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産経ニュース エディトリアルチーム
2009年の創業当初から地域医療と介護にトレーニング施設を一体化させた複合施設を始めた医療法人松福会(しょうふくかい)。2023年6月使用分からの北陸電力の電気料金大幅値上げを前に、LED化できていなかった非常灯などをすべてLED化させた。また、さらなる節電システムの導入も検討してSDGsにもつなげることを模索している。
クリニックとフィットネス、介護一体の複合施設で健康長寿
医療法人松福会を2009年に創設した初代理事長の松下利雄氏は、福井赤十字病院で30年にわたって勤務。外科部長も勤めた経験から、医療だけでなく、介護と健康の維持増進を一体化させる大切さを感じて、松福会を立ち上げた。
理念は「健康・医療・福祉の新しいタイプの複合施設の定着化を図る」。そのために、「医学とスポーツ科学の両面で予防・治療・改善・回復・健康増進までトータルに対応する」ことを目指し、フィットネス会社を経営していた妻の協力も得て、開設当初からクリニックとフィットネスジム、介護施設を一体化させた複合施設「はるさか」をオープンさせた。
フィットネスは地域に開放。笑い絶えない認知症予防教室
メディカルフィットネス「フィジカル」では、健康増進などのためのフィジカル会員や生活習慣病の予防改善、リハビリ向けメディカル会員などを制度化。「キック&パンチ」や「リラックスヨガ」など多彩なレッスンも開き、健康運動指導士の職員が中心になって指導しているほか、ヨガなどは外部の講師に委託している。スタジオなどは空手団体に貸し出すこともあり、利用者は高齢者に限らず、老若男女さまざまだ。
病気予防などにも気を使っており、認知症予防「すまいるサロン」や生活習慣病予防教室などを開催。「すまいるサロン」では「認知症予防に『笑い』が最適」として、さまざまな体操やレクリエーションを行っており、笑いが絶えない教室になっている。
利用料も低廉で、週2回開催で会費は月額1,000円。送迎は週1回までに限られるが、月額400円で済み、昼食代も600円になっている。
訓練によって介護サービスから通常のフィットネスに移行した人も
フィットネスと介護施設が一体となっていることで可能になるのが、介護サービスへのスムーズな移行だ。76歳の男性は、フィットネスジムで体を動かしていた。この4月(2023年)からは、年齢による体力低下で理学療法士の下で介護サービスを受け始めた。
「はるさか」のデイサービスは、理学療法士・作業療法士の指導による、リハビリ特化型デイケアサービスだ。福祉大国・ノルウェーやフィンランドなどから輸入した最新機器や歩行機能回復支援機器も設置し、機能訓練指導員が中心となって、身体機能の維持や回復のための訓練を行っている。
ただ、介護サービスに移行したからといって、ずっと介護サービスというわけではない。松下初代理事長の子息の松下賢三事務長は「介護サービスから入ったけど、理学療法士の下で訓練をするうちにフィットネスに移行した人もいる」と話す。フィットネスジムの利用者の最高齢は80代。前述の76歳の男性も基礎体力があるだけに、理学療法士らの指導を受けてリハビリを行えば、介護保険制度から脱することもできそうだ。
電気料金値上げ方針から非常用ライトもLED化
地域住民の健康維持増進に貢献している松福会に昨年11月、衝撃が走った。北陸電力が電気料金を今年4月から1.5倍近く値上げする方針を明らかにしたからだ。松福会では7年ほど前、廊下や事務所などの照明をすべてLEDに取り替えていた。しかし、災害時に足元を照らすフットライトや非常用出口を示す表示板は蛍光灯のままだった。その設備老朽化を防災点検の際に指摘された頃、システム支援会社からLED化を提案された。
節電方法として、エアコンの温度設定や不使用時停止の自動化も検討
もともと、「地震時に非常用の蛍光灯が落下してガラスが飛び散ることを懸念していた」(松下事務長)だけに、システム支援会社の提案を受けてすべてのLED化を決断。虫が寄りやすい波長を出す蛍光灯をなくしたことで、虫が寄らなくなるメリットも魅力だった。
値上げ幅は政府との調整で少し圧縮されたが、2023年6月使用分から標準的な家庭での値上げ幅が42%になるため、そのコスト増分をLED化だけでまかなうことは不可能だ。そのため、新たに検討し始めているのが、エアコンの温度設定やオンオフを自動的に行うシステムの導入だ。
介護施設では夜間でもエアコンをつけ続ける場所が多いため、電気使用量の7割はエアコンに使われているとされる。エアコンを消しても問題のない場所や時間帯はあり、これらの時間帯のオンオフ設定を自動化することなどで、不必要なエアコンの稼働時間を削減することを検討。省エネは世界的に提唱されているSDGsの考え方の一部でもあるため、きめ細かな管理の効果が期待される。
コロナ禍で減少のフィットネス会員数増のため、在宅シニアへの送迎サービスを検討
地域住民の健康維持増進に大きな効果を発揮しているフィットネスだが、コロナ禍の中、会員数は減少した。フィットネスは介護保険制度とは関係のない事業だが、地域貢献の意味もあり、利用料は安価にしていた。
地域の方々の利用を促進するため、有料だが送迎を検討している。特にシニア女性の場合は、自動車を運転する人が少なく、男性でも介護保険を使うほどではないが出かけるのがおっくうな在宅シニア。そんな人たちのためにフィットネスを利用してほしいという施設の願いからだ。
2022年12月就任の現理事長は、消火器・一般外科・内視鏡診断治療の専門家。医療や介護を受ける方の強い味方
現理事長の佐藤嘉紀氏は松下事務長との交友関係から2022年12月に就任した。1999年に福井医科大学を卒業後、同大学第一外科へ入局し、20年間にわたり福井県を中心とした中規模~大規模病院で消化器・一般外科・内視鏡診断治療を中心に経験を積んだ。また兵庫県の肛門専門病院でも研鑽(けんさん)を積んだ肛門専門医でもある。クリニックには、佐藤理事長就任と同時に、最新鋭の内視鏡診断機器などを導入した。その専門性の高さが医療や介護を受ける方々へ大きく役立つのは間違いない。
医療とフィットネスと介護。その複合利用と理事長の専門性によって松福会は、さらに地域の人々の健康寿命を延ばす活動を行い、地域にとってなくてはならない存在になっていくだろう。
企業概要
名称 | 医療法人松福会 |
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創立 | 2009年4月 |
本社 | 福井県坂井市春江町中筋100-75 |
HP | https://www.harusaka-g.jp/ |
電話 | 0776-58-0182 |
職員数 | 60人 |
事業内容 | 事業内容 居宅介護支援事業所「はるさか」、介護老人保健施設「ライフケアはるさか」、通所リハビリテーション「はるさか」、短期入所生活介護施設「はるさか」、小規模多機能型居宅介護「きなっせ」、メディカルフィットネス「フィジカル」、「クリニックはるさか」を運営 |