企業経営に不可欠な資金調達には様々な方法があります。どのように安全かつ効率的に資金を調達すれば良いのか、本記事では、資金調達の方法や具体例、リスクへの対応などわかりやすく解説します。
資金調達とは?
資金調達は、企業が成長と持続的な運営を支えるために、必要な資金を得る活動を指します。具体的には、外部からの借入や投資を通じて、企業が資金を集めるプロセスです。
企業が資金調達を行う主な理由は「事業拡大・新規事業の開始」「運転資金の確保」です。
新しいプロジェクトを開始したり、新しい市場に進出したりするには、大きな初期費用が発生します。また、日々の業務をスムーズに行うためには、一定の現金が必要になります。
資金調達は、ビジネスチャンス機会を逃さず捉え、競争力を維持・強化するために重要なプロセスと言えます。
資金調達の主な方法
資金調達の方法は主に5つに分類されます。それぞれの特徴や具体例をご紹介します。
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1. 負債を増やす(デッドファイナンス)
2. 資本を増やす(エクイティファイナンス)
3. 資産を現金化する(アセットファイナンス)
4. 補助金や助成金を利用する
5. クラウドファンディングを活用する
1.負債を増やす(デッドファイナンス)
銀行などの金融機関やノンバンクなどからお金を借りるなどして「負債」を増やし、必要資金を確保する方法です。デッドファイナンスの「デッド」は「Debt(負債)」を示します。負債は「他人調達資本」ともいます。
具体例 | メリット | デメリット |
・金融機関から融資を受ける。 ・金融機関やノンバンクのビジネス ローンを利用する。 |
・借入先候補の選択肢が多い。 ・返済計画が明確である。 |
・返済の義務がある。 ・企業の信用力が問われる。 |
2. 資本を増やす(エクイティファイナンス)
株式の発行によって資本を増やし(増資)、資金調達を行う方法です。負債の「他人調達資本」に対し、資本金は「自己調達資本」と呼ばれます。
具体例 | メリット | デメリット |
・投資家から出資を受ける。 ・ベンチャーキャピタルから出資を受ける。 ・第三者割当増資を行う。 |
・返済の必要がない。 ・ファンドなど出資者から経営の 専門的なアドバイス、リソースの提供を期待できる。 |
・出資者が経営に 干渉する可能性がある。 |
3.資産の現金化(アセットファイナンス)
不動産や売掛債権など、企業が保有する有形・無形資産を売却し、資金調達する方法です。
具体例 | メリット | デメリット |
・不動産を売却する。 ・商標権を売却する。 ・債権をファクタリング業者に 買い取ってもらう。 |
・買い手が見つかれば、 迅速に資金調達ができる。 |
・売却可能な資産が必要。 ・周囲に売却が知られることで企業 イメージ低下の懸念がある。 ・売却時に手数料がかかる。 |
4. 補助金や助成金を活用する
国や一部の地方自治体は、事業者向けの補助金・助成金によって、中小企業の資金調達を応援しています。企業の規模や事業内容、資金の利用目的などに細かな条件があるものの、補助金・助成金は原則的に返済の必要がありません。
具体例 | メリット | デメリット |
・ものづくり補助金、小規模事業者 持続化補助金などの補助金制度を活用する。 ・創業助成事業などの 助成金制度を活用する。 |
・返済の必要がない。 | ・補助金は採択されない可能性 もある。 ・入金までに時間を 要する場合が多い。 ・入金タイミングが不明瞭な場合が多い。 |
5. クラウドファンディングを活用する
インターネット上で支援者を募り、多くの人から資金を集める方法です。
具体例 | メリット | デメリット |
・ビジネス・起業系の クラウドファンディングを活用する。 |
・初期コストをおさえ、多様な資金調達が可能になる。 | ・目標額に達しないリスクがある。 ・入金のタイミングを見込みづらい。 |
資金調達を成功させるためのポイント
資金調達の成功には、明確で実現可能なビジネスプランの策定、市場と自社の状態を見極めたタイミングの把握、そして信頼できるパートナーとの長期的な関係の構築という3つのポイントが不可欠です。
ビジネスプランの明確化
投資家や金融機関は、明瞭で現実的なビジネスプランを重視します。資金調達の結果、資金がどのように使われ、どのようなリターンが期待できるのかを評価します。
そのためビジネスプランは、目標の設定、市場分析、財務計画など、包括的で詳細な内容が求められます。
適切なタイミングの把握
資金調達の成功は、適切なタイミングに大いに依存します。市場の状況が良く、自社のビジネスが成長軌道にある場合、資金調達の条件も有利になる傾向があります。
一方、市場環境が厳しい時期や企業の業績が低迷している時に資金調達を試みると、厳しい条件が提示される場合があります。つまり、企業の状態と市場状況を同時に見極め、ベストなタイミングを捉えることが重要です。
パートナーシップの構築
資金調達は、単に資金を得る活動ではありません。それはまた、ビジネスのパートナーを見つけ、長期的な信頼関係を築く過程でもあります。
例えば、VC(ベンチャーキャピタル)からの資金調達の場合、VCは単なる資金提供者以上の存在となり得ます。彼らは経営に関する専門的なアドバイス、リソースを提供してくれる場合があるため、パートナーシップの構築は、ビジネスの長期的な成功に寄与します。
資金調達のリスクと対処法
資金調達は、企業の成長のために不可欠ですがリスクも伴います。リスクを最小限に抑え、効果的に資金調達を行うためには、慎重な計画と綿密な対策が必要となります。ここでは想定されるリスクとその対処法についてご紹介します。
キャッシュフローへの影響
資金調達によって、返済や利息の負担が増え、企業の資金繰りが厳しくなる可能性があります。
対処法としては、資金繰り計画を定期的に見直し、現金の流れを予測しておくこと、 無理のない返済計画を立て、緊急時の資金確保策を設けることが挙げられます。
業績不振による返済困難
業績が思うように伸びず、資金調達で借り入れた資金の返済が困難になる場合があります。
対処法としては、利益の安定源を複数確保する多角化戦略を検討し、リスクヘッジを図ること、 業績不振になった場合の返済計画の見直しを、前もって検討しておくことが挙げられます。
株式の希薄化
自己資本調達の際に発行した新株式により、既存株主の所有割合が減少し、経営権が希薄化する可能性があります。
対処法としては、所有構造の最適化を図るため、資金調達の方法やタイミングを慎重に選択すること、希薄化の影響をしっかりと理解し、株主とのコミュニケーションを密に取ることが挙げられます。
資金調達とM&A
資金調達とM&Aは、それぞれ単独で行うだけでなく、戦略的に組み合わせることで、企業の成長をより一層効果的に促進する強力な手段となることがあります。適切なパートナーとタイミングを見極め、両者を巧みに活用することが、成功への鍵となります。
資金を調達してM&Aに乗り出すケース
企業が拡大戦略を実行する際、M&A(合併・買収)は一つの重要な手段です。これを実現するためには、一定の資金が必要になるケースが一般的です。
資金調達を行い、他社を買収または合併することで、市場シェアの拡大、新規市場への進出、技術や人材の獲得など、成長を加速することが可能になります。
M&Aを通じて資金を調達するケース
一方で、M&A自体が資金調達の一形態にある場合もあります。例えば、資本が豊富な大企業が、技術やブランド力がありつつ伸び悩む中小企業を買収することで、中小企業は新たな資金源を確保できます。M&Aによって両社はシナジー効果の創出、事業展開のスピードアップが期待できます。
終わりに
資金調達は、企業が持続可能な成長を遂げる基盤を築く上で欠かせない要素です。成功するためには、事前の計画が重要ですが、状況が変われば計画も修正する柔軟な思考が求められます。
そのため明確で実行可能なビジネスプランを早期に準備し、様々な資金調達方法について検討を進めておくことが大切です。これからの時代は、変化に適応しながら最適な資金調達を行う知識と戦略が企業の競争力を高める鍵となります。自社の状況に適した資金調達を通じて、自社の発展につなげていきましょう。
著者
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