デジタル技術の導入コストは、数百万円以上に及ぶこともある。中小企業には大きな障害となるが、最大450万円が支援される「IT導入補助金」をご存じだろうか。本記事ではIT知識に自信がない層に向けて、2023年のIT補助金の概要を簡単に解説する。

目次

  1. IT導入補助金は中小企業をサポートする制度
  2. 2023年は最大75%の導入コストを支援
  3. IT化やDX化で中小企業はどう変わる?意識したい3つの効果
    1. 1.経営体質の見える化
    2. 2.業務効率化や人材の再配置
    3. 3.働き方改革やワークライフバランスの実現
  4. 方向性を決める前にIT導入補助金の概要を確認しよう
IT導入補助金2023の補助率は最大75% チェックすべき要件を簡単に解説
(画像=Hanasaki/stock.adobe.com)

IT導入補助金は中小企業をサポートする制度

IT導入補助金は、中小機構が2017年から実施している補助金制度だ。ソフトウェアやクラウドなどの導入費を対象として、所定の要件を満たした企業に最大450万円が支給される。

制度名IT導入補助金
実施者中小機構
対象企業IT化を進める中小企業(飲食や製造業、建設業なども含む)
主な要件・従業員数が一定数以下であること
・資本金が一定額以下であること
・補助対象となる経費を使ったこと
(※従業員数や資本金の基準は業種によって異なる)
補助対象・ソフトウェア購入費
・クラウド利用料
・導入関連費
・ハードウェア購入費
申請期間(2023年)2023年3月20日から(終了時期は未定)
2023年3月20日から(終了時期は未定)

簡単にまとめると、IT導入補助金は中小企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援する制度である。2023年6月時点で終了時期は未定だが、申請時には事前準備(ツールの選択やアカウント開設など)が必要になるため、早めの申請を意識しておきたい。

2023年は最大75%の導入コストを支援

2023年のIT導入補助金には4つの類型があり、それぞれ補助対象や補助率、上限額などが異なる。

<通常枠(A類型)>
補助額:5万円~150万円未満
補助率:2分の1以内
補助対象:ソフトウェア購入費、2年分のクラウド利用料、導入関連費
主な要件:特になし

<通常枠(B類型)>
補助額:150万円~450万円以下
補助率:2分の1以内
補助対象:ソフトウェア購入費、2年分のクラウド利用料、導入関連費
主な要件:4以上の業務工程があり、賃上げ目標を設定していること

<セキュリティ対策推進枠>
補助額:5万円~100万円
補助率:2分の1以内
補助対象:2年分のサービス利用料
主な要件:情報処理推進機構が指定するサービスであること

<デジタル化基盤導入類型>
補助額:350万円まで
補助率:50万円以下の部分は4分の3以内、50万円超の部分は3分の2以内
補助対象:会計や受発注、決済、ECに関するソフトウェア
主な要件:50万円超の補助は、「会計・受発注・決済・EC」のうち2機能以上が対象

上記の他、2023年10月から開始されるインボイス関連の類型や、複数社での導入を対象にした類型も用意されている。判定方法が分からない場合は、「業種別に定められた中小企業の要件」と「導入ツールが含まれる類型」の2点を確認し、その上で細かい要件を確認していこう。

IT化やDX化で中小企業はどう変わる?意識したい3つの効果

IT導入補助金を利用しても、全ての導入コストが補助されるわけではない。運用コストもかかるため、あらかじめ導入効果を明確にした上で、必要なシステムやサービスを選ぶことが重要だ。

ここからは3つの点に分けて、IT化やDX化で意識したい効果を解説する。

1.経営体質の見える化

AIとビッグデータを活用した経営分析は、すでにさまざまな企業で行われている。中小企業の導入例も増えているため、勘に頼った経営では時代に取り残されるかもしれない。

自社が抱えている課題を見極めるには、「経営体質の見える化」が必要だ。例えば、販売管理システムを導入すると原材料の単価がデータ化されるため、ニーズに合わせて仕入れを調整するといった対策が可能になる。

2.業務効率化や人材の再配置

これまで属人的であった業務を自動化できる点も、デジタル技術を導入する効果だ。分かりやすい例としては、紙面から請求書データを作成するツールや、単純作業を代行するロボットなどが挙げられる。

このようなデジタル技術を導入すると、業務効率がアップするだけではなく、手が空いた人材を再配置できる。

3.働き方改革やワークライフバランスの実現

IT導入補助金には、働き方改革やワークライフバランスの実現につながる補助対象も含まれている。例えば、給与管理とタイムカードを連携した管理ツールを導入すると、明確なデータをもとに労働環境や規定を見直せるかもしれない。

働きやすい職場づくりは、人材不足の解消や企業価値の向上にもつながるため、積極的に意識したいポイントだ。

方向性を決める前にIT導入補助金の概要を確認しよう

2023年のIT導入補助金では、さまざまなソフトウェアやサービスが補助対象に含まれる。クラウドなどの汎用的なサービスも補助対象なので、多くの中小企業が利用しやすい制度になっている。

ただし、導入するツールや範囲によって補助内容は変わるため、施策を進める前にIT導入補助金の要件や補助率などを確認しておこう。

著:片山 雄平
1988年生まれのフリーライター兼編集者。2012年からフリーライターとして活動し、2015年には編集者として株式会社YOSCAに参画。金融やビジネス、資産運用系のジャンルを中心に、5,000本以上の執筆・編集経験を持つ。他にも中小企業への取材や他ライターのディレクション等、様々な形でコンテンツ制作に携わっている。
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