2022年12月のBottle to Bottle用リサイクルPET樹脂の国内供給能力は26.7万t/年の見込み
~原料となる使用済PETボトル確保のため、事業系ルートの回収スキーム整備が進む~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役:水越孝)は、環境対応(エコ)素材の国内メーカー動向を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業の動向、将来展望を明らかにした。
ここでは、日本国内におけるB to B用リサイクルPET樹脂の供給能力の見通しについて、公表する。
日本国内におけるB to B用リサイクルPET樹脂の供給能力
1.市場概況
清涼飲料の主要ブランドオーナー(飲料メーカー)各社では、企業の姿勢として「サステナブル」を打ち出しており、容器包装についても独自の目標を掲げて環境に配慮した設計及び材料の採用を推進している。特に清涼飲料容器の主力であるPETボトルの脱化石由来原料化が課題となっており、ブランドオーナー各社は、これまで主に使用してきたバージンPET樹脂(vPET)から、リサイクルPET樹脂(rPET)やバイオマスPETへ、PETボトルの原料切り替えに積極的に取り組んでいる。
PETボトルのサステナブル化には、使用済みPETボトルを原料に新たなPETボトルを製造するBottle to Bottle(以下 B to B)に代表されるリサイクル材料の使用と、植物由来材料使用の2つの方向がある。しかし、現状では植物由来であるバイオマスPET自体が試作段階であり、商業ベースでの実用化には至っていない状況であることから、各社ともB to Bを主体としたサステナブル化(持続可能な事業の実現)を進めている。
2.注目トピック
B to Bリサイクル事業への参入拡大、2022年から国内におけるB to B用rPETの供給能力が大幅に拡大する見通し
清涼飲料の主要ブランドオーナー各社のサステナブル目標を実現するためには、各社が使用するPETボトルの重量に匹敵するリサイクルPET樹脂(rPET)が必要である。単純に考えれば、使用済PETボトルを100%回収できれば、確実にPETボトルのB to B化は可能ということになる。
しかし、B to Bはただ使用済みPETボトルを使って、新たなPETボトルを成形すれば良いというわけではない。飲料容器材料としての厳しい安全・衛生管理基準をクリアするため、アルカリ洗浄や代理汚染試験などが求められる他、樹脂のIV(Intrinsic Viscosity)値(粘性)をブロー成形可能なレベルに戻すためには再縮合重合設備・技術が必須である。そのため、B to B対応が可能なリサイクラー(リサイクルPET樹脂メーカー)は限られており、2021年12月時点での国内におけるB to B用rPETの供給能力は15万t/年と、将来必要とされるrPET使用量の1/3程度にとどまっていた。
リサイクラー各社は、ブランドオーナー各社のB to B採用拡大の方針を受けて、rPET生産設備の増強や新設を実施・計画している。また、それまで繊維やシート中心に展開していたリサイクラーによるB to Bリサイクル事業への新規参入、商社や流通業者などによる新たなB to Bリサイクラーの立ち上げなどもあり、2022年以降、国内におけるB to B用rPETの供給能力は大幅に拡大する見通しである。
3.将来展望
B to B用リサイクルPET樹脂(rPET)の供給能力が拡大を続ける中で、その原料となる使用済PETボトルをいかに確保するかが問題になる。今後、国内リサイクラー(リサイクルPET樹脂メーカー)の処理能力が国内で販売されるPETボトル販売量を上回る見込みで、国内で回収されたPETボトル由来のフレーク(リサイクルするため、使用済PETボトルを破砕・洗浄・乾燥したもの)は国内での有効利用が優先されるべきとも考えられる。
一方、使用済PETボトルのマーケットを日本国内に限定せず、東アジアからASEAN地域まで拡げて考えることで、PETボトルリサイクルの新たな展開の可能性が出てくるとも考えられる。
国内のPETボトルリサイクルは成熟し、回収率も90%(PETボトルリサイクル推進協議会資料)を超えている中、今後、国内のPETボトル回収量だけでリサイクラーの処理能力を賄うことは難しいとみられる。そこで、ASEAN地域などPETボトル入り飲料が多く販売されているが使用済PETボトルの回収・リサイクルスキームが確立されていない地域に、日本のPETボトルリサイクル技術を投入すれば、国内リサイクラーの処理能力を満たすだけのPETボトル由来のフレークが確保できる可能性も出てくる。
今後、高い品質が求められるB to B及び食品容器向けのリサイクルPET樹脂は国内でのリサイクル循環を維持し、それ以外の産業用途のリサイクルPET樹脂ではアジアリージョナルでのリサイクル体制を構築し、リサイクルPETボトル樹脂を必要な地域の必要な用途に向けて循環させていくことがサーキュラーエコノミーのより一層の進展につながるものと考える。
調査要綱
1.調査期間: 2022年11月~12月 2.調査対象: 環境対応(エコ)素材関連メーカー 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査併用 |
<環境対応(エコ)素材とは> 本調査における環境対応(エコ)素材とは、植物由来のセルロースナノファイバー(CNF)、塗装代替が期待される自動車内装用加飾フィルム及び自動車外装用加飾フィルム、プラスチック使用削減につながる食品・飲料容器(PETボトル、紙カートン、紙カップ、アルミ缶、プラスチック軽量容器)に加え、各種のリサイクル素材(PETボトル、PETフィルム、日用品・化粧品容器・包材、自動車)を指す。 |
<市場に含まれる商品・サービス> Bottle to Bottle(B to B)用リサイクルPET樹脂、バイオマスPET樹脂 |
出典資料について
資料名 | 2022年度版 環境対応(エコ)素材関連市場の現状と展望 ~環境対応素材関連レポート総集編~ |
発刊日 | 2023年02月27日 |
体裁 | A4 158ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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