世界主要4地域における、2019年の自動車内装用加飾フィルムのメーカー出荷量は1,184.4万㎡の見込
~CASE対応、内装電装化、環境対応へのニーズが拡大、加飾フィルムメーカーには機能性と車内快適性の両立を実現するソリューション提案が課題に~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、北米、欧州、中国、日本の世界主要4地域における自動車内外装用加飾フィルムの市場を調査し、セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。ここでは、自動車内装用加飾フィルムの市場規模推移・予測について、公表する。
1.市場概況
自動車の内装及び外装部材を装飾する自動車用加飾フィルムは、これまで塗装代替やメッキ代替をキーワードとした開発が進展してきた。2015年には大手自動車メーカーによる生産工場からのCO2排出ゼロ化など環境対応方針が打ち出され、2016年に入り加飾フィルムによる塗装代替実現の可能性が高まった。しかし、その後、自動車メーカーの開発の方向性が、加飾工法の変更による環境対応ではなく、CASE(Connected、Autonomous、Shared & Service、Electric)やSDGs(Sustainable Development Goals)に代表される社会・市場の変革への対応へと切り替わったことで、相対的に加飾による塗装(ウェットプロセス)からフィルム(ドライプロセス)へのシフト実現は、自動車メーカーの開発優先順位を落としている。
北米、欧州、中国、日本の世界主要4地域における自動車内装用加飾フィルムの市場規模(メーカー出荷数量ベース)は、自動車生産台数の落ち込みの影響もあり、2018年は前年比98.7%の1231.7万㎡、2019年見込みは同96.2%の1184.4万㎡と微減での推移となった。
また、自動車外装はボディとパーツに大別され、いずれも塗装やメッキの代替として加飾フィルムの採用が期待されている。北米、欧州、中国、日本の世界主要4地域における自動車外装用加飾フィルムの市場規模(メーカー出荷数量ベース)は、2018年が483.8万㎡、2019年は508.4万㎡の見込みである。衝突回避システムやスマートキーなどの普及により、エンブレムやドアハンドルに電波透過性が求められるようになったことで、メッキから金属調加飾フィルムへの代替が進展する見通しで、2019年は前年比5.1%増の見込みである。
2.注目トピック
世界の主要4地域における自動車内装部品の加飾率の見通し
2019年のワールドワイドの自動車生産台数は9,500万台~9,600万台を見込むが、新興国で生産される自動車の内装部品は樹脂むき出しが多く、内装に加飾が施されている場合でも塗装やメッキが中心となる。加飾フィルムや革(本革、合皮)を使用した自動車内装への加飾の採用は、主に北米、欧州、中国及び日本の4地域が中心である。
世界の主要4地域における自動車生産台数に占める塗装・メッキを除いた内装部品加飾率を、2018年が31.8%、2019年は32.5%と推計する。北米、欧州は自動車生産が成熟段階にあり、加飾率はほぼ横ばいで推移しており、日本は売れ筋車種が軽乗用車へとシフトしてフィルムやリアルマテリアル(本革、木材、金属)を使用した加飾の採用比率が減少傾向にあるのに対し、中国では自動車生産台数の成長に加え、生産車種がレベルアップしていることで加飾率は上昇が続いている。
世界の主要4地域における自動車生産台数に占める内装部品の加飾率は、中国における伸びに牽引される形で上昇が続き、2022年には35.7%まで上昇すると予測する。
3.将来展望
加飾は自動車のデザインや外観に関する技術であり、一見すると現在の自動車メーカーの開発優先順位として上位に来るCASEとの接点は少ないようにも見える。加飾フィルムメーカーが自動車メーカーに対して、意匠性向上や塗装代替という切り口での提案のみを進めるのであれば、自動車メーカーにとっての加飾の優先順位低下は避けられないだろう。
しかし、加飾フィルムや加飾工法の特長や性能は、Connected、Autonomous、Shared & Service、ElectricというCASEのコンセプトに合致するものが多い。具体的には、金属調加飾フィルムの電波透過性はConnectedとの親和性が高く、車内の快適性を向上する高触感フィルムやオーバーレイ成形工法はAutonomous、シェアリングによるバンパーなどの傷付きを防止する保護フィルムはShared & Service、車体軽量化を実現するPP加飾フィルムはElectricというコンセプトの実現につながるものと考える。