昔ながらの梅干づくり。セキュリティ対策の徹底で「安心」確保し事業拡大 コマックス(群馬県)

目次

  1. 「昔ながらの梅干」を看板商品に、事業拡大。生産農家別の管理も徹底
  2. 貿易事業が復活
  3. 金融機関との連携強化で新たな輸出入商品を発掘。「花山うどん」も有力商品へ
  4. GSP導入でデータ保全の不安を解消
  5. 改正電子帳簿保存法やインボイス制度に対応したICT導入も推進
  6. メーカーと商社の両面の強みを生かして、貿易事業と同時に群馬の梅関連事業の拡大にも取り組み
  7. 「健康経営プロジェクト」を推進
制作協力
産経ニュース エディトリアルチーム
産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

梅干しの製造・販売、加工食品等の輸出入、調味料の卸売と業容を拡大してきた株式会社コマックスは、2代目の小山勝宏代表取締役社長が2024年に就任10年目を迎える。創業以来、顧客管理や生産管理などは部署ごとに行いICT活用もまちまちだったが、セキュリティ対策の見直しや将来のシステム統合も視野に入れて、新型サーバーやGSP(ゲートウェイ・セキュリティ・パッケージ)を導入した。製品開発や販路拡大など第二の創業に向けて万全の情報セキュリティ対策強化と情報システム運用の効率化とをさらに進めていく方針だ。

「昔ながらの梅干」を看板商品に、事業拡大。生産農家別の管理も徹底

父親である先代社長の小山行雄氏(故人)は勤めていた食品会社から事業の一部譲渡を受けて1999年に株式会社コマックスを創業した。群馬県は和歌山県に次ぐ国内第2位の梅の産地で、梅干し造りも昔から盛んだった。県産梅の主要品種は「白加賀」で、収穫方法は和歌山県とは違い梅の実を手もぎして塩漬けするのが特徴だ。コマックスは塩分がしっかり効いた(18~22%)昔ながらの梅干し造りが売りで、塩以外の調味料は一切使用していない。スーパー向けから業務用まで幅広く販売されており、品質と味には定評がある。

昔ながらの梅干づくり。セキュリティ対策の徹底で「安心」確保し事業拡大 コマックス(群馬県)
農家から仕入れた梅は洗浄機で汚れを落とす

生梅の漬け込みは毎年6月20日前後から始まる。高崎市の箕郷町、旧榛名町など群馬県西部の生産農家で育てた梅を中心に仕入れており、今年もまさに漬け込み作業が始まったところだ。容量1トンの漬け込みタンクに完熟生梅500キログラムを漬け込む。国産の塩を使用している。粒子が粗くてしっとりとしている塩は、梅に良くからみ奥まで浸透する。そのため表面だけでなく、種付近の芯まで美味しく梅の味を楽しめる。

漬け込む梅は漬け込みタンクの番号を見ればどこの農家の梅をいつ漬け込んだかなどの製造情報が一目でわかるよう、トレーサビリティ(追跡可能な履歴)を確立している。商品は熟練したスタッフが心をこめて、ひとつひとつ目視して品質を確かめている。卓越した職人の経験は数字で表せないものなので、なるべく機械を使わず、人の手で作っている。

昔ながらの梅干づくり。セキュリティ対策の徹底で「安心」確保し事業拡大 コマックス(群馬県)
生産農家ごとに梅を漬け込むタンクを変えてトレーサビリティを徹底

貿易事業が復活

小山社長は大手電機機器グループの経理部門で働いていたが、2012年に家業を継ぐためにコマックスに入社した。先代である父の行雄氏がわずか2年後に他界。東日本大震災後の日本経済低迷期に社長を引き継ぐことになったが、経済環境がやや持ち直したことと社員一丸の努力により就任一年目で2年間の低迷期を脱した。低迷した韓国との貿易事業が復活した要因も大きい。

「業績回復は3本の矢が上手く機能してくれたから。梅干しなどの梅関連食品のほか、貿易事業がいまは大きな柱になっていて、先代から続く韓国企業との輸出入事業が支えになった。調味料の卸売も重要な事業で、この3事業がうまく回ってくれています」と小山社長。直近の2022年12月期は好況だった。「前年度は原材料値上げ前の特需もあって貿易事業は特に伸びたが、今年度はその反動減を覚悟している」と厳しい見通しを説明する。

昔ながらの梅干づくり。セキュリティ対策の徹底で「安心」確保し事業拡大 コマックス(群馬県)
「前年度は貿易事業が業績に貢献しました」と小山勝宏社長

取引先の韓国企業は輸出と輸入でそれぞれ1社あり、両社ともに先代から親子二代で家族同様の付き合いが続いている。東日本大震災や日本製品不買運動、コロナ禍といった逆風下でも取引は続いた。「輸出先は無理してでも取引規模を維持してくれて、売上高は減らなかった。輸入先は円安、原料高が続く中、値上の抑制並びにその時期を遅らせてくれた。」(小山社長)コマックスの経営の大きな支えになった。とはいえ、相次ぐ原材料や配送代、電気代の値上げが収益を圧迫。商品価格の値上げを余儀なくされる一方、輸出入コストの削減を実施した。具体的には輸入品検査費用の圧縮、輸出入回数の集約、貿易協定の関税率低減の活用等。

梅干しの需要は人口減で下がり傾向だが、他の漬物よりは安定している。しかし、県内の梅農家の高齢化が進み生産量は減少傾向が続いている。2022年は降ひょう被害で榛名工場の天日干し用ビニールハウスが損害を受けた上、原料の確保にも苦慮した。事業の先行きは決して明るい材料ばかりではない。

昔ながらの梅干づくり。セキュリティ対策の徹底で「安心」確保し事業拡大 コマックス(群馬県)
塩以外加えない昔ながらの梅干しのファンは多い

金融機関との連携強化で新たな輸出入商品を発掘。「花山うどん」も有力商品へ

小山社長は事業環境の変化に対応し数々の手を打ってきた。もともと経理畑の経験が長く銀行との付き合いに慣れていることもあり、「いまは8行と取引がある」(小山社長)という。経営や融資の相談のほか、それぞれの銀行と取引がある企業とのマッチングに期待している。県内でよく知られる幅広麺の「花山うどんの鬼ひもかわ」はうどん天下一決定戦で三年連続の日本一、また麺-1グランプリ優勝と知名度が急上昇。コロナ過前に東京の店舗に外国人が押しかけていると聞いた小山社長は韓国への輸出を手掛け、同社の新たな有力な取扱商品に浮上させた。

GSP導入でデータ保全の不安を解消

ICTソリューションの本格導入も変化への対応策の一つだ。仕入データや販売管理システムの一元管理に加え、改正電子帳簿保存法やインボイス制度など制度改正に向けた経営情報の一元管理に取り組んでいる。

従来は先代社長の時代から稼動していた旧サーバーシステムと家電量販店で購入した外付けハードディスク(HDD)を使って1週間に1度、手作業で30分くらいかけてバックアップを取っていた。「かなり面倒な作業で、バックアップの取り忘れも度々あった」(小山社長)という。事務所が地震や火事になった場合はバックアップまで消失するリスクを心配して、HDDを自宅に持ち帰るなどセキュリティ対策に気が休まらなかった。

新型サーバーに入れ替えたのは2021年。翌年にはクラウドストレージを追加して連携を図った。しかし、小山社長は情報漏洩(ろうえい)やコンピューターウイルスによる被害が急増しているほか、海外からの不審なメールも数多く送られてくるようになったことを懸念。経営データのバックアップに加え、万全のセキュリティ対策を重要テーマに据えて検討した。

2022年春にはGSP(ゲートウェイ・セキュリティ)を導入し、24時間システム全体のセキュリティ対策を行い自動でバックアップ作業が行われるようになった。小山社長は「手作業のバックアップ作業の手間がいらなくなったのはありがたいが、それより、情報セキュリティとデータ保全が確実にできているという安心感が最大の導入効果だ」と効果に満足そうだ。GSP導入により毎週のバックアップ作業が自動化されたほか、物理的データ保全機能として①無停電電源装置(UPS)により停電時もデータを保全、②HDD2台による日々のバックアップ、③クラウドネットワークへのデイリーバックアップが行われるため、システムの稼動状況を日々気にする必要がなくなった。

昔ながらの梅干づくり。セキュリティ対策の徹底で「安心」確保し事業拡大 コマックス(群馬県)
万全のセキュリティ対策で「安心」を確立した

群馬県は北陸地方に次いで雷が多く、特に夏は太平洋側の風が上毛三山と呼ばれる赤城山、榛名山、妙義山など山地で上昇気流を起こして雷が多発。瞬電と呼ばれる短時間の停電が発生しやすく企業の悩みの種でもある。情報システムの安定稼動にUPSは欠かせない。

改正電子帳簿保存法やインボイス制度に対応したICT導入も推進

さらに、改正電子帳簿保存法やインボイス制度の導入をにらみ、新制度に対応した複合機を設置したほか、ゆくゆくは、部署ごとに作成してきた顧客管理や製造管理情報の「見える化」による標準化への取り組み、ICTソリューションによる事業拡大を見据えている。

メーカーと商社の両面の強みを生かして、貿易事業と同時に群馬の梅関連事業の拡大にも取り組み

「メーカーと商社の両方の立場で事業を捉えられる」(小山社長)のがコマックスの強みでもある。貿易分野では減少してきた商品アイテム数の拡大に舵を切る一方、韓国以外の輸出販路開拓にも力を注いで行く方針だ。韓国から輸入している甘味料ステビアは、他の人工甘味料とは違い南米原産のキク科の植物という天然由来原料のため需要が増えている。コマックスは国際基準に準拠した純度の高い製品を扱っているため、今後大手メーカーの輸出商品用の需要増が期待できるという。

梅関連事業では、将来の梅生産や国内消費量の落ち込みを見据え、県内の梅加工業者5社による群馬の梅を応援する企業の会「うめのわ」に参画。県産梅のPRと産地の未来について考える取り組みを始めた。

「健康経営プロジェクト」を推進

昔ながらの梅干づくり。セキュリティ対策の徹底で「安心」確保し事業拡大 コマックス(群馬県)
ICT導入とともに健康経営も推進する

小山社長がICT化と並行して進めているのが「健康経営プロジェクト」だ。従業員が十分な育児時間を取れるように育児休暇を取得しやすくしたほか、軽視されがちなパート従業員の有給休暇の付与について法令を順守している。年末年始やお盆も1週間の休みを基本としている。直近では健康経営優良法人2023(中小規模法人部門)の認定を取得した。ICTソリューションが次の段階に進み業務効率化が実現すれば、健康経営プロジェクトもより進化しそうだ。

企業概要

会社名株式会社コマックス
本社群馬県前橋市五代町790-1
HPhttp://www.komax-shop.co.jp/company.html
電話027-260-3051
創業1999年
従業員数16人
事業内容加工食品等の輸出入、梅干しおよび関連製品の製造販売、調味料・添加物の卸売