矢野経済研究所
(画像=Alex_Traksel/Shutterstock.com)

2018年の3Dプリンタ材料の世界市場規模は前年比26.9%増の1,813億44百万円

~造形方法の技術革新、材料の多様化・高機能化が進み、3Dプリンタの適用領域が拡大~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、3Dプリンタ材料の世界市場を調査し、方式別動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

3Dプリンタ材料世界市場規模推移・予測

3Dプリンタ材料世界市場規模推移・予測
(画像=矢野経済研究所)

1.市場概況

2018年の3Dプリンタ材料の世界市場規模(エンドユーザー購入金額ベース)を前年比126.9%の1,813億44百万円と推計した。3Dプリンタ材料市場は海外を中心に、①造形方法における技術革新(スピードや強度等)の進展、②3Dプリンタ材料の多様化・高機能化、③造形品の試作品から最終製品へのさらなる適用拡大、といった要因から大きく伸長している。

2.注目トピック

造形方法における技術革新の進展

2015年以降、造形スピードや造形品の強度向上などを実現する新たな造形方法を開発し、3Dプリンタ市場に参入する企業が相次いでいる。
樹脂材料を用いる3Dプリンタにおいては、2Dプリンタ事業で蓄積してきた技術・ノウハウ・知的財産を活用するHPをはじめ、Markforged、Carbon、Formlabsなど米国発のメーカーが多い。
一方で、金属材料を使用する3Dプリンタの造形方法は、粉末床溶融結合(PBF)法から材料押出(ME)法や結合剤噴射(BJ)法へ広がりをみせる。BJ法では、Desktop Metal、HP、GE Additive、Stratasysなどのメーカーが市場への参入を計画している。

3.将来展望

2018年から2023年までの年平均成長率(CAGR)は21.2%となり、2023年の3Dプリンタ材料の世界市場規模(エンドユーザー購入金額ベース)は4,750億67百万円になると予測する。

造形方法別に3Dプリンタ材料市場の動向をみると、ME法向け材料では装置と材料の進化によって用途・エンドユーザーのさらなる拡大が期待され、フィラメント(紐状材料)の市場規模は今後も高成長が続くであろう。
PBF法向け材料市場では、各社が立ち上げた材料開発を目的とするオープンプラットフォームで使用できる樹脂粉末が多様化することで、最終製品での需要が増えるものと想定される。一方、装置メーカーの動きによって造形方式間の競争が激しさを増すことから、PBF装置向けの金属粉末の市場規模は2020年以降に成長率が鈍化すると予測する。
VP法向け材料市場では、低価格帯装置の普及や材料専業メーカーを中心とする共同開発プラットフォームの立ち上がりなどによって、今後も試作品への適用、および最終部品における新たな用途の創出を期待できる。
MJ法向け材料市場では、治工具向け用途などはME装置+フィラメントなどとの競合が生じつつあるが、カラーが求められるデザインモデル向けの需要は底堅く推移していく。また、金型や医療分野向けが需要を下支えしていくとみられる。

今後も造形方法の技術革新と材料の多様化・高機能化が相まって、3Dプリンタによる造形品は最終製品への適用が広がり、製造業におけるその位置づけは工作機械に近づいていくともいえる。ただ、工作機械を置き換えていくような存在とはなりにくく、先に述べた試作品や治工具、あるいは少量多品種品、カスタマイズ品を造形する際にこそ3Dプリンタは大きなベネフィットをもたらすと考える。
そのため、自動車(普及車)の量産部品などとは異なる、よりニッチな市場を対象とした3Dプリンタならではの継続的な用途開拓が必須となる見込みである。