建設業の許可を得るためにはいくつかの要件を満たす必要がありますが、その中でも要件を満たすことが難しいものとして、経営業務管理責任者の制度があります。
経営業務管理責任者として認められるために必要な確認資料についてご紹介します。
経営業務管理責任者とは
経営業務管理責任者とは、建設業の許可を取得するために必要な要件の1つです。
略して経管とも呼ばれます。
経営業務管理責任者の要件を簡潔にまとめると、建設業の許可を得るためには、建設業に関する経営経験のある人物が必要になる、ということです。
また、経営業務管理責任者は建設業の許可の要件だけではなく、建設業の許可を取得した法人の建設業務統括や、法人の役員としての経営責任など、様々な責任を負う場合が多い立場でもあります。
経営業務管理責任者が必要な理由
許可の種類は建設業だけではなく、飲食店の営業許可や、菓子製造業の許可などがあります。
許可の種類のうち、経営についての経験が許可の要件として要求されるのは珍しいケースといえます。
建設業について経営経験が必要とされる理由は、建設業の特殊性に理由があります。
建設業の特徴は、業務を1件受注するだけでも仕事の規模が大きくなることです。
例えば、工事を1件受注するだけでも扱う金額、人材、取引先などは大きくなります。
多くの金銭、モノ、人や法人が関わってくることから、労務管理や資金繰り等についての適切な経営判断が必要になってきます。
経営経験が不足している場合、判断の誤りによって企業の倒産のリスクが高くなるだけでなく、事業に関係してきた多くの人材や法人にも悪影響がでてきます。
そうした弊害を防止するために、建設業においては許可の要件として経営経験が要求されています。
経営業務管理責任者の確認資料
経営業務管理責任者としての要件を満たすためには、大きく分けて2つの点が重要になります。
・営業所に常勤していること(常勤性) ・経営業務の管理責任者としての経験(管理責任者としての経験)を有すること |
以上の2点です。
この2点については、それぞれの要件を満たすための確認資料を提出する必要があります。
注意点として、必要な確認資料の内容や条件などは、許可を得る都道府県等の地域によって細部が異なります。
以下では、経営業務管理責任者の確認資料として一般に必要になることが多い確認資料を中心に、解説していきます。
営業所の常勤についての確認資料
経営業務管理責任者になろうとする者が営業所に常勤していることについては、主に以下のような資料で証明することになります。
・住民票(発行後3ヶ月以内で現住所が確認できるもの。抄本も可の場合あり) ・健康保険被保険者証(社会健康保険証、国民健康保険証、後期高齢者医療被保険者証など) ・標準報酬決定通知書 ・住民税特別徴収税額通知書(徴収義務者用) ・確定申告書(法人の場合は表紙と役員報酬明細、個人は第一表と第二表) ・その他、常勤であることが確認できるもの |
上記の書類の全てが必要になるわけではなく、常勤を証明するために必要な書類の組み合わせはケースによって異なります。
例えば、建設許可を受けようとする企業が社会保険に加入している場合は、住民票と健康保険証の組み合わせで常勤であることを証明できるのが一般的です。
一方、社会保険に加入していない場合や、事業所名が保険証に印字されていない場合などは、住民票に加えて、住民税特別徴収額通知書や役員報酬明細のある確定申告書などで常勤性を証明することになります。
また、通勤時間が片道概ね2時間以上の場合、現住所が異なる場合、出向の場合など、状況に応じて別途常勤性を確認するための追加資料が必要になることもあります。
管理責任者の経験に関する確認資料
過去の経営経験を確認するための資料としては、それを証明するための様々な書類を提出することになります。
過去の経営経験として一般に認められるものとしては、会社(法人)の役員、個人事業主、令3条使用人の3種類があります。
会社(法人)の役員とは、株式会社の取締役、委員会設置会社の執行役、合同会社の業務執行社員などです。
令3条使用人とは、建設業法施行令第3条に規定する使用人のことで、一般に営業所の支店長や営業所長などです。
注意点として、令3条使用人として認められるためには単に支店長などの肩書があるだけでは足りず、令3条使用人として登録されている必要があります。
経験を証明するために一般的に必要になる確認資料は以下の通りです。
・会社(法人)の役員:登記事項証明書、履歴事項全部証明書、閉鎖登記簿謄など ・個人事業主:確定申告書 ・令3条使用人:建設業許可申請書及び変更届出書 ・その他、期間等を証明するために建設業許可通知書、工事請負契約書、請求書、大臣特認の認定証など |
なお、経営業務管理責任者の確認資料として必要になる書類等の詳細は、許可を得ようとする都道府県等の地域によって異なります。
例えば、ある県では証明のために確定申告書が必須になる場合でも、別の県では契約書や請求書などの裏付けとなる資料のみで足りることがあります。
おわりに
建設業の許可を得るための要件である経営業務管理責任者として認定されるためには、常勤性と過去の経営経験の2点について、必要な資料を提出して証明する必要があります。
常勤性についても過去の経営経験についても、基本的に状況に応じて複数の書類を組み合わせて提出することになります。
また、許可を得る地域によって必要な確認資料の詳細は異なります。(提供:ベンチャーサポート行政書士法人)