(本記事は、大野 裕之氏の著書『ビジネスと人生に効く 教養としてのチャップリン』=大和書房、2022年11月4日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)
世界初のキャラクター・ビジネス
喜劇王、チャールズ・チャップリンのマネジメントを一時期担当していたのは、異父兄シドニーでした。彼は映画作りに没頭する天才の弟にかわって、実務全般を担当しました。
彼も弟チャップリンと同じく舞台俳優の出身で、1920年代まで映画俳優としても活躍し、「ガッスル」というキャラクターのシリーズで人気を博していました。日本でも1930年代に『スカート』などの作品が、当時の「エロ・グロ」ブームに乗ってヒットしました。
同時に、彼は弟のマネージャーとしても力を発揮し、チャップリンのデビュー3年目の1916年に、ミューチュアル社とのあいだで週給1万ドルという当時天文学的な契約を結んだやり手でした。新しいもの好きで、アメリカで最初の定期航空会社「シド・エアライン」を開設した実業家でもあります。ほとんど知られていない事実ですが、チャップリンの兄はアメリカ航空産業の礎を築いたのでした。
チャップリン家の資料庫には、兄から弟へのたくさんの電報類が保管されています。「ねえ、チャーリー、来週はお母さんの誕生日だよ。二人の名前でお祝いの電報を送ろうよ」。喜劇王は仕事となると、大切な母親の誕生日も忘れてしまう。そんなことまでケアする良き兄でした。
優秀なマネージャーであるシドニーは、弟が生み出したチャーリーというキャラクターを使って、世界で初めてのキャラクター・ビジネスを始めます。こうして、「チャップリン人形」「チャップリン歯磨き」「チャップリン・マッチ」など、おびただしいキャラクター商品が誕生しました。面白いのでは、「チャップリン印のイースター・エッグ」なるものもあります。チャップリン家の資料庫に現在も残るその型紙には「シドニー・チャップリン氏の許可のもとに」との一言が添えられています。
チャーリーのキャラクター・ビジネスは、現在もチャップリン家のマーチャンダイズ会社であるバブルス社によって行なわれており、実は私はその日本での代理店ですので、グッズを出したりCMに起用したい場合はお気軽にご相談ください。(広告会社の担当者によると、チャップリンは大人から子供まで誰もが知っていますし、故人なので今からスキャンダルを起こさないからCMタレントとして最高ですとのこと。2番目の理由が昨今の日本では生々しすぎてどうかと)。チャーリーのキャラクターに未だ出演料が出るようにしたシドニーの先見の明は大したものです。
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