介護施設入居者本位のサービスを展開し、好評を得る。アシストスーツ導入で職員の負担も軽減  ひらかわ(群馬県)

目次

  1. グループホームから次々と拡大。仕出し弁当事業も始める
  2. 介護度上昇とともに利用料下げる。居室はほぼ満室
  3. 軽量のアシストスーツ2着を導入。職員の評判も上々
  4. 「毎年、ICTで業務改善したい」。ベッドセンサー導入も検討
  5. SDGsへの意識も高い。夢は「混合介護施設」への展開
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
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「利用者様と、そのご家族様を中心に考えてサービスしています」。そう語るのは、株式会社ひらかわ(群馬県高崎市)の平川篤史代表取締役だ。グループホームなどの介護施設入居者などの利用者を第一に考え、安定した経営を続けている。介護職員の負担軽減のためアシストスーツをはじめとしたICT技術も活用するなど、新しい試みにも積極的だ。(TOP写真:「入居者、ご家族本位を心掛けている」と話す平川篤史代表取締役)

グループホームから次々と拡大。仕出し弁当事業も始める

平川篤史代表取締役の祖父が認知症となったことをきっかけに、長年、障がい者支援施設で働いていた父親の平川健二会長が2002年に有限会社ひらかわを設立。現在の社屋の土地も「相場以下で売ってくれる地主がいた」(健二会長)ことで、認知症の高齢者を受け入れるグループホームを始めた。篤史氏がその事業を継ぐべく入社したのが2011年だ。2020年には株式会社化し、篤史氏が代表取締役に就いた。

実は、篤史氏は調理師免許を保有しており、入社前は前橋市で仕出し弁当の販売店を経営していた。健二会長から介護施設を継ぐにあたっては、「事業を拡大することを条件に承諾した」(篤史氏)という。篤史氏は介護職員の養成学校に通い、入社した2011年にはグループホームに加え、隣接する土地を買い取り、住宅型有料老人ホーム、デイサービスセンター、訪問介護のためのヘルパーステーションを次々と開設。現在では約2,600平方メートルの敷地内に3棟の施設を持つ。さらに2016年には、かつて経験した仕出し弁当も施設内で作り、「ひらかわ屋」の屋号で入居者への供給と施設外への配達も始めた。

「お弁当は昼食だけの日替わりメニュー。1食500円で、もうけは考えていない」という。場合によっては、デイサービスの人が配達して安否確認をすることも。ケアマネジャーの利用者もいて、ひらかわへの入居あっせんもあるなど、「地域との接点となっている」という。

介護施設入居者本位のサービスを展開し、好評を得る。アシストスーツ導入で職員の負担も軽減  ひらかわ(群馬県)
ひらかわの創業時から続くグループホーム棟

介護度上昇とともに利用料下げる。居室はほぼ満室

介護保険制度では、支給額は要介護1の場合、月額16万7,650円だが、介護度が上がるにつれ増え、要介護5では36万2,170円にも上昇する。自己負担額は1割のため、それだけ施設利用者の負担は増えていく。ひらかわでは、利用者第一、家族優先の考えにより、2016年からは有料老人ホーム居室利用料を逆に下げるサービスを始めた。例えば、居室利用料は要介護1と2は月額4万5,000円だが、常時介護が必要で、在宅での生活が困難な要介護3では3万5,000円、4では2万5,000円、5では1万5,000円と低減させていく。

この価格設定により、「要介護5の方が安くなるケースもある」(篤史氏)。介護報酬は低減傾向にある上、人件費も上がっている中で経営的には厳しい面はあるものの、現在はグループホーム、老人ホーム合わせて計34室はほぼ満室の状態という。

介護施設入居者本位のサービスを展開し、好評を得る。アシストスーツ導入で職員の負担も軽減  ひらかわ(群馬県)
デイサービスセンター棟
介護施設入居者本位のサービスを展開し、好評を得る。アシストスーツ導入で職員の負担も軽減  ひらかわ(群馬県)
有料老人ホーム棟
介護施設入居者本位のサービスを展開し、好評を得る。アシストスーツ導入で職員の負担も軽減  ひらかわ(群馬県)
有料老人ホームの居室

軽量のアシストスーツ2着を導入。職員の評判も上々

ただ、介護職員47人はほとんどが女性で、平均年齢は60歳台、最高齢は80歳と高いため、介護労働の身体的負担は大きい。これまで腰痛ベルトを支給したりしていたが、「腰などが痛くなる前に何か対策を」と考えていたところ、安価で使い勝手の良いアシストスーツを知った。試験的に導入したところ、予想以上の効果があったため、2023年3月には群馬県からの半額補助も受けて、2着を導入した。

このアシストスーツは、空気を入れて動力としているため電気が不要なほか、最大補助力25.5キログラム、本体の重量は3.8キログラムと軽量だ。しかも、防水・防塵機能もあり、「入浴介助などで濡れても大丈夫で、洗うこともできる。使用者からは『床に座った人も楽に椅子に座らせることができるなど、楽になった』と評判です」。装着の手間も、「リュックサックを背負うような感覚で、簡単に装着できる職員もいる」という。

現在はグループホームで使用しているが、「老人ホームやデイサービスでも、夜間のおむつ交換などにも使えればいい」とし、導入数を増やしていく考えだ。

介護施設入居者本位のサービスを展開し、好評を得る。アシストスーツ導入で職員の負担も軽減  ひらかわ(群馬県)
アシストスーツを装着して介護する職員
介護施設入居者本位のサービスを展開し、好評を得る。アシストスーツ導入で職員の負担も軽減  ひらかわ(群馬県)
アシストスーツを装着して荷物を持つ平川代表取締役

「毎年、ICTで業務改善したい」。ベッドセンサー導入も検討

篤史氏は、「ICTを使って、毎年、何らかの業務改善をしていきたい」と意欲的だ。これまでも、2021年には血圧や心拍数、血中酸素濃度などの測定データを記録するタブレット端末を導入。データ転送により集中管理が可能となり、紙に記録することも不要で、「ペーパーレス化につながった」。2022年にはコロナ禍に対応。面会が困難となったことから、ホームページからアクセスしてオンラインで面会できるシステムを採用した。

それでも、悩みの種は「夜勤スタッフを集めるのが大変」なことだ。通常は夕方4時から、休憩時間を含めて翌朝9時までのシフトとなるが、定期的な居室巡回などの必要がある。篤史氏は「通常の半分の時間の勤務シフトも考えている」というが、作業効率化のためにベッドセンサーの導入も検討している。

これは、起きているか寝ているかの荷重の変化を感知し、アラームで知らせるシステム。「このシステムを使えば、データを活用して見回り時間を決めることもできる」。特に、老人ホームの夜勤は2人体制だが、新たなシステムを導入すれば、「1人に減らせるかもしれない」と、効率化に期待している。

SDGsへの意識も高い。夢は「混合介護施設」への展開

ひらかわのモットーは、「のんびりと、安心・安全・心の介護」で、介護職員ともに気を配っている。新入社員の入社時には「ここに自分の居場所がある喜びを感じながら…」と題した文章を渡している。そこには、医療知識・認知症への知識に強くなる、いい仕事をする、仕事とは演技でありプロの役者になり切って一日を演じ切る、などの心得がつづられている。

同社は介護施設としては珍しく、SDGs(持続可能な開発目標)への意識も高い。グループホームなど3施設で、使用電力量の再生可能エネルギー利用率30%の供給を受けている証明書を取得し、二酸化炭素削減も実現。弁当製造も行っていることから、食品ロスの削減にも気を配る。

篤史氏に将来の夢を聞くと、「最終的には、介護施設だけでなく、例えば医療施設やリハビリ施設なども備えた混合介護施設にできたら」と語る。入居者とその家族、さらに職員にも優しいひらかわのサービスが、今後どのように展開されていくのかが楽しみだ。

企業概要

会社名株式会社ひらかわ
本社群馬県高崎市中里見町604―1
HPhttps://gh-hirakawa.com/
電話027-374-8090
設立2002年2月
従業員数47人
事業内容 住宅型有料老人ホーム、、認知症対応型共同生活介護、通所介護、訪問介護サービス、仕出し弁当製造