不動産や事業用資産を持っていると、必ず課せられるのが固定資産税である。ここでは、固定資産の税金がどれだけかかるかについて説明する。
目次
固定資産税とは?
固定資産税は不動産や償却資産の所有者に対して、その固定資産の価格(固定資産税評価額)を元に算定される税金である。なお、課税するのは市町村となっている。
不動産にかかる固定資産税
土地家屋の所有者として、固定資産課税台帳に登録されている人に対して固定資産税がかかる。この場合、不動産にかかる固定資産税評価額は、市町村の担当者が物件を調査した上で設定される(後述)。
償却資産にかかる固定資産税
償却資産の所有者として、土地家屋と同じく固定資産課税台帳に登録されている人に対して固定資産税がかかる。この場合、償却資産にかかる固定資産税評価額は、所有者が市町村に届け出ることによって設定される。
不動産にかかる固定資産税と一緒に請求される都市計画税もお忘れなく
土地や建物の場合は、固定資産税と一緒に都市計画税も請求される。これは、都市計画事業または土地区画整理事業を実施するために、市区町村が課す税金だ。都市計画税と固定資産税は同時期に請求されて支払うことになるので固定資産税の一種と思われている方も多いが、それとは別の税金である。
固定資産税の税率はいくら?
固定資産税、都市計画税については一定の税率が課せられている。
固定資産税の税率はいずれも1.4%
固定資産税の税率は、不動産、償却資産問わず1.4%と定められている。
都市計画税の税率は0.3%が多い
都市計画税の税率は0.3%となっているところが多い。しかし、税率は市町村が各々で設定することが可能だ。例えば、神奈川県藤沢市は税率を0.25%としている。
固定資産税の計算方法は?
ここから先は、不動産にかかる固定資産税・都市計画税について述べる。
不動産にかかる固定資産税
不動産にかかる固定資産税は「課税標準×1.4%」とされる。通常、課税標準は固定資産税評価額をそのまま使うが、軽減される場合もある(後述)。なお、課税標準が土地の場合は30万円未満、建物の場合は20万円未満の場合、固定資産税がかからない。
不動産にかかる都市計画税
不動産にかかる固定資産税は「課税標準×税率(通常0.3%)」とされる。課税標準は固定資産税の場合と同じく、通常は固定資産税評価額をそのまま使うが、軽減される場合もある(後述)。なお、固定資産税がかからない場合は都市計画税もかからない。
固定資産税の計算に必要な資産の評価の仕方 土地と建物で比較
固定資産税の課税基準となる固定資産税評価額は、どのようにして決まるのであろうか。ここでは、評価額の設定について説明する。また、評価額がわからない場合についても述べていく。
土地
土地の評価は総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づき路線価を設定し、その路線価に基づいて計算を行う。東京23区の場合の路線価が公表されているため(http://www.tax.metro.tokyo.jp/map/index.html)、参考にしたい。
なお、評価額がわからない場合は、相続税における金額を参考にするという方法がある。相続税の路線価は公示価格の80%、固定資産税評価額は公示価格の70%であり、この関係を利用して相続税上の評価額を7/8倍して求めるのもひとつの手だ。ただし、この方法はあくまでも目安としていただきたい。
建物
建物の評価については、実際に購入したときの価格では行われない。土地と同じく、総務大臣が定めた固定資産評価基準に基づいて算出される。この固定資産評価基準は、対象となる建物を再び建築する場合にどれだけの費用がかかるのか、建ってから現在までの間にどれだけの価値を落としているか、建物そのもの以外にどれだけの設計管理費や一般管理費を負担しているのかなどの要素を勘案して決定されるものだ。
なお、新築の物件で評価額がわからない場合は、実務家の意見では「固定資産評価額は建築費の50~60%」といわれるため、参考にするといいだろう。
固定資産税の住宅に関する軽減措置5パターン
住宅における固定資産税では、課税標準の金額が安くなる、税額が減額される、といった制度が用意されている。ここでは、その例を紹介する。
1. 住宅用地の特例
人の居住用に提供されている家屋の敷地または併用住宅で、居住部分の面積が全体の4分の1以上である住宅用地は、床面積の最大10倍までの土地(併用住宅については制限あり)の固定資産税および都市計画税における課税標準の軽減措置が設けられている。この措置が適用される場合、課税標準は以下の金額とされる。
固定資産税 | 都市計画税 | |
住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分 | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
上記以外の住宅用地 | 価格×1/3 | 価格×2/3 |
また、東京23区においてはこれとは別に、住宅用地で住宅1戸につき200㎡までの部分については都市計画税が2分の1も減額される制度もある。
2. 新築住宅の場合
新築住宅には、新しく建ってから一定の期間において、建物の固定資産税にかかる課税標準が減額される制度がある(都市計画税はこのような制度がない)。
まず、この制度が適用される要件は以下の通りだ。
住宅の区分 | 対象となる部分 | 面積 |
一戸建て | 床面積 | 50㎡~280㎡ |
併用住宅 | 居住部分の床面積 | 50㎡~280㎡ |
共用住宅(アパートなど) | 独立して区分した居住部分の床面積+共用部分の床面積を按分した面積 | 50㎡(貸家の場合は40㎡)~280㎡ |
区分所有住宅(マンションなど) | 専有部分の居住部分の床面積+共用部分の床面積を按分した面積 | 50㎡(貸家の場合は40㎡)~280㎡ |
また、軽減内容は、以下の通りとなる。
通常の場合 | 3年間固定資産税が半額 |
3階建以上の耐火・準耐火建築物 | 5年間固定資産税が半額 |
認定長期優良住宅 | 5年間固定資産税が半額 |
認定長期優良住宅かつ3階建以上の耐火・準耐火建築物 | 7年間固定資産税が半額 |
長期優良住宅とは、長期にわたり良好な状態で使用するための措置が、その構造および設備に講じられた優良な住宅で、建築や維持保全の計画を作成して市区町村などの所轄官庁に提出し、認定を受けたものを指す。
ただし、3階建て以上の木造住宅で準耐火建築物に該当するものは、「建築確認申請書(写)」および「検査済証(写)」、または「建設住宅性能評価書」を添付した「固定資産税減額申告書」を提出する。
3. バリアフリー改修工事をした場合
バリアフリー改修工事を行った場合、固定資産税が軽減される制度がある。要件は下表の通りである。
住宅の要件 | 新築された日から10年以上経過した住宅であること居住部分の割合が当該家屋の1/2以上あること |
改修工事の要件 | 平成28年4月1日から令和2年3月31日までの間に以下に挙げるバリアフリー改修工事が行われたものであること・廊下の拡幅・階段の勾配の緩和・浴室の改良・便所の改良・手すりの取付け・床の段差の解消・引き戸への取替え・床表面の滑り止め化改修後の住宅の床面積が50㎡~280㎡であること |
居住者の要件 | 以下に挙げる人のうちいずれかが申告時に住んでいること・改修工事完了年の翌年の1月1日における年齢が65歳以上の方・要介護認定または要支援認定を受けている方・障害のある方 |
申告の要件 | 改修工事終了後3ヶ月以内に申告すること |
他の制度との併用 | 耐震基準適合住宅にかかる減額等の適用中でないこと過去にこの制度を受けて固定資産税の減税を受けたことがないこと(この制度は1回しか受けることができない) |
この制度が適用されると、改修工事を行った翌年(改修工事が終わったのが1月1日であればその年)に、建物の床面積100㎡までの部分について固定資産税の3分の1が減額になる。なお、賃貸を行っている部分に関しての減免は行われない。
4. 省エネ改修工事をした場合
住んでいる建物について省エネ改修工事を行った場合にも、以下のように固定資産税が減額される制度がある。
住宅の要件 | 平成20年1月1日以前から所在していること居住部分の割合が当該家屋の2分の1以上あること。 |
改修工事の要件 | 平成20年4月1日から令和2年3月31日までの間に、次の①から④までの工事のうち、①を含む工事を行うこと① 窓の断熱改修工事(二重サッシ化、複層ガラス化など)② 床の断熱改修工事③ 天井の断熱改修工事④ 壁の断熱改修工事改修後の住宅の床面積が50㎡~280㎡であること改修工事に要した費用が50万円を超えていること(なお、補助金を受けた場合は補助金を引いた後の金額で判断する) |
申告の要件 | 改修工事終了後3ヶ月以内に申告することなお、申告の際には以下の書類が必要となる・住民票・増改築等工事証明書・家屋平面図・補助金等の交付がある場合にはその支給決定通知書 |
他の制度との併用 | 耐震基準適合住宅にかかる減額等の適用中でないこと過去にこの制度を受けて固定資産税の減税を受けたことがないこと |
この制度が適用されると、改修工事を行った翌年(改修工事が終わったのが1月1日であればその年)に、建物の床面積120㎡までの部分について固定資産税の3分の1が減額される。
5. 耐震改修工事をした場合
古い家屋を壊して新しい家屋を建て替えるか、耐震工事を行った場合、固定資産税が軽減される制度がある。ここでは、東京23区内について説明する。
1.耐震化のために建て替える場合
古い家屋を取り壊して新しい建物を建てる場合において、この制度の要件は以下の通りである。
古い家屋の要件 | 昭和57年1月1日以前からある家屋を取り壊すこと所在地が東京23区内であること |
新しい住宅の要件 | 平成21年1月2日から令和2年3月31日までの間に新築された家屋であること(ただし、新築したマンションの購入であっても適用されることがある)新築された住宅の居住部分の割合が当該家屋の2分の1以上であること古い家屋を取り壊した日の前後各1年以内に新築された住宅であること東京23区内にあること(古い家屋と同一の場所である必要はない)新築された住宅について、検査済証の交付を受けていること(建設住宅性能評価書で代用できる場合あり) |
所有者の要件 | 取り壊した家屋の所有者と、新築した住宅の所有者が同一であること(新築した住宅の所有者が取り壊した家屋の所有者の親戚で、どちらかの物件で同居していたなど、そうでなくとも認められる場合がある) |
手続きの要件 | 新築した年の翌々年(1月1日新築の場合は翌年)の2月末までに手続きを行うこと |
この制度を利用した場合に認められる軽減内容は、3年間固定資産税の全額免除である。
2.耐震化のための改修を行う場合
古い物件を取り壊さず、耐震化のために回収を行う場合において、この制度の要件は以下の通りである。
古い家屋の要件 | 昭和57年1月1日以前からある家屋であること所在地が東京23区内であること |
改修工事の要件 | 耐震改修後の家屋の居住部分の割合が当該家屋の2分の1以上であること耐震改修に要した費用の額が1戸あたり50万円を超えていること耐震基準に適合した工事である証明書を受けていること |
手続きの要件 | 改修が完了した日から3ヶ月以内に管轄する都税事務所に申請すること |
この制度を利用した場合に認められる軽減内容は、原則1年間の固定資産税の全額免除である。
災害にあった場合の固定資産税軽減措置
災害などにより、土地、家屋が甚大な被害を受けた場合、申請を行えば減免されることがある。東京23区内の場合、要件は以下の通りである。
土地 | 被害面積が当該土地の面積の20%以上であるとき |
家屋 | 損壊・焼失・流失した部分の床面積が家屋の延床面積の20%以上、または浸水が床面以上に達した場合のいずれか |
なお、先述した通り、減免を行うのであれば申請をしなければならないが、減免されるのは申請した日以降に納期限が来るものからとされているため、早めの申請が必要だ。その際には、「り災証明書」など災害の事実がわかるものが必要となる。
償却資産にかかる固定資産税
固定資産税は、土地や家屋だけではなく、機械、器具など事業で用いられる資産であれば、それ以外の資産についても課せられる。この税金は、土地や建物と区別するために「償却資産税」と呼ばれることがある。
課税対象
事業のために使われる有形固定資産が課税対象となり、以下のものは対象とはならない。
自動車税・軽自動車税の課税対象となるべきもの(課税される必要はない) |
無形固定資産・繰延資産 |
10万円未満で取得したもので、その年度のうちに全額経費にしたもの(注1) |
一括償却資産 |
リース契約のうち、いわゆるファイナンス・リースで取得した資産のうち、取得価額が20万円未満のもの(注1) |