起業したときに融資は必要か?
事業をするために会社を立ち上げた、そんなときに融資というワードが目に留まりました。
借金は怖い、借入が借入を呼び返済に困って借金地獄に陥る、だから融資なんて……と思っている方は結構多いと思います。
確かに、自分の身の丈に合わない融資を受けて、入ってくる収入より払うお金が多い状態になりますと、負のスパイラルに陥ります。
ですが、融資を上手に利用することで、成功への布石にもなりうるのです。
利益は収入から必要経費を差し引いたものです。
その利益をプールしていくことが今後の事業拡大等に不可欠なのですが、その利益の半分を借金の返済に充てて残りのお金を蓄えていく、そうすることが成功への意外な近道になるのです。
また、元金が減っていくと払う利息も減っていきます。
そして金融機関との付き合いが始まりますので、困ったときに手助けしてくれる可能性もあります。
お客様も紹介してもらえるかもしれません。
加えて創業時には日本政策金融公庫などで低金利の融資制度が利用できますので、創業時には特に融資を受けるメリットが大きいのです。
どんな融資があるのか?
それでは、創業時にはどんな融資があるのでしょうか?
創業時の融資には大きく分けて2つの制度融資があります。
1つは前述の日本政策金融公庫が行っている創業者向けの融資です。
もう1つは自治体と各自治体に存在する保証協会を利用した制度融資です。
この2つの融資の特徴について少し詳しく見ていきましょう。
創業者融資
日本政策金融公庫が創業者を対象に行っている融資です。
日本政策金融公庫のホームページを見てみますと、
・融資限度額3,000万円(うち運転資金は1,500万円) ・返済期間設備資金5年~10年 ・運転資金5年~7年 |
となっております。
この創業者融資の大きな特徴は無担保無保証という点です。
万一会社が倒産し、お金が払えなくなっても経営者に請求が来ないということです。
しかし、メリットは大きいのですが、断られるリスクがあります。
創業者個人で融資の申込みをした場合、融資を受けられるのは50%以下だと言われています。
制度融資
制度融資は上述のように各自治体と保証協会が協力してくれる融資制度です。
銀行から借り受ける際には担保が求められ、人的な保証として保証人を求められることが多いのですが、保証協会がその保証人になってくれる形になります。
また、自治体はあっせんや金利・保証料の補助を行ってくれます。
制度融資には大きく2つある
この制度融資には2つの大きな類型があります。
東京都を例にしてみますと、東京都の制度融資と各市区町村が行っている制度融資があります。
その2つについて表を使って紹介します。
なお、市区町村の側については新宿区を例に挙げてみました。
項目 | 東京都 | 新宿区 |
---|---|---|
融資金額 | 貸付限度額対象者に応じて ①創業前「自己資金+2,000万円」 ②創業後5年未満3,500万円 ③分社化3,500万円 |
2,000万円 ただし、 ①創業しようとする者1,000万円 ②分社化1,500万円 |
対象 | 次のいずれかに該当する者 ①事業を営んでいない個人で、創業しようとする者 ②事業を営んでいない個人で、自己資金があり創業しようとする者 ③創業した日から5年未満の中小企業者及び組合 ④創業した日から5年未満であり、次のいずれかから出資を受けている中小企業であること ア.東京都が出資するベンチャー投資法人傘下の投資事業者有限責任組合 イ.独立行政法人中小企業基盤整備機構の「ベンチャーファンド」事業が出資する投資事業有限責任組合 ウ.分社化しようとする法人 |
①現在事業主でなく、法人または個人で創業しようとする者 ②分社化しようとする者 ③法人または個人で創業し、5年未満の者 上述の要件を充たし、さらに、 A.住民税・事業税の滞納をしていない者 B.法人の場合、本店と本店登記を区内の同一事務所に置くこと C.事業所を区内に置くこと |
資金使途 | 運転資金・設備投資 | 運転資金・設備投資 |
利率 | 固定金利と変動金利から選択 その時々の状況に応じて決まる 期間ごとに金利は決まり、長くなるほど高く設定される |
2.1%以下 本人負担:0.7%以下 区負担:1.4%以下 |
保証料 | 保証協会の定めるところによる | 支払った信用保証料の1/2を補助(上限26万円) |
貸付期間 | 運転資金7年以内、 設備資金は10年以内 |
7年以内 (据置期間1年以内) |
経営相談員への相談 | 不要 | 必要 |
どちらがメリットは大きいのか?
東京都と市区町村の制度融資の2つについて見てきました。
それでは、融資を受けるとしたらどちらがメリットは大きいのでしょうか?
経営相談員の相談が不要な東京都の方がメリットとしては大きいでしょう。
経営相談員のハンコがないと融資にたどりつかないので、時間的なことを考えると東京都の制度融資を申込みする方が得策かと考えます。
ちなみに経営相談員の相談とありますが、これは相談ではなくて実際は指導です。
この指導は相談員と1度会えばおしまいというものではありません。
期間的には1~2ヵ月を要します。
時間がかかることはデメリットか?
先ほど各市区町村の場合は、経営相談員の相談が要るので1~2ヵ月は東京都の申込みに比べて時間がかかると記載しました。
とはいえ、各市区町村の方もそれなりにメリットが多いように見えます。
果たして時間がかかるのは大きなロスと言えるのでしょうか?
経営者の立場になるとわかると思いますが、経営すると経費がかかってきます。
創業時には通常の経費に加えて、特別にかかるものが多数含まれています。
例えば工場なら機械の搬入などです。
そして融資を受けなければ費用が支払えないかもしれませんし、利益を生み出すこともできません。
「時は金なり」という言葉がありますが、この時間を有効に使うことが経営者には求められています。
それは利益を生む、経営に不可欠な行為をするために求められているのです。
そう考えると、それ以外に時間を費やすことは極力抑えるべきということは自明の理となります。
対処法
制度融資を申し込む場合、窓口となるのは各金融機関となります。
多くは市区町村の融資を勧めてくることが多いでしょう。
ですが、市区町村の制度融資の場合は経営相談員の指導を経てからでないと融資は下りません。
それに時間を費やすことになり、スタートを切るのが必然的に遅くなります。
ですので、何とか金融機関を急かして東京都の制度融資を申し込むようにするのが得策でしょう。
まとめ
ここまで、創業時の制度融資等について東京都と各市区町村の制度について見てきました。
創業時には金利等で優遇された融資がいろいろと充実しています。
他方で、融資実行にたどり着くまでに多くの時間を費やすことにもなりかねず、それでスタートが遅れないよう気をつけたいところです。
各制度のメリットとデメリットを理解し、うまく使いこなして良いスタートを切りたいところです。(提供:ベンチャーサポート税理士法人)