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企業経営において、複数の経営者によって共同経営が行われるケースがあります。本記事では、共同経営のメリットやデメリットを整理した上で、円滑に進めるために注意すべきポイントについて解説します。

共同経営とは?

共同経営とは、複数の経営者や企業が、資金・労力・経営責任を共有し、共同で事業を運営することを指します。原則として共同経営者の各人が利益や損失を分け合い、経営上の意思決定や業務の負担を共同で行います。

ただし、共同経営者同士の権利(利益・損失の分配や意思決定権)は、常に対等ではありません。詳しい説明については後述の通りですが、出資比率に応じて最終決定権の有無が異なります。

共同経営は、リスクや責任の分担、専門知識やリソースの結集などのメリットを最大限活用し、経営者同士がお互いに協力して成功を追求するタイプの経営方式と言えます。

共同経営とジョイントベンチャーの違い

共同経営と類似するものとして、ジョイントベンチャー(以下JV)があります。JVとは、2つ以上の独立した企業が一時的に連携し、共同で特定のプロジェクトや事業を遂行するために、合弁会社を設立する事業形態のことを言います。建設業などで、大規模かつ高い技術力が必要な建設工事を行う際に、各企業が持つ強みを集結させて施行する目的で用いられます。

JVは上述のように、特定の目的のために作られる場合が多いため、その目的を達成した後に解散となります。また、合弁会社を設立するため、お互いに定められた出資比率に応じて資金を出し合います。 これらの点において、持続的に事業経営を行い、後述のように出資パターンが様々ある共同経営とは異なります。

共同経営における主なパターン

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共同経営は、出資者の出資比率に応じて主に以下のように分類されます。

①共同出資で事業体を設立する

共同経営で多く行われているのが、企業や経営者同士が出資をし合い、法人などの事業体を設立するタイプです。

株式会社の場合、出資比率が同じであれば、すべての出資者が持つ経営権も対等となります。しかし、対等がゆえに意見が割れた場合、は迅速な意思決定ができなくなることも考えられます。一方、出資者の間で出資比率が異なる場合は、出資比率の大きい経営者が意思決定の権限を持つことになります。

このように、共同出資で事業体を設立する場合は、出資比率に応じて決定権の範囲が異なりますが、各々の役割を分担することで、単独では成し得ないことが実現可能になります。

②単独出資で事業体を設立する

共同経営を行う経営者同士がお互いに出資し合うのではなく、一方が出資者として事業体を設立し、それ以外は出資をせずに実務の部分で事業に参画していくのがこのタイプです。

上述の共同出資の場合と同様に、お互いに分業しながら事業経営を進めていくことに変わりありませんが、最終的な意思決定権は出資者が単独で持つことになります。そのため、経営方針に関する重要な決定などがスピーディーに行えます。

③個人事業主として共同経営する

個人事業主同士が集まり、共同で事業を行うのがこのタイプです。個人事業には株式会社のように「出資」という概念がないため、お互いの事業規模や売上高に関係なく、上下関係が生まれることはありません。

経営者同士がお互いに分業しながら事業経営を進めていく点は他の2つと同じですが、同等の立場であるがゆえに、売上の按分や契約等が複雑化し、重要な意思決定の場面で問題が生じる場合があります。

また、全員ではなく代表者のみが個人事業主となり、その他のパートナーは業務委託を締結、あるいは従業員として実務を担うという方法もあります。この場合、経営上の責任は個人事業主のみに帰属します。

共同経営を開始するまでの流れ

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共同経営のための準備をし、実際に事業をスタートするまでの流れ(共同出資の場合)は、一般的に以下のようになります。

①目指すべき方向性を確認する

共同経営を行うためには、まず経営者同士が目指すべき方向性を明確にすることが大切です。具体的には、共通のビジョンと目標の確立、貢献分野の確認、経営方針や戦略の合意形成、リスク管理とリターンの共有などを確認します。

②業務の役割を明確化する

次に行うのが、お互いの業務の役割を明確化しておくことです。これにより、それぞれの経営者がお互いの専門性を活かし、効率的かつ効果的な経営が行えるようになります。また、明確な役割と責任を定めることにより、両者の意識が一致し、協力体制も構築しやすくなるでしょう。さらに、トラブルの予防とスムーズな経営を実現するためにも役割の明確化が重要です。

③利益配分と損失の負担を定める

利益が出た場合の配分方法をどうするのかを定めます。単に利益をどのように分けるのかだけでなく、お互いが分担する業務によって利益額が異なる場合、それをどのように分けていくのかなど、できる限り細かく定めておくことがポイントです。

また、損失の負担についても同様に、損失補填のために金融機関から資金調達を行う場合の連帯保証など、できるだけ細かく定めておくことが大切です。

④出資比率を決める

出資をともなう共同経営を選択した場合、最終的な意思決定権の所有者は出資額の大小によって決まります。したがって、上述の①から③までに話し合った内容と照らし合わせ、それに応じた出資比率となるように各々の出資額を決めます。

⑤共同経営契約書を作成する

最後に、①から④までの内容をまとめ、共同経営契約書を作成します。共同経営契約書には上述のように法令などで定められた特定のフォームはありませんが、事業にともない生じうる状況などを十分に考慮した上で、必要なものが漏れることのないように記載しなければなりません。契約書の内容について詳しくは後述します。

共同経営のメリット

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共同経営を行う主なメリットについてご紹介します。

リソースを共有できる

共同経営は経営者間で資金、時間、労力などのリソースを共有することが可能です。そのため、単独で事業を行う場合に比べ、事業で扱う範囲や規模の拡大が期待きます。

専門知識やスキルを補完できる

共同経営は、経営者同士が互いの特性を活かし、それぞれの専門知識や得意とする領域を補完し合うことを可能にします。単独ではカバーできない範囲の知識やスキルを補い合うことで、バランスの良い企業経営を実現できるようになります。

経営にかかる負担・リスクを分散できる

共同経営においては、経営者同士が相互に支え合い、実際の業務負担を分散させるだけでなく、会社が直面する難題に共に向き合ったり、ビジネスリスクを分散させたりする効果もあります。経営の過度な重圧から解放されれば、本来の力を発揮しやすくなり、適切な経営判断を迅速に行うことも可能になります。

多角的な視点を持って経営判断ができるようになる

共同経営では、それぞれに違うリソースやバックグラウンドを持つ経営者同士が集まります。そのため、複数の目で多角的な視点で検討することで、これまでにない斬新なアイデアやビジネスの創出につながる可能性も高まります。

共同経営のデメリット

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共同経営には上述のようなメリットがある反面、以下のようなデメリットも挙げられます。

意思決定が煩雑になる

共同経営では全てのパートナーが意見を出し合い、合意に達する必要があります。したがって、意思決定の過程は一人で経営するよりも複雑かつ時間がかかることがあります。
また、経営者間でビジョンや戦略、経営についての意見や価値観の違いから、対立や摩擦が生じる可能性があります。これが悪化すると経営の停滞や分裂を招くこともあります。

仕事量や利益の分配で、不公平感を生じさせやすい

共同経営では、仕事量や成果の偏りから、利益を分配する際に不公平感が生じてしまうことがあります。事前に契約で定めておかなければ、経営者同士の足並みが揃わなくなってしまいます。

責任が不明確になりやすい

共同経営では役割分担が不明確になることがあり、それが結果的に課題の所在や責任の所在を曖昧にしてしまう可能性があります。責任の所在が曖昧になってしまうと、常に相手任せとなってしまい、緊張感に欠く経営になることも考えられます。

簡単に関係を解消しづらい

経営者の一人がビジネスを離れる場合や、経営者間で意見が合わなくなった場合など、共同経営の解散は複雑で難しい場合があります。これは法的な手続きだけでなく、財産分配や事業継続の問題も引き起こす可能性があります。

これらのデメリットを克服するためには、共同経営者間で契約書を作成し、それぞれの役割、責任、利益の分配、意思決定のプロセス、ビジネスの終了時の手順等を明記することが重要です。

共同経営を円滑に進めるためのポイント

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次に、共同経営をスムーズに進めるためのポイントは、主に以下の4点です。

①共同経営の目的を明確化する

共同経営の目的が明確であれば、お互いの意思疎通や経営戦略の立案がスムーズに進み、ビジネスの成功に向けた道筋が明確になります。

なお、事業の目的や最終的な目標、中間目標や達成までの時間を明確にしていく際に、お互いの役割や業務範囲もできるだけ詳細に定められるとスムーズに進められます。

②共同経営契約書でルールを明文化する

共同経営者間での合意事項を法的に文書化したものです。この契約書は、共同経営者が一緒にビジネスを運営する際のルールを定め、各人の役割と責任を明確にします。以下に、一般的に共同経営契約書に含まれる要素をいくつか示します。

項目 記載内容の概要
共同経営者の情報 各共同経営者の名前や連絡先などの基本情報
ビジネスの概要 事業の名称、形態(例えば、合同会社や株式会社など)、事業内容などの基本的なビジネスの情報
各共同経営者の役割と責任 共同経営者が担当する具体的な業務範囲と役割、それぞれの責任
資本の提供 利益の分配比率と損失の分担方法
利益分配と損失の分担 利益の分配比率と損失の分担方法
意思決定のプロセス 意識決定のプロセス(投票権の配分、「過半数以上」など必要な合意の条件等を含む)
紛争解決の手続き 共同経営者間での紛争が生じた場合の解決策
退職、死亡、破産時の取り扱い 共同経営者が退職、死亡、破産した場合の事業、株式の取扱い

共同経営契約書は、ビジネスの運営における不確実性やリスクを軽減するための重要なツールです。この契約書を作成する際には法的な専門知識が必要となるため、弁護士などの専門家の助けを借りることが一般的です。また、この契約書は定期的に見直しを行い、ビジネスの変化に適応させることが重要です。

③経営者同士がコミュニケーションを意識的にとる

意見の対立や誤解は適切なコミュニケーションにより解消されます。また、ビジョンや目標が絵に描いた餅にならないように、定期的なミーティングを開き、経営についての進捗状況や課題、懸念事項を共有することが重要です。これは共同経営者全員が一致して進むべき方向を理解するための基盤となります。

経営者同士が一体となって意志決定を行い、共通のビジョンを示すことで、従業員やステークホルダーもやりがいを持って働けるようになります。効果的なコミュニケーションが意思疎通を促進し、信頼関係を築き、意思決定の質を向上させます。さらに変化に対応する力も養われることで、共同経営の成功に大きく寄与します。

終わりに

以上、共同経営について概要をご紹介しました。共同経営は、互いのリソースや強みを補完し合い、単独で行う以上のビジネスの成功が期待できる反面、役割分担、利益分配、紛争解決などの複雑さも伴います。

また、事業の成長やビジネスモデルの変化、共同経営の解消に伴い、事業の売却や他の企業への承継を検討する場面が出てくることも考えられます。こうした重要なビジネスの決断を要する場面では、専門的な知識と経験を持つ第三者の協力が不可欠です。

日本M&Aセンターは、企業や事業のM&Aに関する複雑なプロセスを支援する専門的なサービスを提供します。M&Aのコンサルタントと弁護士や公認会計士、税理士などの専門家がチームを組成し、事業の評価、適切な買収先の選定、契約交渉、法的手続きなど、M&Aの全てのステップをサポートします。

著者

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M&A マガジン編集部
日本M&Aセンター
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