がんリスクを低下させ脳機能も高める“スーパーサプリメント”とは?
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(本記事は、澤口 俊之氏の著書『仕事力が劇的に上がる「脳の習慣」』=ぱる出版、2022年6月27日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

緑茶は「スーパーサプリメント」

サプリメント的に、日常的かつ手軽に(仕事中でも)飲める飲料として屈指、というか、ダントツなのは緑茶です。アルコール系では赤ワインやビールがいいとか、非アルコール系ではコーヒーがいいといったデータもありますが、緑茶には到底敵いません。

そのよさを詳細に書くと一冊の本になるくらいで、実際にそういう洋書があるので、ここではごく簡単に述べることにすると、緑茶に豊富なカテキン類が身体にも脳にも非常に有益なんです(没食子酸エピガロカテキン、epigallocatechin gallate、略称EGCGが特に有効ですが、他のカテキン類もそれなりに有益です)。

人類進化的に見ても、短くとも4千万年以上の長きにわたってポリフェノール類(果実や野菜に豊富)を多量に摂取してきたので、ポリフェノール類の仲間であるカテキン類が身体や脳によいことは十分に推測できることですが、実際にそうであることが多数の研究で明らかになってきたわけです。

緑茶関係の研究では当初から疾病に関するものが多く、そうした研究で緑茶による効果・リスク低下が示された病気などは次の通りです:高血糖、糖尿病、肥満、内臓脂肪、脂肪肝疾患、アレルギー性疾患、自己免疫疾患、心血管疾患、心臓発作、動脈硬化、脳卒中、虫歯、歯垢、口腔内健康、緑内障、骨の健康、美肌効果…、等々(多い!)。

カテキン類(特にEGCG)は強力な抗酸化活性をもつので、緑茶の抗がん作用もかなり注目されてきていて、「リスクを下げる」とされたがんの種類も多いです:乳がん、卵巣がん、前立腺がん、消化器系がん、白血病、口腔がん、膵臓がん、肺がん…、等々(やっぱり多い)。

日本ではがんの中でも肺がんによる死亡率は依然として上位を占めていますが、1日1杯以上の緑茶で肺がんリスクは80%も低下するとか、喫煙していても緑茶をその程度飲めば肺がんリスクは非喫煙者と同じ位になる、というデータもあるくらいです。

がんを含めた疾病に比べて、脳に関する研究は未だ少ないですが、脳への緑茶の有益性は一貫して実証されていて、反証はほぼありません。

比較的初期の研究で有名なのは、緑茶による前頭前野の活性化です。知的作業をすれば前頭前野は当然ながら活動しますが、緑茶エキスを服用するとその活動レベルが上がり、服用した緑茶エキスの量が多いほど活動向上の程度は高くなりました。

その後の諸研究で、緑茶エキスが前頭前野の主要な認知機能を高めることや、前頭前野系の神経ネットワークを強めたり、脳の効率を高めたりする効果をもつことも分かりました。

緑茶は、前頭前野機能を向上させつつ、若返らせる効果をもつわけです(当然ながら、認知症予防効果ももちます)。まさに、有酸素運動(歩く・走る)並みの効果ですね。

ちなみに、緑茶と同じように日常的に(仕事の合間でも)飲めるコーヒーや紅茶、あるいはウーロン茶は、緑茶と同様の(秀逸とも言うべき)脳への効果はほとんどありません。

緑茶は身体的のみならず脳的にも「スーパーサプリメント」と言える所以です。

POINT

○魚をよく食べる人ほど前頭前野が大きく認知機能が高い
○緑茶は前頭前野機能を向上させ、若返らせる効果をもつ

仕事力が劇的に上がる「脳の習慣」
澤口 俊之(さわぐち としゆき)
1959年東京都葛飾区生まれ。1982年北海道大学理学部生物学科卒業。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。1988年米国エール大学医学部神経生物学科にリサーチフェローとして赴任。京都大学霊長類研究所助手、北海道大学文学部心理システム科学講座助教授を経て、1999年北海道大学大学院医学研究科教授。2006年人間性脳科学研究所・所長。2011年武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部教授兼任。2012年同大学院教授兼任。専門は神経科学、認知神経科学、社会心理学、進化生態学。理学博士。近年は乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層の脳の育成を目指す新学問分野「脳育成学」を創設・発展させている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「所さん! 大変ですよ」等、TV番組にも出演。
著書は『脳を鍛えれば仕事はうまくいく』『夢をかなえる脳』『幸せになる成功知能HQ』など多数ある。

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