法人税申告書,書き方,期限
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決算日から2ヵ月以内、延長すれば3ヵ月以内に提出することになる法人税申告書。「自分で作成しよう」と思う人も多いだろう。法人税申告書は、自分で作成することもできる。しかし、税金の申告に時間をかけるのか、それとも外注して本業に専念するのかは慎重に検討したい。ここでは、法人税申告書の書き方や提出部数、期限などを紹介する。

目次

  1. 法人税申告書とは
  2. 法人税申告書の重要な別表について
    1. 法人税申告書の基本的な構成
    2. 別表四 所得の金額の計算に関する明細書
    3. 別表一 各事業年度の所得に係る申告書
    4. 別表五(一) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書
    5. 別表五(二) 租税公課の納付状況等に関する明細書
    6. 別表八(一) 受取配当等の益金不算入に関する明細書
    7. 別表十一(一の二) 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書
    8. 別表十五 交際費等の損金算入に関する明細書
    9. 別表十六(一)~(九) 減価償却費に関する明細書
    10. 別表二 同族会社等の判定に関する明細書
  3. 法人税申告書の提出部数
  4. 法人税申告書の提出期限
  5. 法人税申告書は自分で作成することができる?

法人税申告書とは

法人税申告書とは、法人が支払う年間の法人税を計算するための書類だ。必要な書類を揃え、決算日から2ヵ月以内に税務署に提出する。

中小企業の場合、提出する申告書は以下のとおりだ。

・法人税申告書
・消費税申告書
・復興特別法人税申告書
・法人事業税等の申告書
・法人住民税の申告書

法人税申告書は、多くの別表や添付書類が必要になる。法人税申告書の添付書類には、

・別表書類
・決算報告書(貸借対照表、損益計算書、および株主資本等変動計算書)
・勘定科目明細書
・法人税事業概況説明書
・適用額明細書

などがある。

法人税申告書は、決算報告書をもとに作成する。したがって、決算において原価や費用、あるいは損失などの損金として計上しなかったものを、申告の段階で計上することは難しい。

会計には独自の処理方法があり、税務申告とは処理方法や目的が異なる。しかし、税務申告を踏まえて会計処理を行わないと、無駄な税金を支払うことになりかねないので注意したい。

法人税申告書の重要な別表について

法人税申告書には、100種類以上の「別表」がある。とはいえ、申告の際にすべての別表を提出しなければならないわけではない。別表のなかには、重要度が高く必ず提出しなければならないものと、そうでないものがある。

ここでは、法人税申告書の基本的な構成と、重要度の高い別表について見ていこう。

法人税申告書の基本的な構成

法人税申告書の「別表一 各事業年度の所得に係る申告書」は一般に「法人税確定申告書」と呼ばれており、法人税の税額を計算するための書類である。この別表一は法人税計算の「最終結果」を記載するものであり、そこに至るまでに行わなければならない重要なプロセスがある。それは、「決算報告書の『当期利益金額』を『各事業年度の所得金額』に修正すること」だ。

法人税の計算における「所得」は、会計上の「利益」とは必ずしも一致しない。なぜならば、所得の計算は「加算項目」と「減算項目」によって調整されるからだ。

加算項目および減算項目の例は、以下のとおりだ。

【加算処理および減算処理を行う項目の例】

加/減項目経理処理税務処理
加算租税公課費用法人税・住民税の本税は損金不算入
引当金費用特定のものは一定限度額以内のみを損金算入
減価償却費費用一定限度額以内のみを損金算入
寄付金費用一定限度額以内のみを損金算入
交際費費用一定限度額以内のみを損金算入
減算受取配当金収益一定額は益金不算入

たとえば交際費は、会計上は費用として計上するが、税務上は全額を損金に算入することはできず、一定限度額以内のみが損金に算入される。したがって、この場合の所得は収益に加算して計算することになる。

また、受取配当金は、会計上は収益として計上するが、税務上は、一定額を益金不算入とすることができる。したがって、この場合の所得は収益から減算して計算されることになる。

各項目の加算および減算による修正を、交際費については「別表十五 交際費等の損金算入に関する明細書」、受取配当金については「別表八(一) 受取配当等の益金不算入に関する明細書」などの別表で行い、その上で所得金額の計算を「別表四 所得の金額の計算に関する明細書」で行うことになる。

別表四が完成したら、後は「別表一 各事業年度の所得に係る申告書」を作成することで法人税の税額を計算できる。

まとめると、法人税申告書を作成する手順の大きな流れは、以下のとおりだ。

  1. 各別表により所定の項目について加算および減算の修正を行う
  2. 別表四により所得の金額を計算する
  3. 別表一により法人税の税額を計算する

別表四 所得の金額の計算に関する明細書

上で見たとおり、別表四は会計上の「利益」から税法上の「所得」を計算するための書類である。したがって、法人税申告書の作成において最も重要と言える。

別表一 各事業年度の所得に係る申告書

別表一は、法人の基本情報を記載するとともに、法人税の税額を計算するための書類である。法人税の計算は、別表四で計算した所得の金額を用いて行う。

法人税の税額は、所得に税率をかけたものだ。法人税の税率は法人の種類や資本金の額などで異なり、税額は定められた控除額を差し引いて計算する。これらの計算によって確定した法人税の税額が、別表一に記載される。

別表五(一) 利益積立金額及び資本金等の額の計算に関する明細書

別表五(一)は、法人税上の社内留保金額を計算するための書類である。

法人税上の社内留保金額は、利益から所得を計算する際の加算・減算と同様に、会計上の社内留保金額が増減する。修正によって増減した社内留保金額を、別表五(一)に記載する。

別表五(二) 租税公課の納付状況等に関する明細書

別表五(二)は、租税公課の発生および納付状況に関して記載するものである。租税公課の金額は、別表一の計算結果によって確定する。

租税公課のうち、損金算入となるのは以下のものだ。

・事業税
・事業所税
・自動車税、固定資産税
・消費税
・利子税・延滞税

また、以下のものは損金不算入となる。

・法人税および住民税の本税
・法人税および住民税についての、延滞税および各種の加算税
・罰金、過料、科料
・税額控除を受ける場合は所得税

別表八(一) 受取配当等の益金不算入に関する明細書

受取配当金を記載し、減算調整を行うための書類である。

別表十一(一の二) 一括評価金銭債権に係る貸倒引当金の損金算入に関する明細書

引当金を記載し、加算調整を行うための書類である。

別表十五 交際費等の損金算入に関する明細書

交際費を記載し、加算調整を行うための書類である。

別表十六(一)~(九) 減価償却費に関する明細書

減価償却費を記載し、加算調整を行うための書類である。

別表二 同族会社等の判定に関する明細書

会社が同族会社であるかどうかを判定するための書類である。同族会社に該当すると、納税額が変わる。同族会社とは、1人の株主およびその関係者で構成された株主グループが3グループ以下で、50%を超える株式を保有している会社のことだ。

法人税申告書の提出部数

法人税申告書の提出部数は、原則として以下のとおりだ。

・資本金1億円以上の会社 …法人税申告書3部+OCR用紙
・資本金9,000万円以上または法人税額5,500万円以上 …法人税申告書2部+OCR用紙
・上記以外の会社 …法人税申告書2部+OCR用紙

ただし、提出部数は税務署によって異なることがある。税務署から送られてくる申告書にも提出部数が書かれているが、これは前期分の中間申告に基づくものなので、当期分とは異なることもあり得る。提出部数は、あらかじめ所轄の税務署に確認しておくようにしよう。

なお、以下の書類については7年間の保管義務がある。

・申告書の控え
・総勘定元帳
・領収書綴り
・通帳や契約書など
・給与についての一人別徴収簿
など

法人税申告書の提出期限

法人税申告書の提出期限は、「決算日から2ヵ月以内」だ。したがって、3月決算の会社であれば、5月末日までに法人税申告書を提出しなければならない。

法人税の申告は、株主総会で承認を受けた決算書に基づいて行わなければならない。3月決算の会社の場合、株主総会は6月に行われることが多いだろう。その場合は「申告期限の延長の特例の申請」手続きを行うことで、申告期限を1ヵ月間延長することができる。

法人税申告書は自分で作成することができる?

「法人税の申告書を自分で作成したい」と思う人も多いだろう。申告書を自分で作成すれば、会計事務所や税理士に支払うコストを削減できる。また、自社の会計や財務の状況を詳細に把握することもできる。

申告書を自分で作成する場合、紙ベースで行うことはおすすめしない。法人税申告書の作成は初心者にとっては難解で、間違いが生じるリスクが高いからだ。

申告ソフトを利用すれば、初心者でも法人税の申告を自分で行うことができるだろう。申告ソフトでは、記入すべき順番で入力を求められる。それにしたがって入力していくだけで、申告ソフトが関係諸表に自動的に転記してくれる。そのため、初心者にありがちな転記ミスが起こることはない。

ただし初心者が行うと、かなり時間がかかってしまう。経営者として、税務申告にそれだけの労力と時間を使うべきかどうかは、考える必要があるだろう。

法人税の申告を自分で行い、コストを削減するとともに会計・財務を詳しく把握するのか、あるいは会計事務所や税理士に外注して本業に専念するのかは、慎重に判断すべきだろう。

文・THE OWNER編集部

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