現代はスマートフォンの普及により、ビジネスマンでも腕時計を身に付けない人が多くなった。しかし、腕時計は単に時間を見るためだけのアイテムではない。ビジネスマンが身に付けられる数少ないアクセサリーであると同時に、富裕層の間では投資対象としても使われている。
ビジネスマンが身に付けるアイテムの中でもっとも金額に個人差があるのは腕時計だろう。つまり、腕時計こそ最強の高級ビジネスアイテムと言えるのだ。もちろん高いものを身に付ければ良いわけではないのだが、ビジネスシーンでは話題に出てくることも多いため、腕時計が投資対象であることや、各ブランドの価格帯くらいは知っておいた方が良いだろう。
今回は高級腕時計がどのように投資に使われているのか解説する。
高級品を堪能しながら投資
高級腕時計は、金やアンティークコイン、ワインや美術品などと並ぶ実物資産として、投資市場で存在感を増しつつある。その投資の醍醐味は、憧れの一流ブランドの商品を身に着けて楽しめることだろう。丁寧に着用して傷などによるダメージを防げば、売却する際の査定には大きく響かない。金のインゴットとは違い、投資家が自ら、高級腕時計を堪能しながら、利益を狙えるところが醍醐味だ。
一方、投資にはリスクが付き物であることを押さえておかなければならない。値上がりを期待して購入した高級腕時計だが期待が外れてしまい、売却した際には購入価格を下回る元本割れのリスクはもちろんある。その一方、映画俳優やセレブが身に着けたことで人気に火が付き、価格が上昇したり、腕時計のモデルチェンジが実施されたりすると旧モデルの希少価値が高まり、価格アップが期待できるようだ。
投資向け高級腕時計、ロレックスが不動の人気?
ロレックス、フランクミューラー、カルティエなどヨーロッパを中心に数多と高級腕時計ブランドがひしめくなか、投資向けとして断トツの人気を誇るのがロレックスだ。
ロレックスが支持を集めるにはいくつかの理由があるが、まずはその抜群の知名度が挙げられる。その名を聞けば、高級腕時計と誰もが認識でき、幅広い世代からの需要も旺盛で、質屋やリサイクルショップの大半でロレックスの取り扱いがあるように、中古品市場の流動性も確保されている。
高級腕時計ブランドのなかには、宝石や匠の技巧を施した1本1億円を超えるような商品もある。しかし、高級腕時計への投資となると、ある程度の需要(流動性)が存在する価格帯でなければ値上がりを望むのは難しいようだ。ロレックスの根強い愛用者が欲しがるモデルに狙いを定めると、その初期投資価格は百万円単位に落ち着くケースもある。
投資向けとして注目を集めるモデルの1つが「デイトナ116500LN」だ。ファンの間でも絶大な人気を誇るモデルは投資対象としても魅力的で、定価約130万円の腕時計が200万円を超える値段で取引されている例もある。2016年に販売されたこのモデルは、わずか1年余りの期間で定価の倍に迫る勢いを見せているようだ。
ポイントは適切な価格で仕入れができるか
デイトナモデルのリターンを見て高級腕時計投資に飛びつきたくなるかもしれないが、この商品に限れば人気で品薄のため、専門店で新品を入手するのは至難の業だ。常連になって販売員から入荷の情報を得るなどの策が求められるだろう。あるいは、中古品を仕入れて、価格の推移を見ながら売却するという手もある。
ロレックス以外で値上がりを見せるのがパテックフィリップの「ノーチラス5711/1A001」モデルだ。定価が約300万円と、上述のロレックスのモデルより、初期投資価格としてはハードルが上がるが、中古市場では500万〜600万円の値幅で取引されている例もある。
高級腕時計投資家の間では、バブルを危惧する声も上がるが、正規店では購入の予約まで数年待ちという人気状態が続き、価格を押し上げる。
腕時計が好きな人は投資対象を選んでいるだけでも楽しいだろう。株式市場の荒い値動きや、東京五輪後の不動産市場の不透明感を考慮すれば、一部の富裕層がすでに動き出しているように、ポートフォリオの1つとして高級腕時計への配分を検討する価値はありそうだ。
文・THE OWNER編集部