LTVという言葉を聞いたことのある企業経営者はいるだろうか。LTVとは、近年注目度が高まっている経営指標で「顧客生涯価値」のことである。競争激化や新規顧客の獲得コストの高まりなどを受け、既存顧客との関係性を強固にするための取り組みをする企業が増えてきているなか、経営者としてぜひ知っておきたい指標の一つだ。

そこで本記事では、LTVの概要および計算方法、LTVを高める方法などについて解説する。LTVを理解し、今後のビジネスに役立てて欲しい。

目次

  1. LTVの意味
    1. 併せて知っておきたい「1:5の法則」とは
  2. LTVに注目すべき理由
    1. 国内人口の減少
    2. コスト増
    3. One to Oneマーケティングへの活用
    4. サブスク型営業の流行
  3. LTVの算出方法
  4. LTVの見方
  5. LTVを高めるには?
    1. 平均顧客単価を上げる
    2. 購買頻度を増やす
    3. 継続期間を延ばす
    4. コストを抑制する
  6. LTVを高めて業績向上に活用しよう
LTVとは? 意味や算出方法、高め方などについて解説
(画像=Tatyana/stock.adobe.com)

LTVの意味

まずは、LTVの意味を確認しておこう。LTVは「Life Time Value」の略称で、日本語にすると「顧客生涯価値」という意味である。これは、ある顧客が自社の利用(取引)を開始してから終了するまでの期間(顧客ライフサイクル)に、「その顧客がどれだけの利益をもたらせたのか」を表す指標だ。

例えば、ある顧客との取引が1回だけの場合に比べ、取引が2回以上継続する場合のほうが顧客によってもたらされた利益は多くなりLTVは高くなる。このようにロイヤリティの高い顧客ほどLTVが高くなるのが一般的だ。

具体的な算出方法は後述するが、LTVは顧客ごとに「時間」と「利益」によって定量化した指標であり、既存顧客の維持・拡大に焦点をあてマーケティングなどで活用されている。

併せて知っておきたい「1:5の法則」とは

LTVの重要性を理解するために、知っておきたいのが「1:5の法則」だ。1:5の法則とは、新規の顧客を獲得するには、既存顧客維持に対するコストの5倍かかるという法則である。これだけでも既存顧客の維持・拡大がいかに大切で、そのための指標であるLTVを知ることが重要だということが理解できるのではないだろうか。

LTVに注目すべき理由

ここで、なぜ近年のビジネスやマーケティングでLTVが重視されているのか、理由を見ていこう。

国内人口の減少

まずは、国内人口の減少に伴う潜在顧客の減少だ。少子高齢化の進行により、国内人口の減少が進んでいることはご存じの方も多いだろう。総務省統計局のデータによると2023年1月1日時点の国内総人口は1億2,475万2,000人で、前年同月に比べて55万7,000人(▲0.44%)減少している。

なかでも減少率の高い年齢層は、15歳未満人口(1,443万3,000人)で前年同月比28万6,000人(▲1.94%)の減少だ。ちなみに同省の人口推計によると2023年6月1日の総人口は1億2,452万人となっており、前年同月に比べて1年間で58万人、同年年始に比べて半年間で約23万人の減少となる。

この人口減少の傾向は2008年以降一貫して続いており、事業者にとっては潜在顧客層の縮小を意味する重大な問題だ。ただ競争が激しくなるだけでなく、新規顧客を獲得するためには前述した1:5の法則以上にコストがかかることも想像できる。そのため既存顧客と良好な関係を築き、長くつなぎ止めることがますます必要とされており、その指標としてLTVが重要視されているのだ。

コスト増

人口の減少は、働き手の減少となり人件費がますます高まることが予想できる。そうでなくても現状では、エネルギー価格の高騰および円安による輸入原材料費の高騰などで企業のコストは増える一方である。利益を維持・拡大するためには、コスト抑制が必須。その対策として顧客コストに関しては、新規顧客獲得よりも既存顧客の維持・拡大に集中させるほうが効率的なのだ。

One to Oneマーケティングへの活用

個々の趣味・嗜好が多様化するなか、顧客の好みや価値観、購買履歴など、一人ひとりのニーズに合わせて施策を行う「One to Oneマーケティング」を取り入れる企業が増えている。One to Oneマーケティングを成功させるためには、顧客のロイヤリティを高め、継続的に取引をしてもらったり顧客視点で施策を検討したりすることが重要だ。

そのためには、LTVの指標が有効であることからLTVの活用に注目が集まっている。

サブスク型営業の流行

既存顧客の長期つなぎ止めとして、近年サブスクリプション型の販売を取り入れるようになった企業も多い。顧客にとっても定額料金を支払えば、製品やサービスを一定期間利用できたり、一定料金でさまざまな製品を試せたりするなどのメリットがあり、サブスクリプションの人気が高くなっている。

この傾向を顧客だけでなく企業にとっても長期的に継続するためにも、LTV向上を画策することが求められているのだ。

LTVの算出方法

LTVの算出には、以下の計算式を用いるのが一般的だ。

LTV=平均顧客単価×収益率×平均購買頻度(回/年)×平均継続期間(年)

例として、以下の場合でLTVを計算してみよう。

  • 平均顧客単価:1万円
  • 収益率:50%
  • 購買頻度:年6回
  • 継続期間:5年

この場合、上記計算式にあてはめるとLTVは15万円(1万円×50%×6回×5年)と算出できる。なおコストを鑑みたLTVを算出することも可能だ。その場合には、上記計算式から一人あたりの顧客獲得コストと顧客維持にかかるコストを差し引けばよい。

LTV(コスト込)=平均顧客単価×収益率×平均購買頻度(回/年)×平均継続期間(年)-(新規顧客獲得コスト+既存顧客維持コスト)

なおサブスクリプション型の商品やサービスにおいては、定期契約となるため計算式に購入頻度を入れる必要がない。サブスクリプション型の場合は、上で紹介した計算式から購入頻度を除いた下記の計算式を用いるとよいだろう。

LTV=年間購入金額×収益率×顧客の取引継続期間(年)

LTVの見方

冒頭で述べた通り、LTVは顧客ライフサイクルの間に「その顧客がどれだけの利益をもたらせたのか」を示す指標である。例えば上記で計算したようにLTVの算出結果が15万円の場合、顧客一人あたり15万円の収益が見込めるというわけだ。業績進展のためには、LTVが投資コストを上回ることが大切で、LTVがゼロまたはマイナスとなれば施策改善が必要だと分かる。

マーケティングや広告費など許容範囲とする投資額の設定にLTVを役立てるとよいだろう。