ビジネスモデル
(画像=makaron* / PIXTA)

事業を成功させるカギは、ビジネスモデルが握っていると言っても過言ではない。ビジネスモデルの質を高めることが、経営者としての成功につながっていく。これまでざっくりとしか考えてこなかった経営者は、今一度ビジネスモデルの考え方を見直してみよう。

目次

  1. ビジネスモデルは必須?中小企業にとっての必要性
  2. ビジネスモデルを考える前の事前準備
    1. ビジネスモデルの10の基本パターン
    2. ブラッシュアップに役立つ基本的なフレームワーク
  3. ビジネスモデルを構築する4つのステップ
    1. 【STEP1】進出する業界のビジネスモデルを分析する
    2. 【STEP2】新しいビジネスモデルを大量に考える
    3. 【STEP3】付加価値が高いビジネスモデルを残し、ブラッシュアップする
    4. 【STEP4】「実現性」の観点から、取り組むビジネスモデルを選ぶ
  4. ビジネスモデルの成功例
    1. 1.「利便性」を武器にしたネット上のショッピングモール/楽天株式会社
    2. 2.従来の営業スタイルを全廃し、ネット販売をスタート/松井証券株式会社
    3. 3.業界にも配慮した、新しい販売スタイルの導入/アスクル株式会社
  5. 多くの成功例に目を通し、「魅力・実現性」が両立したビジネスモデルを

ビジネスモデルは必須?中小企業にとっての必要性

中には、「ビジネスモデルなんて必要ない」と考える経営者もいるかもしれない。しかし、中小企業にとってビジネスモデルは、想定外のトラブルやリスクの回避に役立つ重要なものだ。 たとえば、新しく会社・事業を立ち上げる際には、忙しさの影響で想定外のトラブルが多く発生する。そのようなときに確固たるビジネスモデルがあれば容易に軌道修正ができるため、自社が進むべき方向を見失わずに済む。

また、ビジネスの発展性や今後の展開をわかりやすく把握できる点も、ビジネスモデルを構築するメリットだろう。プラン通りにビジネスが発展すると、取引先や顧客の層を広げられるので、連鎖倒産のような予期せぬトラブルも防げる。

特にひとつの取引先・顧客に依存している経営者は、倒産リスクを抑えるためにもビジネスモデルの構築に取り組んでおきたい。

ビジネスモデルを考える前の事前準備

ビジネスモデルを考える際には、土台となる「基礎知識」が必要になる。トラブルやリスクにも対応するためには、基礎知識を身につけたうえで理論的にビジネスモデルを組み立てなくてはならない。

ビジネスモデルの構築に向けて動き出す前に、まずは以下で紹介する基礎知識を押さえていこう。

ビジネスモデルの10の基本パターン

世の中に存在するビジネスモデルは特殊なものを除き、以下の10の基本パターンにわけられる。

基本パターンの種類 概要 具体例
【1】物販方式 原材料・部品を加工したり組み立てたりして、その製造物を販売する方法。 ・建築業
・飲食店など
【2】小売方式 メーカーから製品を仕入れて、その製品を顧客に対して販売する方法。 ・スーパー
・広告代理店など
【3】卸売方式 メーカーから製品を仕入れて、その製品を小売店に対して販売する方法。 ・食品卸売業など
【4】直販方式 メーカーが顧客に対して、直接製品を販売する方法。 ・パソコン
・保険商品など
【5】広告方式 所有する媒体や空間(スペース)などに、他社製品の広告を掲載する方法。 ・ネットメディア
・マスメディアなど
【6】二次利用方式 同じ商品・サービスを複数回利用し、繰り返し利益を発生させる方法。 ・映画や書籍の制作
・テレビの放映権など
【7】消耗品方式 商品自体は低価格で提供し、部品やメンテナンス品などの消耗品で利益を狙う方法。 ・印刷機
・浄水ポットなど
【8】サブスクリプション方式 顧客に対して、商品やサービスの使用権利を販売する方法。 ・雑誌の年間購読
・ストレージサービスなど
【9】マッチング方式 ある顧客のニーズに対して、別の顧客が販売する商品・サービスを提案する方法。 ・人材紹介サービス
・旅行代理店など
【10】フリーミアム方式 機能を限定した無料版の商品を提供し、ユーザーがアップグレードを希望した際に有料商品を販売する方法。 ・ソフトウェア
・ニュースサイトなど

上記の基本パターンをもとに考えると、理論的なビジネスモデルを構築しやすくなる。上記のいずれにも該当しないビジネスモデルは斬新だが、効率的に利益を生み出せない可能性があるので注意しておこう。

ブラッシュアップに役立つ基本的なフレームワーク

ビジネスモデルは基本的に、ふとしたときに思いつくアイデアから始まる。しかし、ざっくりとしたアイデアでは理論的な仕組みを作ることは難しいため、アイデアは最終的にブラッシュアップしなければならない。

そこで役立つものが、ビジネスモデルの枠組みとなる「フレームワーク」だ。ビジネスモデルを磨き上げる際には、特に以下の「5W1H」が多く活用されている。

〇5W1Hの考え方
・WHERE…どの市場で販売するのか?
・WHO…どんな人物をターゲット層にするのか?
・WHAT…どんな商品やサービスを販売するのか?
・WHEN…どんなタイミングで販売するのか?
・WHY…なぜこの事業に取り組む必要があるのか?
・HOW…どのような方法で生産体制や販売体制を整えるのか?

5W1Hでは、上記の6つの観点からビジネスの枠組みを考えることで、目指すべきビジネスモデルの形がより明確になってくる。ほかにもビジネスの世界には、以下のようにさまざまなフレームワークが存在するので、ブラッシュアップをする際にはぜひ活用していこう。

フレームワークの例 概要
・3C分析 「市場・競合・自社」の3つの観点から、進出する業界の特性を判断するための分析方法。
・SCAMPER法 「ほかのものに置き換えられないか?」「似ているものはないか?」など、7つの観点からアイデアをブラッシュアップするための手法。
・PEST分析 「政治・経済・社会・技術」の4つの観点から、マクロ環境(景気や人口推移など)が事業に及ぼす影響を予測する分析手法。

ビジネスモデルを構築する4つのステップ

ビジネスモデルを構築する流れは人によって異なるが、どのような流れで進めるとしても考えるべきポイントに大きな違いはない。進出する業界や市場の調査・分析をしっかりと行い、その業界内で勝負できるビジネスモデルを丁寧に組み立てていく。

では、ビジネスモデルを考え始めるところから、最終的にひとつの候補に絞るところまで、その基本的な流れを以下で確認していこう。

【STEP1】進出する業界のビジネスモデルを分析する

ビジネスモデルの構築には斬新なアイデアも必要だが、まずは進出する業界について熟知しなければならない。その第一歩として、以下の過程で業界内のビジネスモデルを分析してみよう。

〇業界内のビジネスモデルを分析する手順
【1】進出する業界のビジネスモデルを確認する
【2】そのビジネスモデルが、どの「基本パターン」に該当するのかを分析する
【3】「なぜそのビジネスモデルが使われているのか?」という理由を探す

競合他社が選んでいるビジネスモデルには、必ず何かしらの理由や背景がある。その部分を細かく分析していけば、常識や慣習などの業界全体の特性がある程度見えてくるはずだ。

【STEP2】新しいビジネスモデルを大量に考える

業界の特性を把握したら、次は前述で解説した基本パターンやフレームワークを活用しながら、その業界内でまだ現れていない「新しいビジネスモデル」を考えていく。ビジネスの成功率を少しでも高めたいのであれば、より多くのビジネスモデルを考えることがポイントだ。

しかし、短期間で大量のビジネスモデルを考えることは、決して簡単な話ではない。前述の基本パターンを組み合わせたり、成功事例からヒントを得たりして、何とかアイデアを絞り出す必要がある。

「なかなかアイデアが浮かばない…」と悩んでしまう場合は、より多くの成功事例に目を通すことから始めてみよう。

【STEP3】付加価値が高いビジネスモデルを残し、ブラッシュアップする

多くのビジネスモデルを思いついたら、次は「顧客に高い付加価値を提供できるビジネス」という観点から、候補となるビジネスモデルを絞っていく。ビジネスは「顧客の課題や悩みを解決すること」が基本となるので、斬新であっても付加価値が低いビジネスモデルは候補から外さなくてはならない。

また、この時点でのビジネスモデルは単なるアイデアに過ぎないため、各候補をブラッシュアップすることが必要だ。前述で紹介したフレームワークなどを活用しながら、ひとつひとつのビジネスモデルを慎重に磨き上げていこう。

【STEP4】「実現性」の観点から、取り組むビジネスモデルを選ぶ

経営資源が限られている中小企業の場合、取り組むビジネスモデルは基本的に1つに絞らなくてはならない。そこで最終的な判断基準となるものが、各ビジネスモデルの「実現性」だ。

魅力的なビジネスモデルであっても、技術や資金の問題で実現が難しいものは数多く存在する。進出する業界によっては、法律やしがらみなどの慣習が障害になることもあるだろう。

これらの観点から各ビジネスモデルの実現性を判断し、最終的には最も実現できそうなビジネスモデルを残していく。なお、実現性を【STEP2】の段階で考えるケースも見られるが、実現性を意識し過ぎるとアイデアの幅が狭まってしまうため、実現性は最後に細かく判断する方法がおすすめだ。

ビジネスモデルの成功例

前述の【STEP2】でも解説した通り、ビジネスモデルを考える際には成功例に目を通しておくことも重要だ。そこで以下では、新たなビジネスモデルの構築によって古い事業体質から脱却し、成功を収めた事例を3つまとめた。

頭の中にあるビジネスプランとも比較しながら、ビジネスモデルの成功例を確認していこう。

1.「利便性」を武器にしたネット上のショッピングモール/楽天株式会社

「楽天市場」を運営する楽天は、インターネット上にショッピングモールを設置するビジネスモデルで一世を風靡した。従来の小売業は、中小規模の小売店やショッピングモールに出店する形が一般的だったが、ネット上に出店できる楽天市場の登場によって状況は大きく変わっていく。

世の中の小売店や消費者の心をつかんだのは、楽天市場の「利便性の高さ」だ。現代では珍しくないかもしれないが、ネット上で気軽に出店できるサービスや、自宅にいながらあらゆる商品をチェックできるサービスは、当時は革新的とも言えるものだった。

そして楽天はこのサービスの出店料・手数料を利益にしながら、株式公開を果たした後も順調に成長を遂げている。インターネットの黎明期にいち早く「ネットショップ」に目を向けたからこそ、成功につながったビジネスモデルだろう。

2.従来の営業スタイルを全廃し、ネット販売をスタート/松井証券株式会社

松井証券も楽天と同じく、「ネットの利便性」にいち早く着目した企業だ。同社は大口投資家向けの対面営業を全廃し、その代わりに一般向けのネット販売をスタートした。

このビジネスモデルのポイントは、従来の営業スタイルを捨ててネット販売に特化した点だ。ネット販売に特化したことで「コスト削減・手数料の大幅な引き下げ」を実現でき、結果的にはそれがユーザーの大量獲得にまでつながっている。

新たな技術の黎明期には、これまでの常識をひっくり返すようなビジネスモデルが眠っている可能性があるので、さまざまな分野に対して知見を広めることも重要なポイントになるだろう。

3.業界にも配慮した、新しい販売スタイルの導入/アスクル株式会社

文房具やオフィス用品を取り扱うアスクルは、カタログ販売を導入することで従来の事業体質を脱却した。それまでは、営業スタッフが直接企業に訪問したり、小売店に訪れる顧客に販売したりする販売手法が業界の常識だった。

そこで同社はカタログ販売を導入することで、電話やインターネットで手軽に発注できる環境を整備。さらに同社は小売店とのしがらみを避けるために、配送はアスクルが担当し、顧客開拓・代金回収は小売店が担当する仕組みをとるなど、小売店に対しても配慮する姿勢を見せている。

その結果、同社は大きなトラブルを抱えることなく、大幅な需要開拓をスムーズに実現した。

多くの成功例に目を通し、「魅力・実現性」が両立したビジネスモデルを

ビジネスモデルは魅力的であることも重要だが、それと同時に実現性を高めなければならない。斬新なアイデアを思いついても、自社の経営資源では実現が難しいようなビジネスモデルは、決して優れているとは言えないだろう。

本記事ではビジネスモデルの基礎から成功例までを幅広く紹介したが、特に成功例の部分はより多くの情報に目を通しておきたい。ほかにもさまざまな成功例に目を通しながら、ビジネスモデルの考え方やブラッシュアップをするコツを身につけていこう。

文・THE OWNER編集部

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