寿命を5年延ばす? 高齢者の認知機能向上にもつながるスポーツとは
(画像=EpicStockMedia/stock.adobe.com)

(本記事は、澤口 俊之氏の著書『仕事力が劇的に上がる「脳の習慣」』=ぱる出版、2022年6月27日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

ゴルフも寿命を延ばす(主に高齢者)

この流れで、かなりポピュラーなゴルフに関して多少述べると、ゴルフは足と道具を使い、社会性もそれなりにあるので、認知機能や健康にいい、という研究が多少ですがあります。

ただ、こうした効果は高齢者にほぼ限られていて、例えば、介入実験として、12週間のゴルフ介入で高齢者の歩行パフォーマンスと認知機能が改善したという研究があります―歩行がうまくできない高齢者にゴルフをしてもらったところ、歩行が改善して、歩行という有酸素運動によって認知機能が向上したわけです。

ただ、研究的には、高齢で悪化する身体バランスをゴルフが改善するという効果がむしろ重視されています。

身体バランスには小脳が深く関与し、小脳は前頭前野と相互作用しながら知能や認知機能にも関与します。歩行の改善のみならず、身体バランスの改善によって認知機能が向上するという研究がゴルフ以外にもいくつかあるので、ゴルフによるこうした認知機能向上はそれなりに納得できます。

また、ゴルフは「道具を使った社会性スポーツ」なので、テニスやバトミントンと似て、寿命を5年ほど延ばすことが、スウェーデンの調査で報告されています。

健康や死亡率に関する研究は米国でも近年にあって(やはり高齢者が対象)、月に1回以上ゴルフをしている人たちは、脳卒中や心臓発作の罹患率は非ゴルファーと大差ありませんでしたが、死亡率は60%ほども低下しました。月1回以上のゴルフは寿命を延ばす、ということですね。

以上のようなデータを踏まえて、やはり公衆衛生上の観点からは「あまり強い運動ができなくて足腰が弱ってきた高齢者にはゴルフがいい」とされています。しかも、ウォーキングに比べて社会性があって面白いので、定期的な運動としてゴルフはかなり推奨されています(くどいですが、特に高齢者に関して、です)。

ちなみに、ゴルフをしている際に音楽を聴くとパフォーマンスが向上することが示されています。中でもかなりの集中が要求されるパッティングには、クラシックが良さげですが、ジャズ(研究的には、Louis Armstrong、Sade、またはNorah Jones)が最も効果的にパッティングを向上させます。

仕事力が劇的に上がる「脳の習慣」
澤口 俊之(さわぐち としゆき)
1959年東京都葛飾区生まれ。1982年北海道大学理学部生物学科卒業。京都大学大学院理学研究科博士課程修了。1988年米国エール大学医学部神経生物学科にリサーチフェローとして赴任。京都大学霊長類研究所助手、北海道大学文学部心理システム科学講座助教授を経て、1999年北海道大学大学院医学研究科教授。2006年人間性脳科学研究所・所長。2011年武蔵野学院大学国際コミュニケーション学部教授兼任。2012年同大学院教授兼任。専門は神経科学、認知神経科学、社会心理学、進化生態学。理学博士。近年は乳幼児から高齢者まで幅広い年齢層の脳の育成を目指す新学問分野「脳育成学」を創設・発展させている。
フジテレビ「ホンマでっか!?TV」、NHK「所さん! 大変ですよ」等、TV番組にも出演。
著書は『脳を鍛えれば仕事はうまくいく』『夢をかなえる脳』『幸せになる成功知能HQ』など多数ある。

※画像をクリックするとAmazonに飛びます