フォトグラファーライターの齋藤千歳です。北海道千歳市に住んでいます。連載【プロフォトグラファーが教える北海道の絶景「道の駅」】では、筆者がさまざまな媒体に掲載するために撮影してきた北海道の絶景を、仮眠スポットとしてお世話になっている付近の「道の駅」とともに紹介していきます。
今回は歌志内市の「神威(かもい)岳」の山頂から眺める朝日の雲海と郷土料理「なんこ」も食べられる、道の駅「うたしないチロルの湯」と、その隣接の温浴施設「うたしないチロルの湯」を中心に紹介。クルマでラクラク山頂まで行けるのに神々しいほどの風景に出会える「神威岳」は本気でおすすめです。
目次
札幌からも近い空知地方観光のスタート地点としてもおすすめ
クルマで山頂まで登れる「神威岳」の雲海と朝日は神々しいレベル
特別な撮影旅行でもない限り、筆者は家族といっしょに1泊2日のスケジュールでキャンピングカーの旅に出掛けることがほとんどです。それも休みの前日の夕方に妻や息子をキャンピングカーで迎えに行き、そのままクルマ旅に出発します。そして、目的地付近の道の駅で仮眠をとって、2歳の息子を含めた家族で絶景を眺め、撮影するわけです。
このスケジュールを調整する際に、筆者がかなり重要視しているのが「夜明け」をどこで撮影するかになります。写真を撮影する方なら分かると思うのですが「夜明け」と「日の入り」の時間帯は1日のなかでも、もっともフォトジェニックな時間帯。多くの絶景もこの時間帯がもっとも美しいということも多いでしょう。
そして、筆者が最近ハマっているスポットが日本一小さな市である歌志内市にある「神威(かもい)岳※」からの朝日です。標高467mの神威岳は、山頂までかなりしっかりとした舗装道路が整備されており、山頂までクルマで登ることができます。しかも、北海道でも多くの雲海スポットがロープウェイなどでのアクセスが有料なのに対して、神威岳は無料です。
※編集部注:日高山脈の神威(かむい)岳とは別の山です。
筆者は、この神威岳の麓にある道の駅「うたしないチロルの湯」(クルマで約15分)を、北海道空知地方方面に出掛ける際のベース地としています。まず夜明けに神威岳の雲海と朝日にチャレンジしてから、そのほかの空知地方の、例えば美唄市や栗山町のサクラ、滝川市のナノハナといったスポットに移動して昼の時間を楽しみ、その日の夕方に帰宅することが多いです。
筆者は千歳市から出発しているので、新千歳空港からレンタカーで旅行にと言う方や、札幌から出発される方にも参考になると思います。
当たり前の話ですが、夜明けの時間帯に神威岳に雲海が発生するかどうかは運次第です。基本的に“春や秋の、湿度が高く放射冷却が起きる夜明けから早朝にかけて発生することが多い”と、歌志内市役所のWEBページでは解説されています。
筆者の場合は、ゴールデンウィーク中にサクラの撮影で空知地方に出掛けた際と、その後滝川市でナノハナを撮影しようと出掛けた際の2回、道の駅「うたしないチロルの湯」で仮眠をして神威岳の朝日と雲海にチャレンジしました。1度目は天気が悪く敗退、2度目で上で掲載した写真を撮影することができました。
ちなみにこの次は、7月中旬から8月下旬に北海道最大のヒマワリ畑の撮影で北竜町に出掛ける際に、(夏なので確率は悪そうですが)神威岳の朝日と雲海を狙おうと思っています。夏休みに北海道旅行をと考えている方もスケジュールに組み込んでみてはどうでしょうか。
【撮影のポイント】超広角レンズとGNDフィルターを持っていくのがおすすめ
神威岳からの雲海と朝日の撮影ですが、広い範囲が写る方が写真から広大さを感じさせることができるので、超広角レンズを用意しておくことをおすすめします。
実際に筆者は「SIGMA 20mm F2 DG DN | Contemporary」を使用しました。高性能なことで知られるSIGMAのなかでもIシリーズと呼ばれるラインの製品で、コンパクトで質感の高いレンズシリーズとして多くのカメラファンに愛されています。価格、質感、性能のバランスが素晴らしく、普段からよく使うレンズの1つになっています。
また、雲海と朝日の撮影でおすすめしたいのがGND(グラデーションエヌディ)フィルターです。明るさのグラデーションした角型フィルターで、取り付け位置などで画面のなかの明るさをコントロールすることができます。ちょっと専門的なアイテムなのですが、筆者はこのGNDフィルターに、さらにRGND(リーバースグラデーションエヌディ)フィルターというフィルターを重ねて撮影することで掲載した写真の明るさをコントロールしているのです。
ちなみに下に掲載した写真が、フィルターなしで撮影した写真になります。
フィルターのありなしで、まったく違う写真といってもよいでしょう。非常に強い効果が得られるので、とてもおすすめです。筆者は、いくつかのGNDフィルターを試して、現在は「Cokin NX エキスパートキット」を愛用しています。ちょっとお高いですが、高価なレンズを買うよりも明らかにわかる劇的な効果が得られ、使い勝手もいいのでおすすめです。
ベース基地となる道の駅「うたしないチロルの湯」はかなりおすすめ
食事も温泉も「うたしないチロルの湯」だけで済む充実の施設
クルマ旅では、頻繁に利用する道の駅ですが、みなさんは何を重視していますか? 24時間利用できる無料の駐車場とトイレは道の駅の登録要件なので、これにプラスαされる部分になると思います。筆者の場合は下記の3点が重要です。
- 入浴施設が併設・隣接されている
- ある程度遅い時間帯まで食事ができる(コンビニ可)
- ポケットWi-Fiが使える
休みの前日に妻と息子をピックアップして、そのまま向かうので到着時だいたい21時前後でも食事ができ、その前後にお風呂に入れ、翌日のスケジュールなどをネットで確認したり、調べたりできる環境の整った道の駅がありがたいわけです。
全部がそろっている道の駅はなかなかありません。北海道には記事公開時点で127の道の駅があるそうですが、3つすべてを満たす道の駅は20カ所もないかと思います。しかし、道の駅「うたしないチロルの湯」は、Wi-Fi以外の2つの条件をほぼ満たす貴重な道の駅の1つです。
道の駅「うたしないチロルの湯」(歌志内市)
・施設情報ページ:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/detail/douo/post_56/
・道央エリアの道の駅一覧:https://www.mobilitystory.com/michinoeki/douo/
【オススメの周辺ご飯】歌志内の郷土料理「なんこ」も隣接するレストラン「チロル」で味わえる
道の駅「うたしないチロルの湯」の最大の特徴は、温泉施設「うたしない 温泉 チロルの湯」と隣接していること。この「うたしない 温泉 チロルの湯」にはレストランがあり、ラストオーダーは19:30までですが、20:00まで利用が可能です。
2,733人と全国でもっとも人口の少ない市である歌志内ですが、新千歳空港を17時前後に出れば、レストラン「チロル」での食事ができます。メニューは定食、カレー、ラーメン、丼物などと充実してますが、注目したいのは「なんこ鍋定食」(950円)と「なんこラーメン」(900円)です。
「なんこ」とは歌志内に伝わる郷土料理で、馬の腸を味噌で柔らかくなるまで煮込んだもの。北海道でもほかの地方では見かけない歌志内ならではの料理なので、ここで味わっておくことをおすすめします。
筆者は実際に「なんこ鍋定食」を食べたのですが、柔らかく煮込まれクセのない馬の腸とたっぷりの野菜がシャキシャキ食感で提供され、とてもおいしくいただきました。野菜がおいしくかなりヘルシーな印象でおすすめです。
【オススメのご近所お風呂】隣接する「うたしない 温泉 チロルの湯」はなんと大人500円
道の駅「うたしないチロルの湯」の駐車場にクルマを止めて歩いても、1分程度でしょうか。坂の上にある「うたしない 温泉 チロルの湯」。筆者が訪ねたのがゴールデンウィーク中ということもあったのでしょう。地元の方と思われる家族連れで大盛況でした。
入浴料がなんと大人500円とかなりリーズナブル。しかも、WEBでは子ども(小学生以下)300円となっていますが、未就学児である2歳の息子は無料でした。そのせいか、浴場にはお父さんに連れられた小さな子どもがたくさんいて、とてもほのぼのとした時間を楽しめました。ちなみに営業時間は朝10:00〜夜22:00までと長く、隣のレストランでご飯を食べた後でもゆっくりと温泉を楽しめます。
また、朝風呂のサービスも行っており、朝6:00〜8:00での営業も行っています。筆者は夜明けの撮影の後、冷えた身体をゆっくりと温めてから、次の撮影地に出発しました。こちらも500円なので、ついつい2回も入ってしまったわけです。朝から温泉に入るとなにかとても贅沢をしている気分になれます。
【オススメの周辺観光】道の駅「うたしないチロルの湯」経由でサクラ・ナノハナ・ヒマワリなど季節の花を楽しむ
筆者がはじめて道の駅「うたしないチロルの湯」を訪れたのは、翌日に空知管内随一と呼ばれ、日本最北のソメイヨシノの群生地である美唄市の「東明公園」を訪れるためでした。
2,000本のサクラが咲く「東明公園」は道の駅「うたしないチロルの湯」から約40分です。また、エゾヤマザクラの名所として知られる「栗山公園」にはクルマで約1時間20分と、空知地方のサクラを楽しむための拠点としても便利です。
そして、サクラが終わった5月中旬から6月上旬には、日本有数の作付面積を誇る滝川市のナノハナのシーズンがはじまります。この中心的な役割を果たす道の駅「たきかわ」へも道の駅「うたしないチロルの湯」から30〜40分。さらに7月中旬から8月下旬のシーズンは、大規模なヒマワリ畑で国内外から多くの観光客が訪れる北竜町の「北竜町ひまわりの里」までクルマで約50分と、季節ごとの花を道の駅「うたしないチロルの湯」を拠点に楽しめます。
ゴールデンウィークも意外と空いていた道の駅「うたしないチロルの湯」は穴場
筆者はキャンピングカーで旅行に出掛けた際に日の出を撮影するのが大好きです。しかし、夏至のあたりの北海道は札幌でも日の出が3:55と超早朝になります。
日の出30分前から撮影するとして、道の駅から撮影場所までの移動時間などを考える必要があります。すると日の出の絶景が手軽に撮影できて、温泉もあって、郷土料理が食べられるレストランもある道の駅「うたしないチロルの湯」は、Wi-Fi環境が貧弱であることを除くと最高レベルの道の駅ということになります。
神威(かもい)岳の山頂までは、クルマでわずか15分と至近なので、かなり楽に撮影できるのに、雲海などのタイミングが合えば、神々しいまでの絶景に出会えるわけです。また、ゴールデンウィークに訪れてみたのですが、幹線道路である国道12号線沿いから外れるためか、思った以上に道の駅の駐車場は空いており、気持ちよく仮眠をとることができました。
この感じであれば、夏休みなども比較的空いていることが予想され、絶景、温泉、郷土料理が楽しめる穴場的な道の駅といえるでしょう。おすすめです。
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