矢野経済研究所
(画像=myboys.me/Shutterstock.com)

2018年度の栄養剤・流動食・栄養補給食品市場規模は前年度比1.6%増の1,348億円

~栄養剤・流動食・栄養補給食品メーカーは経口製品や在宅向け製品に注力、新製品の市場投入、メーカーの再編など激動期に~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内の栄養剤・流動食・栄養補給食品市場の調査を実施し、市場規模、メーカーシェア、製品動向、将来展望などを明らかにした。

栄養剤・流動食・栄養補給食品市場規模推移

矢野経済研究所
(画像=矢野経済研究所)
矢野経済研究所
(画像=矢野経済研究所)

1.市場概況

2018年度の栄養剤・流動食・栄養補給食品の市場規模(メーカー出荷金額ベース)は、前年度比101.6%の1,348億円と推計した。2018年度の構成比をみると、流動食市場が56.7%(764億円、同101.6%)と最も多く、栄養剤市場は25.0%(337億円、前年度比99.1%)、栄養補給食品市場は18.3%(247億円、同105.1%)と続いた。

それぞれの傾向をみると、医薬品である栄養剤は保険が適用されることから在宅療養向けの利用が伸長している。これは、在宅では高カロリー輸液製剤を中心静脈内に投与する危険性が指摘されていることも背景にある。一方、流動食は入院時食事療養費との差益が発生することで、病院や高齢者施設にメリットがあることから入院患者や入所高齢者向けに伸びている。また、DPC/PDPS(診断群分類別包括支払い方式)対象となる病院が増えていることも、輸液から経腸栄養、とりわけ流動食投与へと移行している一因である。
また、栄養補給食品は、高齢者の低栄養を避ける手段として、施設入居者のおやつやデザートとしての需要が安定的に伸びている。

2.注目トピック

栄養剤・流動食・栄養補給食品を取り巻く市場環境の変化

栄養剤・流動食・栄養補給食品メーカーは、腎不全・肝機能障害・免疫賦活・慢性呼吸器不全などの病態別製品やPEG(Percutaneous Endoscopic Gastrostomy:経皮内視鏡的胃ろう造設術)患者向け専用製品、ソフトバッグ化、容器形状の工夫、微量元素や食物繊維の添加、味や食感の改良、固さの調整、補食対応、高カロリータイプ、加水タイプなど、さまざまな製品開発を進めている。
また、栄養士資格者によるサポート体制の整備、在宅市場や健常者の栄養補給を想定した流通対策、NST(Nutrition Support Team:栄養サポートチーム)への販促強化、ドラッグストア店頭配荷による一般流通への注力、自社HPや専門ネット通販の活用、製造ラインの増・新設、製造の受委託強化、海外展開、在宅医療サービス企業や食品宅配業、医薬品卸や医療用食品卸などとの提携などさまざまな販促活動を進めている。

メーカー間の販売競争は更に激しさを増しており、製品シェアの差が拡大し、上位メーカーによる寡占化が進行しつつある。その結果として、得意分野への事業領域集中を目的として、市場撤退や事業譲渡を実施したメーカーも出ている。一方では、新規の市場参入もあり、活発な製品改廃もあいまって、栄養剤・流動食・栄養補給食品市場は変動期にある。

3.将来展望

栄養剤市場は、保険適用が継続し、病院のDCP/PDPS化の継続ないしは進展がある限り、院内使用から在宅使用への流れは変わらない。在宅高齢者の増加は非健常高齢者の増加を意味し、栄養剤にとって追い風となる。但し、薬価の改定はマイナス要因で、量的拡大は続くが金額的な伸びは期待できない。2019年10月に薬価が改定されたが、今後も若干の前後がありながらも栄養剤市場は微増する見込みである。

流動食市場は、2014年度頃を境に高成長から低成長、微増へ移行している。その後の成長ペースは年率2%前後と考えられる。栄養剤(医薬品)から流動食(食品)への流れも一段落した感がある。一方で、固形タイプや補食用途、低栄養対応、高カロリー、高たんぱく、経口投与などのコンセプトの製品が今後も期待される。

栄養補給食品市場は、高齢者の低栄養を避ける手段として施設入居者の補食(おやつ・デザート)需要は引き続き安定的に伸び、同様に在宅高齢者(未病や健康な高齢者を含む)需要の取り込みによって、今後も年率3~4%程度伸長する見通しである。