Mobility Storyでは連載【プロフォトグラファーが教える北海道の絶景「道の駅」】などを担当していますが、今回は別シリーズの冬の北海道、道東エリアを旅する方にオススメするモデルコースです。
金曜日に都内での仕事を終えた友人を新千歳空港でキャッチアップし、火曜日の昼には道東エリアの大空町にある女満別空港から見送るという4泊5日とややタイトなスケジュールながら、キャンピングカーで「ジュエリーアイス」「タンチョウ」「ラッコ」「オオワシ」「オジロワシ」「野付半島」「流氷」といった貴重な野生動物や絶景の大自然をまわる撮影旅行を計画・実行しました。
この道東の冬の絶景旅の様子を4回にわけてみなさんに紹介していきます。最終回#4の今回は、旅の5日目です。
目次
【5日目】流氷+朝日をねらって、日の出前の「能取岬」へ
雄大な景色のなかに流氷の姿はなかった…
4日目の夜に「ふぁーむ ながの」のRVキャンプスペースに泊まった筆者たちですが、最終日5日目は一気に網走まで日の出前に走って、流氷を撮影。さらには網走流氷観光砕氷船に乗って海上からも流氷を楽しむ予定です。
しかし、ここまで連載を読んでいただいた読者のみなさんにも、同行していた友人にも旅行5日目当日まで黙っていたことがあります。実は旅行5日目2023年1月31日時点で網走には流氷初日が来ていませんでした。
流氷が来ていないことを知らなかったわけではありません。筆者はこの旅のはじまるかなり前から、第一管区海上保安庁の提供する「海氷情報センター」を小まめにチェックしていました。とはいえ友人の休みの日程を土壇場で変更することはできませんし、風向きや海流の影響で朝起きたら突然網走が流氷初日となる可能性も否定できません。そのため、ひとり祈るような気持ちで「海氷情報センター」の海氷速報を眺めていたわけです。
いや、実は早朝の4時前に野付半島の根元にある「ふぁーむ ながの」から網走の能取岬に向かうまでは、朝日の前に到着して、日が昇ってきたら実はその日が流氷初日なんて奇跡のような大逆転すら信じていました。
ですが、現実は2023年の網走の流氷初日は5日後の2月5日でした。朝日と流氷を期待して2時間かけて到着した能取岬は流氷どころか、雪もまばらな状態。非常に残念です。せっかくいっしょに行った友人には、非常に申し訳なくすら思いました。
上に掲載した写真のような光景が撮影できるはずだったのです。しかも、掲載した写真は流氷のピークをやや過ぎた時期なので、もっとびっしりと流氷が集まり、日の出の太陽の光を反射して赤く染まる様子が撮影できるつもりでした。
ちなみに「能取岬」は網走市街地から西側にあるオホーツク海に突き出した岬で北にはオホーツク海、東には知床連山を臨むことができる見晴らしのよい岬。景色の美しさでも知られ、各種CMや映画、なかでも中国映画「非誠勿擾」(邦題「狙った恋の落とし方」)の舞台としても有名で、海外からも多くの観光客が訪れる風光明媚な観光名所です。
また、網走市でもっとも早く流氷を見ることができるポイントといわれています。ここでダメなら網走市内で流氷を見るのはかなり困難ということです。
「網走流氷観光砕氷船 おーろら」の乗船場所に向かうが…
前日に予約はキャンセルしていたが流氷状況は「流氷なし」
能取岬に向かう道すがらも、一発逆転で流氷があることを期待していたのですが、「海氷情報センター」を小まめにチェックしていた筆者は、前日の夜に流氷がないことを確認した時点で「網走流氷観光砕氷船 おーろら」の予約をキャンセルしていました。
そして、実際に道の駅「流氷街道網走」と同じ敷地内にある「網走流氷観光砕氷船 おーろら」の乗船場に行くと「流氷状況」は「流氷なし」、「運行状況」は「航路上に流氷がないため、能取岬までの海上遊覧として運航します」とのこと、残念です。船に乗っても流氷は見られないことが確定しました。
ちなみに「網走流氷観光砕氷船 おーろら」の予約はWEBサイト(https://www.ms-aurora.com/abashiri/)から簡単に行えます。当然、流氷シーズンは大変混み合うので、自分の旅行の日程が決まったら、早めに予約することをおすすめします。
冬の道東は天気などの影響を受けやすいこともあってか、キャンセルは比較的簡単にできるシステムなので、まずは予約が間違いないでしょう。土日や祝日などはかなり早い時期から満席ということも珍しくありません。
また、今回は1月末に予約して、流氷を見ることができませんでしたが、網走で流氷が見られるタイミングはだいたい1月末から3月中旬から末くらいまでです。
「網走流氷観光砕氷船 おーろら」のWEBサイトでは過去の流氷初日や接岸日、流氷航海などの記録が公開されていますが、2018年からの過去5年間で1月末に流氷航海が行われなかったのは、2020年の2月8日開始のみ。1月の末日であれば80%以上の確率で流氷航海が楽しめるはずでした。
とはいえ、網走で流氷航海が楽しめるのは1月末から3月末までの約2カ月、60日で天候などの影響で実際に流氷航海が行われるのは40日前後だということです。流氷航海を確実に楽しみたいなら2月中旬から3月中旬までのスケジュールを確保し、予備日を含めて2日くらいは日程を確保しておきたいところです。
記事には2022年以前に筆者が撮影した流氷の写真を何枚か掲載しました。写真ではスケール感が伝えづらいという弱点があるのですが、大海原の一面が氷の覆われる流氷の景色は、はじめて見ると頭では理解していても、目の前の景色の不思議さが受け入れられないというか、そのスケールの大きさに脳がバグったようになるほどです。
今回の旅では、この景色をクライマックスに持ってきていたのですが、流氷がなく心から残念でした。雄大な景色が続く道東のなかでも、ぜひ一度はご覧いただきたい絶景となっています。空振りの可能性を含めても超おすすめです。
【おすすめ撮影グッズ】思ったよりもリーズナブルな150-600mmクラスの超望遠
今回の道東旅行で筆者はメインレンズを「SIGMA 60-600mm F4.5-6.3 DG DN OS | Sports」としていました。標準域から超望遠の600mmまでをカバーしてくれるだけでなく、画質もいい。素晴らしいレンズなのですが、実勢価格が約30万円とはじめて超望遠レンズを買うという方に敷居が高いのも事実です。
しかし、せっかく道東の自然風景や野生動物を見に行くなら、600mmクラスの超望遠は必須といえます。そこでおすすめしたいのが「SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary」に代表される150-600mmクラスのズームレンズです。「お高いのでしょ?」と思うでしょうが、新品でも11〜12万円程度と数十万が当たり前の超望遠レンズの世界ではコストパフォーマンスの高いエントリーモデルになっています。
実際、筆者もはじめての超望遠は150-600mmクラスでスタートしました。人によっては、さらに高画質、さらにハイレスポンスなどを求めて、買い換えていく人も多いですが、1本持っているだけで自然撮影が劇的に楽しくなります。
また、筆者は息子の保育園の発表会などは「SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Sports」で撮影していますし、妹は中学生の姪の部活での試合を「SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary」で撮影しています。実は普段の生活でも活躍してくれる使い勝手のいいレンズです。一度の購入を検討してみることをおすすめします。
SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG DN OS | Sports
SIGMA 150-600mm F5-6.3 DG OS HSM | Contemporary
網走でのすべてのスケジュールがキャンセルに
網走監獄を見て回る時間はなかったので「監獄食堂」で昼食をとってみた
最終日は能取岬で朝日と流氷を撮影し、そのあとは「網走流氷観光砕氷船 おーろら」に乗って流氷航海を楽しみ、市内もしくは女満別空港で昼食をとり、飛行機に乗る友人を見送って、筆者は女満別空港から千歳の自宅の帰る予定でした。流氷がなかったので、これらの予定はほとんどが白紙になったわけです。
そこで「やはり網走といえば網走監獄!」とも思ったのですが、網走監獄をゆっくり見て回るには時間が足りないことに気づき断念。ちなみに筆者は網走監獄の展示方法などが好きで、北海道の観光地でも指折りのお気に入りスポットです。時間のある方はぜひご覧いただきたい。
とはいえ、お昼ご飯だけでは時間が少し余るので「北海道立北方民族博物館」へ。「北海道立北方民族博物館」もかなりのお気に入りで、特に民族衣装のコーナーなどを見ていると「これモンハンとか出てくるヤツ」などといった気分になり、かなり楽しめます。きっとTVゲームの作り手などはかなりこの手の民族衣装などを研究されているのだと思っています。
そして、友人の北海道最後となる食事です。北海道らしいもの、網走らしいものと、散々考えた結果、筆者たちが選択したのは「監獄食堂」の「監獄食B 900円(ホッケ)」でした。現在網走刑務所で収容者が食べている食事のメニューを再現した「体験監獄食」でありながら、サカナもホッケと北海道らしく、きっと思い出深いものになるだろうと思ったわけです。
実際に食べてみると麦飯(麦3:白米7)に焼き魚ホッケ、小皿(山芋の千切り)と中皿(フキの煮物)の付いた「監獄食B 900円(ホッケ)」は、監獄並みと言われた国立学校の寮生活が長かった筆者にとって、麦飯などはまったく抵抗のないものでしたが、ホッケだけが…。
北海道出身の筆者にはちょっと食べきることができなかったのです。思い出には残りましたが、ちょっとやり過ぎたといった印象でしょうか。
【おすすめアウトドアアイテム】フッ素樹脂加工好きな筆者のお気に入り
実際にキャンピングカーや車中泊などで数日以上のクルマ旅をしたことのある人ならご存じでしょうが、思った以上に困るのが「汚れた食器などをどうするか?」です。
毎日、オートキャンプ場やRVパークに泊まるなら水場が使えるので問題ないでしょうが、冬の北海道では実際問題かなり困難。するとウエットティッシュなどで拭くだけで十分にキレイになる調理器具や食器がほしくなります。そのため、写真のように筆者のキャンピングカー用のメスティンや食器はほとんどがフッ素樹脂加工されたものになっています。
なかでも、筆者のお気に入りで秀逸なのが、キャプテンスタッグの「メタリックブラックコート」シリーズです。「シェラカップ320ml」や「仕切りプレート」「どんぶり」「小判型カレー皿」などが用意されており、フッ素樹脂加工されているので、ウエットティッシュなどで拭くだけで、カレーなどのしつこい汚れも落ちてしまいます。
筆者は、旅行期間中は筆者用と友人用などと分けて、使用して使ったらウエットティッシュで拭いて保管。旅行が終了後などにまとめて水洗いして使うといった個人分けをしていますが、車中泊やキャンピングカーで使いはじめると、ほかの食器を使うのがイヤになるほど便利です。
実勢価格で「ブルーブラックコート プレート14cm」なら400円程度で入手可能なので、ぜひ試してみてください。
最終目的地の「女満別空港」は、羽田からわずか1時間45分
流氷だけなら金曜の夜に羽田を出ても楽しむことが可能なアクセスの便利さ
今回の最終目的地「女満別空港」。道の駅「流氷街道網走」からわずか30分です。すごい地の果て感がありますが、実は羽田空港から飛行機で約1時間45分。羽田空港から新千歳空港まで約1時間半ですから、新千歳空港に行くのと15分しか違いません。
筆者たちが4泊5日かけて新千歳空港からたどり着いた「女満別空港」まで15分で着いてしまうかのようです。飛行機ってすごい。
今回は、残念ながら流氷は空振りでしたが、流氷だけが目的なら羽田空港から「女満別空港」の直行便を使えば、週末のお休みだけでスケジュールすることも可能でしょう。
北海道でもっともやる気のある商業施設という話もある、新千歳空港のお土産屋さんを見慣れた筆者にはちょっと物足りないところもありましたが、女満別空港で友人が北海道土産を購入するのに付き合ったあと、見送り、筆者も帰路につきました。
思いどおりに行かないからおもしろい! 予想を超えてくるから感動する冬の道東旅
連載形式で4回、5日間の道東巡る長い旅の記録にお付き合いいただき、ありがとうございます。
筆者は新千歳空港スタート、豊頃のジュエリーアイス、タンチョウ……といったパターンでキャンピングカーを使って冬の道東を周るのは数度目になります。そして、連載の第1回を読んでいただいた方はご存じのとおり、ジュエリーアイスは打ち上げられておらず、初日の最初から目的地を変更しました。
さらに連載4回目の今回は最大の目的であった網走に流氷がないといった事態も発生。アクシデントはこれだけではなく、ラッコが見られるのでは? と訪れた霧多布岬では2時間近くも歩き回った末、オオワシとオジロワシを撮影して帰ってきました。
いっしょに行った友人には悪いのですが…実際こんなものでしょう。自然現象や野生動物が相手ですので、思うようにはいかないわけです。逆に毎回思いどおりにいくなら、すぐに飽きてしまうでしょう。思いどおりにもいきませんが、逆に予想を超えた現象に感動することも多いのが素晴らしいところです。
今回は1月末に5日間も道東にいたのに、ずっと快晴。吹雪などで行動できない日もあるだろうと予想していたのですが、とても快適なドライブを楽しめました。また、2日目の朝に訪れた鶴居村の音羽橋はサービス過剰ではないかと思うほどの川霧と美しい朝焼けに恵まれました。
連載3回目のトップ画像にも使用した野付半島の立ち枯れた木の枝にとまっていたオジロワシについては、友人と2人で「やらせじゃないの?」と目を疑ったほどです。友人を見送ったあと、女満別空港から千歳まで9時間ほどかけて帰ったのですが、帰り道でも、今回の経験を元に次はどうしようと、次のシーズンのプランに思いをはせていました。
それくらい何度行っても思うようにはいきませんし、何度行ってもおもしろいのが冬の道東のクルマ旅です。来シーズンはぜひみなさんもごいっしょしませんか? きっといい大人が自然や野生動物、寒さや風景などに毎日感動できると思いますよ。
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