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消費者との契約問題が広まり、あっという間の倒産
NOVAの変調は2005年頃から徐々に顕在化します。入学者が予想を大幅に下回るようになり、経常赤字を出すようになったのです。その頃にはCMで一世を風靡した「NOVAうさぎ」のキャラクターもヒットし、2005年9月末段階で教室数は970にまで急拡大していました。
しかし、2003年から教室数が1.6倍にまで増えていたにもかかわらず、顧客は9%程度しか増えていなかったのです。この背景には、教室数が近隣で乱立し始めたために自社内競合が起きていたことや、教室数の成長スピードにスタッフが追いついていかなかった、といった問題がありました。明らかにマネジメントのキャパシティを超えた成長をしてしまっていたのです。
しかし、その裏側にはもっと本質的な問題がありました。この頃から消費者側はNOVAに対する「ある懸念」を持っていたため、契約を躊躇する人たちが出ていました。その懸念とは、「本当に予約が取れるのか?」ということ。つまり、レッスン単価を安くするために大量に購入しても、実際には講師が不足していてレッスンの予約ができない、という声が広がっていたのです。
そして、サービスに不満を持った顧客がレッスンを残したまま中途解約すると、購入時と異なる料金体系で精算され、返還額が少なくなるというトラブルが起きていました。実際に既に各地で受講料の返還を巡る訴訟が起きるともに、国民生活センターには1年で1000件にも上る相談が寄せられていました。その事態を重く見た経済産業省と東京都は、2007年2月にNOVAに立ち入り検査を行います。
これを機に、世間には一気に「NOVA不信」が表出し始めます。年間を通じて入学金を免除していたのに「キャンペーン期間中だけ」といった広告を出して生徒を集めていたことや、契約の取り消しができる時期なのに「期間が過ぎた」と虚偽の説明を行っていたことなども含め、NOVAの悪質な手法がマスコミで連日のように報道されるようになります。
4月には最高裁がNOVAの契約は「特定商取引法の趣旨に反していて無効」という判決を言い渡し、6月には立ち入り検査の結果、NOVAが「特定商取引法違反に該当する」として、経済産業省は長期コースの新規契約など一部業務を6カ月間停止するよう命じました。ここまでの連日の報道や業務停止処分により、契約者は一気に解約に動き出します。
もはやこの流れに抗う力は猿橋社長には残っていませんでした。急激にキャッシュの歯車が逆回転し始めたことで、資金は一気に枯渇し、度重なる給与の遅配により講師もスタッフもNOVAから離脱し始めます。万策尽きたNOVAは2007年10月26日、会社更生法を申請しました。栄光の期間からわずか数年の間の転落劇でした。