矢野経済研究所
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アルミニウム業界では再エネの利用、リサイクル、グリーンアルミの調達に注力

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、アルミニウム業界のカーボンニュートラルに向けた動向を調査し、アルミニウムメーカーやユーザー企業の動向、リサイクルの現況と課題、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

近年、日本をはじめ各国が2050年のカーボンニュートラル達成に向けた具体的な目標を発表しているなか、素材・原料業界では脱炭素に向けた動きが活発化している。

アルミニウムサプライチェーンにおけるCO2排出量のほとんどは新地金製造時に排出されるCO2が占める。しかし、日本ではアルミニウム新地金が製造されておらず、輸入に頼っている。そのため、再生可能エネルギーなど低炭素手法により製造されたグリーンアルミの調達やアルミニウム再生材の利用を進めていくことがサプライチェーン全体でのCO2排出量削減においては効果的である。

こうした背景から、アルミニウム圧延メーカーや製缶・飲料メーカー、建築資材メーカーなどではアルミニウム再生材を多く含む製品を発売しており、自動車メーカーでは廃棄されていた製品や原材料などを新たな資源として循環させるアルミニウムリサイクルのClosed Loopや車体へグリーンアルミ材を採用する動きがみられる。

2.注目トピック

国内アルミニウム業界の資源循環

国内では一般社団法人日本アルミニウム協会が展伸材における循環使用率向上を目標としている。展伸材の原料となるアルミ合金は種類によっては銅(Cu)、マグネシウム(Mg)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn) などの金属が混入しており、現状、水平リサイクル(元の製品と同じものにリサイクルすること)では求められる材料性能が得られず、展伸材の大半が鋳物へとカスケードリサイクル(元の製品の品質より低下した製品へリサイクル)されている。

脱炭素に向けてはリサイクル材の使用率を上げる必要があるが、リサイクル材だけでは製品の品質(強度など)が担保できず、新地金の利用を避けられない場合もある。そのため、企業によってはグリーンアルミの調達の検討を始めている。グリーンアルミはCO2を多く排出する電解工程において太陽光、水力発電などの再生可能エネルギーを使用するもので海外のアルミニウムメーカー(アルミ製錬)の多くが近年ではグリーンアルミの生産体制を整えている状況にある。グリーンアルミの調達については、グリーンアルミへの原料切り替えによるコスト(価格など)の増大が課題とされる。

3.将来展望

2020 年に日本政府がカーボンニュートラル宣言を発したのに続き、2021年から2022 年に多くのアルミニウム関連企業が事業者自らによる温室効果ガスの直接排出であるScope 1と他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出であるScope 2のCO2排出量の削減目標を打ち出している。そのため、具体的な削減計画への落とし込み等は2023 年以降に進んでいくものとみられる。

今後、アルミニウムに携わる企業にはグリーンアルミやアルミニウム再生材の供給量やサプライヤーの選定などを含む戦略的材料調達がより一層求められていくと推察する。

調査要綱



1.調査期間: 2022年11月~2023年1月
2.調査対象: アルミニウムメーカー、建築・建設産業、製缶・飲料産業、自動車産業
3.調査方法: 当社専門調査員による直接面談(オンライン含む)、ならびに文献調査を併用
<アルミニウム業界とは>
本調査におけるアルミニウム業界は、圧延加工ならびに圧延品を製造するアルミニウムメーカーと、アルミニウム材を使用するユーザー産業ならびにアルミニウムリサイクル産業を対象としている。
<市場に含まれる商品・サービス>
アルミニウム材、グリーンアルミ、アルミニウムリサイクル

出典資料について

資料名アルミニウム業界のカーボンニュートラルに向けた動向と展望
発刊日2023年02月14日
体裁A4 144ページ
価格(税込)165,000円 (本体価格 150,000円)

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