矢野経済研究所
(画像=279photo/stock.adobe.com)

日本国内における2021年度のアグリテック・フードテック市場規模(スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質の4市場計)は718億4,700万円と推計

~気候変動や生産環境の変化を受け、アグリテック・フードテックの技術を活用した食料生産に注目~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内外におけるアグリテック・フードテック市場(スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質)を調査し、現況、参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。ここでは国内市場規模、及び一部の分析結果を公表する。

アグリテック・フードテック国内市場規模(スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質の4市場計)推移と予測

矢野経済研究所
(画像=矢野経済研究所)

1.市場概況

日本国内における2021年度のアグリテック・フードテック市場規模(スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質の4市場計)はメーカー出荷金額ベースで、718億4,700万円と推計する。

日本国内では、農業就労人口の減少や従事者の高齢化が喫緊の課題となっている。農林水産省によれば、2015年の日本国内の基幹的農業従事者(個人経営体の15歳以上の世帯員のうち、普段仕事として主に農業に従事している者)の人口は175万7千人であったが、その後は減少が続き、2022年には122万6千人となった。

従事者の平均年齢は2015年の67.1歳から、2022年には68.4歳に上昇しており、高齢化が進んでいる。今後、高齢農業者のリタイアが増加すると見込まれることから、農産物の生産量が減少し、食料自給率の更なる低下が想定されることから、食料安全保障の観点からも危惧されている。

漁業では、国際的な水産物需要の高まりから世界的には養殖生産が拡大していくなか、食生活の変化などにより、定質、定量、定価格、定時に対応しやすい水産物が求められるようになってきている。また、魚用配合飼料の主原料である魚粉は、大半を輸入に依存しているが、世界的な需要増を背景に、魚粉の輸入価格は高値で推移しており、コストが課題となっている。

畜産業では、世界の人口増加に伴い、食肉需要は増加している。しかし、畜産由来の温室効果ガス排出や飼料、水資源の大量利用など、畜産業が地球環境に与える影響が背景となり、将来的に従来の動物由来の食肉のみで需要を満たすことが困難になる可能性が出てきている。こうしたなか、豆類や野菜などを原材料とした植物由来肉、動物細胞を培養して製造する培養肉が注目されている。加えて、水産資源においても持続可能な需給バランス維持の観点から、豆類や小麦、海藻などを原材料とした植物由来シーフードや、魚類や甲殻類などの細胞を使用した培養シーフードなど、代替シーフードの研究開発が進んでいる。

農業、漁業、畜産業など、従来の食料生産の方法から、気候変動や生産環境の変化を受け、スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質など、アグリテック・フードテックの技術を活用した食料生産が注目されている。

2.注目トピック

代替シーフードや代替卵など植物由来代替タンパク質の製品カテゴリー拡大

植物由来肉のほか、シーフード、卵などの植物由来代替タンパク質製品が上市され、製品カテゴリーが拡大されるなど、市場は活況を呈している。

日本国内でも、植物由来フォアグラを使用したハンバーガー、植物由来ツナの缶詰、植物由来シーフードのフィッシュフライなどが上市された。また植物由来卵でも、市販用販売、飲食店でのメニュー導入などが進んでいる。

植物由来の代替タンパク質製品のメリットとして概して環境負荷軽減と動物福祉が挙げられる。こうしたなか、原材料を調整し、より食味や栄養価を高めることを狙った製品も販売されており、従来の畜産による生産物と植物由来の代替タンパク製品を組み合わせることで、より栄養価が高く、栄養バランスに配慮した食事が実現できる可能性がある。

3.将来展望

日本国内における2030年度のアグリテック・フードテック市場規模(スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質の4市場計)はメーカー出荷金額ベースで、2,112億7,700万円に伸長すると予測する。

今後は、スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質などの進展により、食料生産の枠組みが変化する可能性がある。製品量、品質、価格などの安定供給を図り、製品メーカーや、小売店や飲食店などの事業者、消費者に資するとともに、既存産業の革新的な進展を促進し、より高付加価値の商品を生み出す一助となることで、食品市場全体の拡大に貢献することを期待する。

調査要綱



1.調査期間: 2023年1月~3月
2.調査対象: アグリテック・フードテック市場(スマート農業、植物工場、次世代型養殖技術、代替タンパク質)の参入事業者、関連団体等
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話・e-mail等によるヒアリング調査、アンケート調査および文献調査併用
<アグリテック・フードテック市場とは>
本調査におけるアグリテック・フードテック市場とは①スマート農業(栽培支援ソリューション、販売支援ソリューション、経営支援ソリューション、精密農業、農業用ドローンソリューション、農業用ロボット)、②植物工場(完全人工光型植物工場での生産野菜(レタス類)、完全人工光型植物工場の建屋および関連資材)、③次世代型養殖技術(スマート水産、陸上養殖システム、低魚粉飼料、昆虫タンパク質飼料)、④代替タンパク質(植物由来肉・植物由来シーフード、培養肉・培養シーフード、昆虫食)を対象とし、市場規模は国内市場規模として4市場を合算し、メーカー出荷金額ベースで算出している。

なお、各市場における分野別定義の詳細は次のプレスリリース資料を参照のこと。
①「スマート農業に関する調査を実施(2022年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3187
②「植物工場市場に関する調査を実施(2022年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/3038
③「次世代型養殖ビジネスに関する調査を実施(2021年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2774
④「代替タンパク質 (植物由来肉、植物由来シーフード、培養肉、培養シーフード、昆虫タンパク)世界市場に関する調査を実施(2022年)」https://www.yano.co.jp/press-release/show/press_id/2931
<市場に含まれる商品・サービス>
スマート農業(栽培支援ソリューション、販売支援ソリューション、経営支援ソリューション、精密農業、農業用ドローンソリューション、農業用ロボット)、植物工場(完全人工光型植物工場での生産野菜(レタス類)、完全人工光型植物工場の建屋および関連資材)、次世代型養殖技術(スマート水産、陸上養殖システム、低魚粉飼料、昆虫タンパク質飼料)、代替タンパク質(植物由来肉・植物由来シーフード、培養肉・培養シーフード、昆虫タンパク(昆虫食))、パーソナルミールソリューション(パーソナライズフード、献立(レシピ)提案アプリ、スマートキッチン家電等)

出典資料について

資料名2030年のアグリテック・フードテックの展望 ~アグリ&フードテックで実現する持続可能な農業・食の未来~
発刊日2023年03月29日
体裁A4 242ページ
価格(税込)209,000円 (本体価格 190,000円)

お問い合わせ先

部署マーケティング本部 広報チーム
住所〒164-8620 東京都中野区本町2-46-2
電話番号03-5371-6912
メールアドレスpress@yano.co.jp

©2023 Yano Research Institute Ltd. All Rights Reserved.
本資料における著作権やその他本資料にかかる一切の権利は、株式会社矢野経済研究所に帰属します。
報道目的以外での引用・転載については上記広報チームまでお問い合わせください。
利用目的によっては事前に文章内容を確認させていただく場合がございます。