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産経ニュース エディトリアルチーム
香川県丸亀市の有限会社佐野興産は、同県中部の中讃地域を主な事業エリアとする規模は小さいが大きな存在感を放つ建設・不動産会社だ。少数精鋭での攻めの事業展開を図る上で、ICTやデジタル機器を適材適所で活用している。(TOP写真:会社の看板の前に立つ有限会社佐野興産の下山健次代表取締役)
香川県中部の中讃地域で建設、不動産業を展開
1991年に貸倉庫の賃貸業として創業した有限会社佐野興産は、2001年に宅地分譲、住宅分譲、土地建物売買仲介、土地建物賃貸仲介などを手掛ける不動産業、2006年に新築住宅、新築店舗、住宅改修、店舗改修などの一般建設業を始めるなど、着実に事業領域を拡大してきた。現在は、高松市をはじめとする香川県の他のエリアの新規開拓に力を入れている。
従業員は家族を中心に6人。企業としての規模は小さいが、宅地建物取引士、賃貸不動産経営管理士、不動産コンサルティングマスター、上級定借アドバイザー、二級建築士、ファイナンシャルプランナー2級、介護福祉士、福祉住環境コーディネーター2級などの有資格者をそろえている。
住まいのトータルコーディネーターとして地域社会に必要とされる企業にしていく
迅速な意思決定、地元で築いてきた幅広いネットワーク、親身になった対応が佐野興産のストロングポイントだ。土地、建物の活用、住宅ローンの相談、空き家の利活用、資産活用、相続などのコンサルティングにも定評がある。「住まいのトータルコーディネーターとしてお客様から寄せられた相談に全力で応じることをモットーにしています。事業を継続していく上で何より大切にしているのが、会社を支えてくれている人たちとのつながりです。社会に必要とされる企業にしていくことを常に考えています」。香川県丸亀市の住宅街の一角にある佐野興産の本社で下山健次代表取締役は快活に語った。
顧客の要望に全力で応えた結果が、高い評価につながった
下山社長は兵庫県神戸市出身。大学卒業後、妻の出身地の香川県で大手生命保険会社、通信販売会社、不動産会社に勤めた後、2001年に妻の実家が営んでいた佐野興産の代表取締役に就任した。四半世紀にわたってサラリーマンとして仕事に打ち込む中で、社会に必要とされる企業のあり方について日々考えるうちに「自ら企業の舵取りをしたい」という思いが強くなり、「脱サラ」を決意したという。仕事や地域のボランティア活動を通じて培った人脈、サラリーマン時代に取得していた不動産管理士、宅建管理士の資格、ビジネスの経験と知識が社長就任後のさまざまな挑戦を支えてくれた。
顧客の要望に耳を傾け、全力で取り組んだ結果が高い評価につながり、その評判が人づてで広がることで地域での会社の存在感が高まっていった。ペットと共に住むことができる賃貸マンション「アークフラット」や無電柱化を進めることで美しい景観を整えた住宅街「ヴィアーレ」といった自社ブランド事業も、顧客のニーズを汲み取る姿勢から生まれたものだという。
少数精鋭の中小企業が、攻めの事業を展開していく上で、ICTの活用は必要不可欠
不動産業界では契約書や物件情報といった書類の作成をICTの導入によって効率化する動きが進んでいる。佐野興産も香川県宅地建物取引業協会が会員企業に提供しているweb書式作成システムを2020年から活用している。
システムは重要事項説明書、売買や賃貸借に関する契約書の作成作業がクラウド上で完結できる仕組みになっている。基本フォーマットが用意されており、売主、買主、物件情報、事業者の名称を複数の書類で自動的に連動させる便利な機能を備えている。システムを使うことで書類作成の作業時間を大幅に短縮することができる。
また、不動産情報メディアや不動産業務ソリューションを提供する企業と提携し、同社が運営する不動産情報サイトに自社で扱っているマンション、アパート、一戸建てなどの賃貸物件や分譲物件の情報を掲載している。
「少数精鋭の中小企業が事務作業を効率化して攻めの事業を展開していく上で、ICTの活用は必要不可欠と思っています。お客様への情報提供も大量の写真や文字情報を掲載できる業界団体や他社の情報サイトをうまく活用すれば、チラシなどの紙媒体を大量に発行する必要もありません。結果としてコストをかけずに大きな成果を生み出すことができます」と下山社長は説明した。
NASを導入して社内の情報共有を強化
社内の情報共有を強化するために2018年にNAS(ネットワーク接続型ストレージ)を導入した。土地に関しての様々な調査情報や管理している物件の資料、記録などを記述した紙文書を、パソコンと連動した複合機でスキャンしたり、エクセルに打ち直すことでデジタル化してNASに保存している。
「以前は紙文書をファイルにとじてキャビネットで保管していたため、必要な資料を探すのに手間と時間がかかっていました。担当者が不在の時はわざわざ電話で問い合わせをしてから探さなければなりませんでした。NASを導入して、それぞれの社員のフォルダに資料をデータで保存するようにしたところ、パソコンからフォルダを開けるだけで必要な情報がすぐに手に入るようになりました」と下山社長。「社員全員が手がけている物件の情報をいつでも確認できるのはありがたいですね」とうれしそうに話した。
クラウドサービスで社外から資料を確認 データのバックアップにも有効
2020年にはクラウドサービスを導入し、クラウド上のファイルに保存した情報にパソコンやスマートフォンなどの端末を使って会社の外にいてもアクセスできるようにした。「外出先や自宅から必要な資料の確認ができるので本当に助かります。わざわざ会社に戻る回数が減ったので、以前より効率的に時間を使うことができるようになりました。NASだけでなくクラウドにも資料を保存しておけば、NASが破損した時のデータのバックアップにもなるので一石二鳥です」(下山社長)
セキュリティ対策もUTMを導入して24時間365日監視
情報管理の面でも怠りはない。コンピューターウイルスや不正アクセスへの防御策として複数のセキュリティシステムを1つの機器にまとめたUTM(Unified Threat Management=統合脅威管理)もクラウドサービスと合わせて導入した。「クラウドサービスの導入を決めた時に一番気掛かりだったのが情報のセキュリティでした。リアルタイムで24時間365日監視する機能が備わっているので、不安を感じることなくクラウドサービスを使うことができます」と下山社長は明るい口調で話した。
ホームページをリニューアルして情報発信を強化
企業向けのホームページ作成システムを導入し、2023年にホームページのリニューアルも行った。システムを活用することでホームページの編集を社内で行うことができるので、機動的に情報を発信することが可能になった。会社概要をはじめ、物件情報、事例紹介、コンサルティングの内容を具体的に掲載し、外部の不動産情報サイトとのリンクも充実させたいという。
地域の活性化に貢献したい
四国と本州を結ぶ瀬戸大橋に近く、生活の利便性と豊かな自然環境がバランスよく整った中讃地域の自治体は、民間企業の住みやすさランキング調査で上位にランクインすることも多い。下山社長は、デジタル技術の進化がもたらす地域の社会や経済の変化にも関心を寄せている。ICTに関連した情報の収集に力を注ぎ、会社のDXだけでなく地域のDXにも貢献していきたいという。
「地方の産業を高度化し、若者が魅力を感じる新しい仕事を生み出す上で、デジタル技術は大きな役割を果たしてくれそうな気がします。地域の活性化と企業の成長は表裏一体です。地域にとって必要とされる事業にこれからも取り組んでいきたい。身近であるがゆえに住んでいる人が気付いていない香川県の魅力を発信することにも力を入れていきたいと思っています。地域に根付いた企業として多くの方に移り住んでもらえるまちづくりに貢献できるようこれからも頑張ります」と下山社長は明るい表情で話した。
企業概要
会社名 | 有限会社佐野興産 |
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本社 | 香川県丸亀市土器町東8丁目472番地 |
HP | http://www.sanokosan.co.jp/ |
電話 | 0877-58-4550 |
設立 | 1991年9月 |
従業員数 | 6人 |
事業内容 | 不動産業、一般建設業、賃貸業、賃貸管理業、コンサルティング業 |