経営を続ける上で金融機関との付き合いは非常に重要だ。金融機関の定義や、銀行の種類ごとの違いを知ることで、取引する金融機関を選びやすくなるだろう。この記事では、中小企業の経営者に向けて金融機関の意味や役割を説明し、取引する金融機関の選び方を統計データも紹介しながら解説していく。

目次

  1. 金融機関の定義とは?
  2. 金融機関の種類は3つ
    1. 中央銀行(日本銀行)
    2. 公的金融機関
    3. 民間の金融機関
  3. 銀行の種類
  4. 中小企業は取引する金融機関をどう選べばいいか?
    1. メインバンクは地方銀行が4割
    2. 都市銀行や地方銀行からネット銀行に変える動きも
    3. 中小企業は2~3行を取引先に選んでいる
  5. 金融機関や銀行のよくある疑問
    1. 銀行と信用金庫・信用組合の違いは?
    2. 銀行と信託銀行の違いは?
    3. 銀行と証券会社の違いは?
    4. ゆうちょ銀行は民間金融機関なのか?
  6. 金融機関の特徴を把握して融資に活用しよう
中小企業必見! 最近の取引銀行選びのトレンドは?
(画像=Elenathewise/stock.adobe.com)

金融機関の定義とは?

金融機関とは、お金の余っている人からお金を集め、お金を必要とする人に貸すという仲介の役割を担う機関のことだ。

例えば銀行は、預金として個人や企業が預けた莫大な資金を企業等に貸し出す。融資したお金の利息の一部は、預金利息として個人や企業に還元され、残りが銀行の利益となる。

金融機関の種類は3つ

金融機関の種類は、主に3つに大別される。それぞれの役割や、具体的にどのような銀行、企業が含まれるかを見ていこう。

中央銀行(日本銀行)

中央銀行(日本銀行)は、紙幣を発行できる国内で唯一の発券銀行だ。

日本銀行は、古い紙幣を回収して新しい紙幣を発行するだけでなく、物価を安定させるために金融政策を実行する役割を担っている。

物価下落(デフレ)が起きると、日本銀行は一般の金融機関から国債を買い取り、資金を供給する。資金が増えると、個人や企業がお金を借りやすくなって景気が回復する。逆に物価上昇(インフレ)が起きると、日本銀行は一般の金融機関に国債を売り、過剰な資金を回収して金融引き締めを行う。

公的金融機関

公的金融機関とは、公共的な目的を持ち、金融政策に沿ってサービスを提供する金融機関のことだ。政府関係金融機関、政府系金融機関と呼ばれることもある。代表的な公的金融機関は、日本政策金融公庫、商工組合中央金庫(商工中金)、日本政策投資銀行、国際協力銀行だ。

公的金融機関には、条件を満たすと民間の金融機関より有利な条件で借入できるなどのメリットがある。例えば日本政策金融公庫は、小規模事業者や中小企業向けの融資を行っている。

民間の金融機関

日本銀行や公的金融機関以外の金融機関は、すべて民間で運営されている。民間の金融機関は、預金を取り扱っているかどうかで大別される。

銀行

ノンバンクとは、お金を貸す業務に特化した銀行以外の金融機関のことで、クレジットカード会社、消費者金融、住宅金融専門会社、リース会社、ベンチャーキャピタルなどが含まれる。

銀行の種類

銀行は金融機関の中で最も身近な存在でありながら、種類が多く、選び方や使い方に悩んだ経験を持つ経営者も少なくないだろう。銀行の種類と特徴を表にまとめたので、参考にしてほしい。

銀行

中小企業は取引する金融機関をどう選べばいいか?

事業を円滑に行うため、金融機関との付き合いは欠かせない。続いては、中小企業の経営者が取引する金融機関をどのように選ぶべきか、統計データも交えながら解説していく。

メインバンクは地方銀行が4割

帝国データバンクの全国企業「メインバンク」動向調査(2022年)によると、メインバンクの業態別シェアのトップ5は次の通りだ。

銀行

全国企業を対象とした調査なので大企業も含まれるが、中小企業は日本の全企業数の99.7%を占めるため参考になるデータだろう。

メインバンクのシェアは地方銀行が4割で、圧倒的に多いという結果になった。地方銀行は地域密着でサービスを提供しており、地元企業にとっては心強い存在だ。一般的に、信用金庫や信用組合と比べて融資額が大きく、金利が低いのも魅力だ。また、都市銀行と比べて融資の審査にも通りやすく、担当者との距離も近い。

信用金庫と信用組合は、地域密着でサービスを提供する点は地方銀行と同じだが、地域社会の利益を優先する非営利法人という特徴を持つ。地方銀行よりさらに融資の審査に通りやすいのがメリットだが、金利が高くなることには注意したい。

信用金庫と信用組合の割合には隔たりがあるが、信用金庫が254金庫、信用組合が145組合と、数自体に隔たりがあることも関係しているだろう。

中小企業がメインバンクを選ぶなら、地方銀行や信用金庫、信用組合がおすすめだ。融資をはじめ経営に関する相談もしやすく、地域密着だからこそ親身に対応してくれるというメリットがある。

ブランドイメージの向上を目的に都市銀行をメインバンクに選ぶのもいいが、都市銀行は大企業や海外向けの事業に注力していることもあり、対応に不満を抱いてしまう可能性があることに注意したい。

都市銀行や地方銀行からネット銀行に変える動きも

同調査によると、実店舗を持たずにインターネット上で取引が完結するネット銀行をメインバンクにする企業が増え続けているという。ネット銀行のシェアは0.17%だが、社数では約2,500社に達している。ネット銀行に変更する前にメインバンクとして利用していた業態は、都市銀行36.45%、地方銀行26.17%、信用金庫15.89%だ。

コロナ禍で非対面のニーズが高まり、通信販売の利用者が急増した。ECショップの開設など、オンラインでの販売に力を入れたい企業は、メインバンクをネット銀行に切り替えるのも1つの選択肢かもしれない。

中小企業は2~3行を取引先に選んでいる

金融庁が2022年に地域金融機関等をメインバンクとする中堅・中小企業約3万社にアンケート調査をしたところ、取引金融機関数の分布は次の通りだった。2~3行と取引する中小企業が多いことが分かる。

銀行

同調査によると、メインバンクの業態の分布は次のようになった。地方銀行が5割を超え、地方銀行と第二地方銀行を合わせると75%を超える。

銀行

一方、非メインバンクの業態の分布は次のようになった。都市銀行の割合は、メインバンクでは3.0%だが、非メインバンクは8.1%にのぼっている。商品、サービスを提供するエリアによっては、全国に支店を持つ都市銀行の口座を開いておくと便利かもしれない。

銀行

金融機関や銀行のよくある疑問

続いては、金融機関の定義や銀行の種類、役割の違いに関して、よくある疑問と回答をまとめた。中小企業の経営者として、金融機関について最低限の知識は押さえておくようにしたい。

銀行と信用金庫・信用組合の違いは?

銀行は株主の利益を追求する営利法人だが、信用金庫や信用組合は、会員や組合員の出資で成り立つ非営利法人だ。そのため、会員や組合員つまりは地域社会の利益を優先する組織と言える。

銀行と信託銀行の違いは?

銀行の業務には、預金、融資、為替の3つがある。預金と融資は、普通預金や定期預金などさまざまな預金で資金を集め、個人や企業に融資として資金を貸し出す業務を指す。為替とは、振込や手形などの決済業務のことだ。

信託銀行は、銀行業務のほかに信託業務と併営業務を行う銀行のことを指す。

信託業務とは、信託によって財産を管理、運用することで、お金以外に不動産や有価証券なども取り扱う。併営業務には、遺言の保管や執行といった相続関連業務、株主の名簿管理などの証券代行業務、不動産の売買仲介業務などがある。

銀行と証券会社の違いは?

銀行は預金で資金を集め、個人や企業に貸し付けを行う。一方、証券会社は、株式や債券で資金調達したい企業等の組織と投資で利益を得たい投資家を、取引によって結び付ける仲介業務を担う。

銀行の利用者は預けたお金がどこに貸し出されたかを知らず、不利益を被ることもない。一方、証券会社を利用する投資家は、投資先を自分で選び、値動き等によるリスクも自ら負うことになる。このような違いから、銀行は間接金融、証券会社は直接金融と呼ばれる。

また、銀行では投資信託や外貨預金など一部の金融商品しか取り扱えないが、証券会社は株式や債権など幅広い金融商品を取り扱える。

ゆうちょ銀行は民間金融機関なのか?

郵便局は公的金融機関に含まれていたが、2007年に民営化されて民間の金融機関になり、2023年現在もゆうちょ銀行として営業を継続している。銀行の中の分類としては、都市銀行(メガバンク)や地方銀行ではなく、その他の銀行となる。

金融機関の特徴を把握して融資に活用しよう

金融機関と賢く付き合うことで、経営課題について相談できるほか、資金繰りが悪化した際に融資を受けることもできる。自社の事業規模や商品、サービスの提供エリア等を考慮して、取引する金融機関を慎重に選ぶようにしたい。

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文・木崎涼

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