攻めの姿勢の経営者ほど、新サービスや新規事業の立ち上げ・生産性の向上・人材の強化・シェアの拡大など、大きな経営テーマに向き合い、そのために必要な人や組織・目標のマネジメントに日々注力されています。しかし、経営者や経営陣が本気で取り組めば取り組むほど、複雑な課題やその多様さ根深さに頭を抱える会社も多いのではないでしょうか。
本稿では、会社の目的・目標達成の確度を上げるため、組織から個人レベルの目標マネジメントの仕組みについて、多くの中小企業がテコ入れ余地のあるポイントを解説していきます。
この記事の主な対象者
数字による目標管理をしている会社・攻めの経営者・攻めの経営戦略を考える経営陣・変革の推進役を担うマネジメント層
お役立ちシーン
・目標設定(会社・部署・チーム・個人レベル)
・目標管理(会社・部署・チーム・個人レベル)
あなたの組織にこんな問題はありませんか?
・目標の進捗確認のミーティングの空気が悪い。
・数値目標に対して会社で冷めた雰囲気が漂っていたり、メンバーの目標疲れを感じる。
・部署やチーム個人レベルで自主的に設定させた目標が保守的だと感じる。
・会議や面談で「何のためにその数字を追うのか」「達成すると何を成し遂げることになるのか」といった数字の意味を確認するための質疑が出ない。
・数値目標の背景に対する解説は「経営理念や経営目的を達成するため」という説明に留まり、そのロジックが解説されない。
・昨年対比の成長率で算出しただけの数値で目標設定されている。
・目標のマネジメントの形はあるけれども機能している実感が持てない。
多くの会社が採用する数値目標による目標マネジメント
定量的な数値目標でPDCAを回す目標マネジメントはあまりに一般的で、採用されている会社も多いのではないでしょうか。その手法自体は、目標達成を支える重要な要因の1つです。数値目標のない状態は、目的を達成するまでのマイルストーンがない状態に等しく、その状態でチームや組織を動かすことは困難だといえます。
しかし、数値目標の前には本来その数字を達成することで成し遂げたい「状態」があるはずです。その「状態」を作り出すことこそが本来の目的であり、数値目標は本来の目的を達成しているかどうか確認するため「指標」に過ぎません。
にも関わらず、経営会議・部署やチーム会議・個人の目標面談など実際の目標マネジメントの運用現場においては、本来の目的の中身についてや、本来の目的と数値目標の結びつきのロジックについて言及される機会は少なく、確認指標であるはずの数値目標の進捗のみが議題となってしまっているケースが往々にしてあります。
その結果「目標=数字」となって数字だけが一人歩きし、本来の目的を成し遂げるための本質的な議論がなされない状況に陥りやすくなるのです。
数値目標だけの目標マネジメントを放置すると会社の原動力が損なわれる
数字だけを追う組織やチームは一定レベルの成果をあげることはできますが、達成したらまた次の目標が更新されるという状況が繰り返されると、次第にメンバーはその数値目標を自分が追う意義を見出せなくなります。
経営層から現場に落ちてくる数字をこなすという目標ゲームのような感覚に陥りやすく、「会社運営のために必要な数字を作る」という低いモチベーションで仕事にあたるメンバーが増えやすくなるのです。中には退職が続発するという状況に陥るケースもあります。
会社の原動力ともなる「何かを成し遂げるために、この数字を達成するんだ!」という社員の健全なモチベーションは、数値目標によるマネジメントだけでは長続きしないのです。
さらには会社の信用基盤を揺らぐ問題に発展することも
数字目標の達成が至上命題となった組織では、働く人のモラルを低下させ、やがてそれが 会社の信用基盤を揺らがしたり、社会問題にまで発展したりするケースは、過去を振り返ると何度もあります。
これは数字がノルマになっているかどうかに関わらず、目標=数字という組織風土では程度の大小はあれ起こりうる問題です。
解決策 目標設定に必要な3つの要素
目標マネジメントの手法にはMBOやKPIを採用されている会社が多く、最近ではGoogleやメルカリが導入していることで有名となったOKRを導入しようとする会社も増えています。
それらのどのマネジメント制度を採用していたとしても共通して採用できる見直し方法として、下記の3つの要素が漏れていないか・自社の目標マネジメントにおいてはどこでそれが設定されているか・各要素の繋がりのロジックは十分かという着眼点で目標設定の見直しを行ってみてください。
目標設定に必要な3つの要素
「何のために(目的やミッションの位置づけ)」
↓
「何を成し遂げたいか・どういう状態を築きたいか(定性的な目標、方針の位置づけ)」
↓
「成し遂げたかどうかを確認する成果はなにか(定量的な目標、数値目標、ターゲットの位置づけ)」
設定に抜け漏れがある場合は、情報を補足することで今の目標マネジメントを改善することが可能です。
目標マネジメントの手法によっては、目的として定義しているものが定性目標の位置づけとなっているなど位置付けが異なるケースもあるかと思いますが、重要なのはどこかにこの3つの要素が設定されているということです。目標マネジメントの仕組み自体を変更することは大がかりだという場合でも、まずは不足情報を補足することで改善してみてください。
まとめ
数字による目標マネジメントはあまりに一般的で、疑いの視点が入りにくいという点で少し厄介です。また、日々数字にフォーカスすることで短期的には成果がでる(出ているように感じる)ことが多く、その結果、目標マネジメントのやり方は正しいという前提のもと適正の検討すらされないことが一般的です。
また、成果が上手くあがらない場合も、まず第一に施策や個人の意識・能力の改善に焦点があたり、目標マネジメントのあり方まで意識が及びにくいもの。まずは前述した課題が会社に現われていないかをチェックしましょう。
そして該当する項目がある場合は問題点が起こり得ないか推測し、必要に応じて本稿でお伝えした3つのポイントの視点から見直しを行ってみてください。
(提供:税理士法人M&Tグループ)