会社を存続させるには運転資金が必要となるため、資金調達は会社経営における重要なテーマだ。資金調達というと融資を思い浮かべるかもしれないが、ベンチャーキャピタルによる出資や資産の現金化など実はさまざまな選択肢がある。また、最近ではクラウドファンディングなど新しい出資の形も登場している。

この記事では、資金調達の3つの種類とメリット・デメリット、経営ステージに応じてどのような資金調達の選択肢を検討すべきかを分かりやすく解説する。

目次

  1. 資金調達とは?
  2. 資金調達の3つの方法とメリット・デメリット
    1. 1.負債を増やす。返済が必要
    2. 2.資本を増やす。エグジットが必要
    3. 3.資産を現金化する
  3. その他の資金調達の方法
  4. 起業・開業で資金調達が必要なタイミング
    1. シード
    2. シリーズA
    3. シリーズB
    4. シリーズC
    5. シリーズD
  5. 自社に合う資金調達の方法を見極めよう
資金調達とは? 種類や調達方法などわかりやすく解説
(画像=78art/stock.adobe.com)

資金調達とは?

資金調達とは、事業に必要な資金を外部から調達することをいう。

資金調達の目的は、開業や起業、設備投資、新規事業の立ち上げなどさまざまだ。運転資金が不足した際に倒産を防ぐ目的で資金調達を検討することもあれば、M&Aで会社を売却する際に買収側の不足資金を資金調達することもある。会社経営では、さまざまなステージで資金調達が必要になる。

資金調達と似た言葉にファイナンスがある。ファイナンスは資金そのものを指す英単語だが、ビジネスシーンでは資金調達や資金の運用、収益の分配などを総称する言葉だ。ファイナンスの一部に資金調達が含まれるといえるだろう。

資金調達の3つの方法とメリット・デメリット

資金調達には、主に3つの方法がある。3つの方法ごとにメリット・デメリットを表で整理したので、参考にしてほしい。

資金調達の3つの方法とメリット・デメリット

続いて、資金調達の種類別に、具体的な選択肢を見ていこう。

1.負債を増やす。返済が必要

まず、負債(デットファイナンス)を増やす方法がある。負債は、借入金や社債といった項目で、貸借対照表の右上に記載される。

具体的な方法として、金融機関や公的機関からの融資が代表的で、以下のようなさまざまな選択肢がある。

・政府系金融機関である日本政策金融公庫からの融資
・メガバンクや地方銀行、信用金庫・信用組合といった民間の金融機関からの融資
・地方自治体の制度融資
・商工会議所の融資 など

金融機関や公的機関からの融資は、まとまった資金を借りられるというメリットがある一方で、審査が厳しく借入まで時間がかかるのがデメリットだ。

消費者金融など金融機関以外からお金を借りる、ノンバンクのビジネスローンという選択肢もある。審査基準が比較的緩やかで、短期間で借入できるのがメリットだが、借りられる金額は数百万円から1,000万円程度と、金融機関や公的機関からの融資と比べて少ないのがデメリットだ。

投資家や従業員向けに社債を発行して資金調達する方法もある。証券会社を通して募集する公募債だけでなく、手続きが簡単で実施しやすい私募債、普通社債、転換社債、ワラント債、劣後債などいくつかの種類がある。

2.資本を増やす。エグジットが必要

続いて、出資(エクイティファイナンス)によって資本を増やす方法がある。資本は、貸借対照表の右下にある純資産の部に記載される。

具体的には、ベンチャーキャピタル(VC)やエンジェル投資家から出資を受ける方法だ。

ベンチャーキャピタルとは、未上場のベンチャー企業に出資して株式を取得して経営支援を行い、上場(株式公開)後に株式を売却して値上がり益を得る投資ファンドのことだ。

エンジェル投資家とは、スタートアップ企業を中心に投資する投資家のことで、スタートアップ企業とエンジェル投資家をマッチングするサービスもある。

また、株式型のクラウドファンディングでインターネットを通じて出資を募る方法もある。

3.資産を現金化する

資産の売却(アセットファイナンス)でも資金は調達できる。資産は貸借対照表の左側に記載されている。

事業に必要不可欠ではない資産があるなら、資金調達のために売却するのも1つの手段だ。例えば、保養所や研修施設、遊休地などの不動産、有価証券やゴルフ会員権、特許権などが選択肢に入る。

また、社宅や工場、機械設備、車両など事業に必要な資産をリース会社に売却し、リース料を支払って引き続き利用するリースバックという方法もある。まとまった資金を一括で得られるのはメリットだが、リース料を継続的に支払わなければならない。

ファクタリングや手形割引という方法もあり、手数料等が発生するものの速やかに現金を得られるのがメリットだ。ファクタリングは売掛金を売却することで、手形割引は満期になる前に銀行や業者に手形を持ち込むことで現金化する手法だ。

また、複数の事業を運営しているなら、一部の事業のみを売却する事業譲渡もある。買い手企業が見つかれば、事業に係る不動産や機械設備、人員、在庫などを売却して資金を得られる。

その他の資金調達の方法

ここまで解説してきた3つの方法以外にも、資金調達の方法は存在する。例えば、国や自治体が用意している補助金や助成金の利用だ。

また、クラウドファンディングには、出資の1つとして紹介した株式型クラウドファンディングのほか、売買型や寄付型のクラウドファンディングもある。

売買型:出資の見返りとして新商品やサービスを提供する形式
寄付型:社会貢献などが目的で出資の見返りがない形式

売買型や寄付型では、資本ではなく資産や収入として会計処理するため、配当金を支払う必要もない。

起業・開業で資金調達が必要なタイミング

資金調達の方法はたくさんあるため、どの選択肢を選ぶべきか悩むことも多いだろう。資金調達の方法を決める際には、投資ラウンドの考え方が参考になる。

投資ラウンドとは、投資家が投資する際の判断基準になるよう、経営のステージを段階的に分類したものだ。出資を受ける会社目線で「資金調達ラウンド」と呼ばれることもある。

自社がどの投資ラウンドに属するか知ることで、資金調達の方法を選びやすくなるかもしれない。

なお、投資ラウンドには「シード」から「レイター」まで4つの段階があり、それぞれの段階がさらに細かく分類されている。

資金調達の3つの方法とメリット・デメリット

シードからシリーズDまでの代表的な投資ラウンドの特徴や出資額、資金調達の選択肢について解説していく。

シード

シードとは、ビジネスモデルが決まり、開業や起業を実行に移すステージだ。市場調査や開発体制の整備など、商品やサービスのリリースに向けた準備段階といえる。出資を受ける目的は、調査や開発にかかる人件費などの費用調達だ。

シードの出資額目安は事業内容によるため数百万円から数億円といわれており、資金調達の選択肢には以下のようなものがある。

・日本政策金融公庫からの融資
・民間の金融機関からの融資
・エンジェル投資家やベンチャーキャピタルからの出資
・株式型クラウドファンディング など

シリーズA

シリーズAとは、商品やサービスの提供を開始した段階で、売上拡大や認知度の向上を目指すステージを指す。マーケティングや人材確保のための費用、設備投資資金などが必要となる。

シリーズAの出資額の目安は、数千万円から数十億円だ。

資金調達の選択肢としては、ベンチャーキャピタルからの出資のほか、補助金や助成金の活用も積極的に検討したい。認知度向上のために株式型クラウドファンディングを活用するのもいいだろう。

シリーズB

シリーズBとは、商品やサービスが評価されて事業が軌道に乗り始めた段階で、さらなる新規顧客の獲得や商品・サービスの品質向上、黒字化を目指すステージにあたる。創業者や投資家が、上場やM&Aなどのイグジットを考え始める時期でもあり、人材確保や販売促進、設備投資、品質向上のための研究開発など、さまざまな目的で資金調達が行われる。

シリーズBの出資額の目安は、数千万円から数十億円だ。

調達額が大きくなるため、複数のベンチャーキャピタルからの出資を検討する必要があり、補助金や助成金も引き続き活用したい。

シリーズC

シリーズCとは、黒字化し経営が安定した段階のことで、事業展開しながら上場やM&Aなどのイグジットを意識するステージだ。新規事業の創出や海外進出を視野に入れることもある。

シリーズCの出資額の目安は、数億円から数百億円だ。

調達額が大きければ、複数のベンチャーキャピタルやPEファンド(プライベート・エクイティ・ファンド)からの出資を検討する必要がある。PEファンドとは、経営支援により企業価値を高めてからIPOで利益を得る投資ファンドのことだ。また、一部の事業を事業譲渡で買い手に売却して資金調達するという選択肢もある。

シリーズD

シリーズD とは、事業が順調で経営が安定しており、上場やM&Aなどのイグジットを目前とした段階だ。上場準備や管理体制の強化のために資金調達が必要となる。

シリーズDの出資額の目安は、数億円から数百億円だ。

資金調達の選択肢としては、ベンチャーキャピタルやPEファンドからの出資を受けるほか、上場してIPOを行って投資家から資金を集める選択肢もある。また、複数の事業を行っているならば、事業譲渡による資金調達も可能だ。

自社に合う資金調達の方法を見極めよう

資金調達にはさまざまな種類があり、それぞれにメリット・デメリットがある。融資が一般的だが、そのほかの選択肢も知っておくことで、必要に応じて自社に合った資金調達を選べるだろう。

また、経営のステージによっても検討すべき選択肢は変わってくる。自社がどの経営ステージに属するのかを判断し、資金調達の方法を検討するのもいいだろう。

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文・木崎涼

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