「冷凍自販機」FROZEN STAION(フローズンステーション)
(画像=「冷凍自販機」FROZEN STAION(フローズンステーション))

冷凍自販機の拡大が今も続いている。当初は小規模の飲食店で広く導入されていたが、最近はスーパーやコンビニの空きスペース、飲料のあった場所で採用されるなど、利用される場所が広がっている。飲料のように商品の選定から補充までを請け負う事業者も登場し、商品メーカーからも注目される一方、品質面に課題を残す事業者など、問題も噴出している。

〈伸長続く自販機 求められるサービスは飲料自販機と同等に〉
日本自動販売システム機械工業会が2023年4月に発表したデータによると、2022年12月末時点での食品自動販売機(中身商品は、インスタント麺・冷凍食品・アイスクリーム・菓子など)は前年比6.7%増の7万7,700台だった。冷凍自販機の拡大が伸長した要因に挙げられている。

サンデン・リテールシステムが発売した冷凍自販機「ど冷えもん(どひえもん)」は、2022年12月末時点での累計販売台数が6,000台を突破した。2023年に入っても台数は伸び続けているという。今後は商品の選定から補充までを一挙に行えるようなサービスの提供などを目指している。

冷凍自販機・ど冷えもん設置無人販売店「FROZEN24マート」
(画像=冷凍自販機・ど冷えもん設置無人販売店「FROZEN24マート」)

富士電機で販売している「FROZEN STAION(フローズンステーション)」も攻勢をかけている。販売当初は、使用できる容器の関係で苦戦していたが、今年1月に対応できる容器を増やすなどした新型機「FROZEN STATION Ⅱ(フローズンステーション・ツー)」を投入し、採用が進みつつあるという。また、販売代理店からは「『フローズンステーション』は商品ごとにボタンがあるので直感的に利用できるため、高齢者からは好評」という意見もあった。

導入され始めた初期は、個人経営の飲食店などの前に置かれていることが多かった。しかし今、街中で冷凍自販機を探すと、飲食店の軒先だけでなく、レジャー施設や飲料自販機のあった場所、駐車場などでも見かけるようになった。他にも、スーパーやコンビニ、キャンプ場などにも置かれ始めているという。食品関連の展示会でも、新たな商機につながる製品として提案を行っていた。

拡大した要因の一つは、人手をかけずに無人販売を24時間行えるという点だ。人手不足がさまざまなところで深刻化する中、置いておくだけで商品を販売できるといったメリットが見直され始めているという。また、長期的に見たとき人件費よりも安く済む、購入する人にとっても気を使わなくていいという点も支持を広げた。

販売されている商品も飲料より高価で、多くが800円以上する。サンデン・リテールシステムのコールドチェーン事業部事業企画部の吉田智紀部長は「企画当初は食品メーカーの冷凍食品やコンビニでの活用を考えていて、単価は300円前後を想定していた。実際には1,000円前後でも売れ行きが良く、5,000円の商品でも売れている」と話す。

富士電機の食品流通本部ソリューション部の土屋裕司部長は「自販機を検討している大手企業が販売したい商品はスーパーなどに卸していないもの。高付加価値品か、既存品の大容量商品などになるのでは」と語る。

求められるサービスの水準も上がってきた。一部の自販機オーナーからは「設置だけして、商品の選定から補充までを一括でやってほしい」という声も強まりつつあるようだ。関係者は「飲料と同じ水準のサービスを求められ始めている」と話す。

自販機の販売代理店だけでなく、自販機向けの商品を扱う商社のような取り組みも増えつつある。加えて、飲料と同じようなサービスを提供できるようにして、商品を持たないが導入を検討している事業者の参入をより簡単にして、更なる拡大を狙っている。

冷凍自販機での取り組みを主軸の事業に切り替える会社もある。冷凍自販機を活用した無人販売店「FROZEN24マート」を展開するSOBO(東京都新宿区)は、元々飲食業を展開していたが、コロナ禍を契機に冷凍自販機関連の事業を中心に手掛けている。

益川大平社長は「餃子の専門店を運営していたが、新型コロナの感染拡大で客足が目に見えて減り、11店あった店を4店まで減らした。これが長引いたらまずいという考えもあり、餃子工場の前で冷凍餃子の販売を開始し、(その中で)無人販売ができれば上手くいくのではと思い、サンデン・リテールシステムと一緒に色々と取り組ませてもらった」と振り返る。現在は無人店舗の運営に加え、商品や販売店のプロデュースなども行い、売上は飲食店を運営した時と同等まで伸ばしている。

冷凍自販機を使った実験も行われている。NTT東日本やSOBO、サンデン・リテールシステムは、デジタルサイネージを使ったマーケティング効果の検証を共同で行っている。デジタルサイネージを搭載した2台の「ど冷えもん」を使い、立地や曜日、時間帯、購入者の年代などによる売上の違いを調べた。NTTとしても、自販機を防犯拠点や電波の発信基地に活用できるのではという考えがあるようだ。

〈自販機活用による新たな実験も 一方で問題も〉
冷凍自販機は広がっているが、実際に購入したことのある人はまだ少ない。購入したことのない人に聞くと、「価格に対して、それだけの味を感じられるか不安」「スーパーの方が安い」などの声があった。販売している商品の多くは1,000円近いため、500円以下の商品で攻勢をかける事業者もある。

日清製粉ウェルナでは業務用の商品として、自販機で販売するための冷凍パスタ5品の試験販売を行っている。価格は350~500円ほどで、業務用レンジならば3分以内に調理でき、トレーとフォークをセットにしている。販売先は、社員食堂や工場、シェアオフィス、ビジネスホテル、アミューズメント施設などを想定し、今夏から本格販売を予定する。

ECや冷凍自販機などで弁当商品を販売する日本食生活総研(川崎市中原区)は、現在販売している800円台の商品よりも値ごろ商品で販売拡大を目指している。現在販売している商品を、期間限定で500円にしたところ、売上は伸長したようだ。新事業開発本部長の窪田みゆき氏は「500円台はまだブルーオーシャンで、ニーズもあるのでは」と期待を寄せる。他にも、自販機を使った商品の実験販売を行っている企業もあり、更なる広がりを見せそうだ。

自販機メーカーでは今後、複数台の導入を見込める場所に訴求を強める方針で、閉鎖の進む社員食堂などの代わりに自販機を活用する企業もある。また、スーパーなども人手をかけずに新たな収益につなげられる自販機に注目をしているという企業も一部あるという。

自販機の活用が広がる中で、問題も出てきている。SOBOの益川社長は「多くはまじめに取り組んでいるが、ごく一部のところでは管理が行き届いていないところも確かにある」と明かす。別の店で買った商品を詰め替えて販売しているところや、ちゃんとした冷凍を行っていないという事例もあるようで、「いつか大きな問題を起こす可能性はある」と危機感を表す。自販機メーカーでも問題視しているようで、啓発活動や何らかの認証制度の検討など、対策を進める考えだ。

導入初期には考えられなかった広がりを見せる冷凍自販機。今後も注視したい。

〈冷食日報2023年4月19日付〉