分散型金融(Defi)の仕組みや特徴・現状と今後活用される領域とは

2009年にビットコインが登場したことで話題となった暗号資産業界(仮想通貨)の市場。これまで、決まった取引所を介さなければできなかったお金のやりとりが、ブロックチェーン技術を使って当事者間で実施できるようになりました。そのブロックチェーン技術を用いて、さまざまな金融サービスにアクセスできるようになったのが分散型金融(Defi)です。近年市場が急成長しており、仕組みや特徴の理解が求められています。本記事では、分散型金融(Defi)を従来の中央集権型金融と比較しました。メリットや今後の課題、動向についても調べてみました。

目次

  1. 分散型金融(Defi)とは
    1. 分散型金融(Defi)の定義
    2. 分散型金融(Defi)の仕組みとレイヤー構造について
    3. 分散型金融(Defi)の主なカテゴリー
  2. 分散型金融(Defi)の特徴的なメリット
    1. 仲介組織なしで取引や資産管理ができる
    2. データ改ざんなどを回避できる
    3. より多くの人が金融サービスを利用できる
  3. 分散型金融(Defi)の課題とデメリット
    1. レイヤー構造がゆえのトラブル波及
    2. スマートコントラクトの信用性
  4. 分散型金融(Defi)のユースケース
    1. 銀行サービスへの活用
    2. 貸借契約への活用
  5. 分散型金融(Defi)の現状と今後活用される領域
    1. 日本における分散型金融(Defi)の推進
    2. 分散型金融(Defi)により実現しているサービス
    3. 発展途上でリスクもあり、慎重な判断が必要
  6. 分散型金融(Defi)の仕組みを理解し新たなサービス創造へ

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分散型金融(Defi)とは

分散型金融(Defi)の仕組みや特徴・現状と今後活用される領域とは

まずは分散型金融(Defi)とは何か、仕組みやカテゴリを具体的に把握しましょう。

分散型金融(Defi)の定義

分散型金融(Defi)とは、Decentralized Financeの略で、「ディーファイ」と読みます。ブロックチェーンを活用して、銀行・証券・保険などの各種金融サービスの利用を可能にする分散型金融エコシステムのことです。

ブロックチェーンとは、本記事では詳細に触れませんが、ネットワークでつながった複数のコンピューターで、取引情報などを勝手に書き換えられないようデータにして共有したもの。「分散型の台帳」と言われますが、ブロックチェーンはネットワーク内で発生した全ての取引を記録する「台帳」としての役割を持ち、ネットワークに参加している全てのユーザーが同一の「台帳」を共有することで、情報の信ぴょう性を確保しています。ブロックチェーンを用いることで、非中央集権型の管理ができることが特徴の1つと言われています。

対して既存の銀行は一般に中央集権型金融であるとされており、分散型の管理と比較すると、機密性や安全性、セキュリティや災害時のリスクが一極集中してしまう点に課題があると言われています。

分散型金融(Defi)の仕組みとレイヤー構造について

米連邦準備制度理事会(FRB)の地区連邦準備銀行であるセントルイス銀行が、分散型金融の調査レポートを公開し、分散型金融をレイヤー構造に分解して説明しています。幾重かの層の一番上に個人の利用者がいる構造で、各レイヤーはスマートコントラクトで連携されています。

スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上の取引が自動的に実施されるプログラムのこと。例えばある層の金融サービスの開発をすれば、既存の層のサービスにつなぐことですぐに機能します。

中央集権型金融の組織がこのレイヤー構造を作ろうとすると、各層での個別のインターフェイス開発や、その連携などをはじめから作る必要があります。

分散型金融(Defi)の主なカテゴリー

今後活用が期待される主なカテゴリーとしては、以下のようなものがあると言われています。

  1. DEX(分散型取引所):ユーザー同士を直接つなげ、トークンを取引できる取引所です。トークンは既存のブロックチェーン上で発行されます。例えば、ポイントサービスもトークンの一種。価値あるものと交換できるサービス券のようなものです。資産はユーザーがそれぞれのウォレットで管理します。
  2. ステーブルコイン:安定した価格を実現するために設計された仮想通貨です。価値は法定通貨と1:1です。
  3. レンディング:中央機関などの仲介業者を通さずに、独自のルールで融資を実施します。
  4. 予測市場:将来の出来事の結果に賭ける先物市場です。
  5. デリバティブ:暗号資産のレバレッジ取引です。

最近では、ステーブルコインや仮想通貨をDEXやレンディングなどのDefiサービスに貸し出すなどして、利息や手数料を受け取ることができる「イールドファーミング」という運用モデルが登場し、Defi利用者が増加しているそうです。イールドは「利回り」、ファーミングは「農業」を意味します。銀行にお金を預けると金利分の利息がもらえますが、それの仮想通貨バージョンのようなものです。

分散型金融(Defi)の特徴的なメリット

分散型金融(Defi)の仕組みや特徴・現状と今後活用される領域とは

今なぜ分散型金融(Defi)への注目が高まっているのか、それには分散型金融(Defi)の特徴とも言える3つのメリットが関係していると考えられます。

仲介組織なしで取引や資産管理ができる

仲介組織がいらない点は、大きな特徴の1つではないでしょうか。従来の銀行では、銀行口座から送金する際、事前に口座を開設してお金を預けておかなければなりません。分散型金融(Defi)なら、相手のアドレスさえ分かれば直接送金できます。

自身で資産管理もできます。その代わり、ユーザーが資産にアクセスできないような不具合が生じると、資産は取り出せなくなるので、自身で責任を持つ必要があります。

データ改ざんなどを回避できる

中央集権型金融の場合、万が一メインのコンピューターがハッキングなどの被害にあった場合、データを改ざんされたり、流出したりする可能性があります。しかし、ブロックチェーンは世界中のパソコンでデータを共有しています。いわば見張り役がたくさんいる状態なので、一部に改ざんがあるとすぐに感知し、防止できると考えられます。

より多くの人が金融サービスを利用できる

分散型金融は居住地や資産に関わらず、インターネットにアクセスできる環境があれば誰でも参加できます。国によっては行政の戸籍管理が徹底していないため、身分を証明できずに銀行口座開設が難しい人もいます。また、手数料が払えずに銀行口座開設を断念しなければならない人がいる国もあります。

分散型金融は手数料が比較的安く銀行口座開設の必要がないため、より多くの人が利用できると考えられます。

分散型金融(Defi)の課題とデメリット

分散型金融(Defi)の仕組みや特徴・現状と今後活用される領域とは

メリットが多いように思われる分散型金融(Defi)ですが、今後解決すべき課題と言える2つのデメリットを見ていきましょう。

レイヤー構造がゆえのトラブル波及

分散型金融(Defi)は先述したようにレイヤー構造となっており、別々の層にある別々の金融サービスが縦に連携し、個人利用者へ行き着くような構造です。すなわちある層のサービスにトラブルが起きると、その上の層にあるサービス全体にも影響が及ぶ可能性があります。

スマートコントラクトの信用性

分散型金融を成り立たせているのは、スマートコントラクトです。自動取引のプログラムですが、初期設定は人が行っているため、ヒューマンエラーがないとは断言できません。プログラム設定は開発者にしか解読はできないので、そこに潜むリスクを評価することは難しいでしょう。

分散型金融(Defi)のユースケース

分散型金融(Defi)の仕組みや特徴・現状と今後活用される領域とは

分散型金融は、さまざまなユースケース(システムの活用事例)を生み出す可能性を持っています。2つの代表的なユースケースを見ていきましょう。

銀行サービスへの活用

仮想通貨と聞くと価格変動が大きいイメージを抱くかもしれません。しかし価格が比較的安定しているステーブルコインは、デジタル通貨として日常的な利用が想定されています。また、担保ローンや保険の手続きにはコストも時間もかかるのが一般的ですが、スマートコントラクトを利用すれば、手数料などのコストを大幅に削減できる可能性があります。

さらに、国際送金への活用もよく言われるところです。分散型コンピューターのネットワークにより、世界中で金融取引が行えるため、従来の国際送金に比べて迅速な取引が可能とされています。アンチ・マネーローンダリングの対応などの課題はあるものの、仲介手数料を抑えた低コストな決済を実現する選択肢の1つとなる可能性もあるのかもしれません。

貸借契約への活用

分散型金融(Defi)におけるポピュラーなユースケースが貸借契約への活用です。これまでの中央集権型と比べて、分散型金融(Defi)は信用調査が不要なことやデジタル資産を担保にできることなど、さまざまなメリットがあります。その上、低コストで、従来よりも素早い取引を可能にしています。

分散型金融(Defi)の現状と今後活用される領域

分散型金融(Defi)の仕組みや特徴・現状と今後活用される領域とは

まだ発展途上とも言える、分散型金融(Defi)の業界ですが、最近日本でも動きが活発化しています。気になる分散型金融(Defi)の今後の展望をチェックしましょう。

日本における分散型金融(Defi)の推進

2021年2月、日本における分散型金融の推進を目的とした業界団体「Japan DeFi Alliance(JDA)」が発足しました。ブロックチェーンやスマートコントラクトの技術を前提に、分散型金融の特徴やメリットに焦点を当てて活動している団体です。取り組み内容としては、主に金融サービスの開発推進やアクセス拡充、自動化などが挙げられます。

分散型金融(Defi)により実現しているサービス

分散型金融で現在実現しているサービスをみてみましょう。「Compound(コンパウンド)」は暗号資産を貸し借りできる銀行のようなサービスです。例えばイーサリアムのような暗号資産を貸し出すと、ウォレットからコンパウンドのブロックチェーン上のプログラムに保管されます。貸している人には利息が付き、借りたい人はそこから借りる仕組みです。

2つ目の「ユニスワップ(Uniswap)」は、分散型取引所(DEX)の1つです。交換したい2つの資産を選ぶと、固定レートで即座にユーザー同士でトークンを交換できるシステム。資金を預けることで流動性を提供する代わりに、利息と新たなトークン(※)が得られる「流動性マイニング」というシステムが採用されています。そのため、資金を預けるとスワップが発行しているトークンUNIを得られます。ウォレットアプリで資産管理ができるので、従来よりも安全性が高いと言われています。

※トークンとは明確な定義はないが、一般的には既存のブロックチェーン技術を利用して発行された暗号資産のこと

発展途上でリスクもあり、慎重な判断が必要

分散型金融は、成長中とは言えまだ生まれたばかりの仕組みで、日本で普及するのには時間がかかるかもしれません。また、十分な検証を経ずにリリースされたサービスもあり、暗号資産の盗難やハッキングなどのリスクがないとは言い切れません。今後もDefiを活用したサービスが増えていくトレンドにあると思いますが、リスクに対しては慎重な判断が必要だと考えられます。

分散型金融(Defi)の仕組みを理解し新たなサービス創造へ

分散型金融(Defi)の仕組みや特徴・現状と今後活用される領域とは

ブロックチェーンを活用した、新たな金融システム構築・普及の可能性が期待される分散型金融(Defi)。課題もあり、まだサービスとしての稼働実績は少ないですが、その動向を注視する必要がありそうです。分散型金融にはこれまでの金融サービスとは異なる特徴と可能性があることから、仕組みを理解した上で、新たな金融商品サービスへの応用も今後期待できるかもしれません。私たちも、業界全体の動きを追いかけながら、サービス創発を考えていきたいと思います。

※本記事の内容には「Octo Knot」独自の見解が含まれており、執筆者および協力いただいた方が所属する会社・団体の意見を代表するものではありません。

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