などを搭載している。担当者によれば、「既存の冷凍機から、新たに切り替える企業もある。ロス削減や海外展開を進める中で、新たに導入を検討される方も多かった」ようだ。

デイブレイク「アートロックフリーザー」
(画像=デイブレイク「アートロックフリーザー」)

飲食店の運営などを手掛ける豊翔(埼玉県川越市)は、マイナス60度で冷却する凍結機「フードタイムマシン」を展示した。豊翔の担当者は「早く凍らせることに加えて、超低温で保存することは品質劣化を防ぐ上で重要」と語る。魚に含まれている栄養素のうち、DHAはマイナス44度、EPAはマイナス54度の融点で、従来の凍結方法では完全凍結に至らないという。

豊翔はこうした成分を含む魚でも問題なく保存できることを「フードタイムマシン」の特徴の一つに挙げている。なお、この機械は、埼玉県が実施している「第1回彩の国SDGs 技術賞」で奨励賞を受賞している。

豊翔「フードタイムマシン」
(画像=豊翔「フードタイムマシン」)

〈冷食日報2023年8月31日付〉