矢野経済研究所
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2022年の紙・板紙の製紙メーカー出荷量(国内出荷+輸出)は減少の見込

~紙・板紙の各品種における成長力の差が鮮明に~

株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内外の紙・板紙市場を調査し、製品セグメント別の動向、参入企業動向、将来展望を明らかにした。

1.市場概況

2022年(2022年1月~12月)の紙・板紙の製紙メーカー出荷量(国内出荷+輸出)は2,365万t程度となる見込みである。新型コロナウイルス感染症による行動制限の緩和で経済活動、及び個人消費が限定的ながら正常化に向かい、内需中心に持ち直してきている中、パッケージ用途を中心とした板紙需要は増加するものの、デジタル化などにより紙需要が減少することから、紙・板紙市場全体の出荷量は減少する見込みである。

2.注目トピック

原燃料価格が高騰、収益回復が喫緊の課題に

石油、石炭、天然ガスといった燃料価格が総じて高騰している。特に石炭は、世界有数の産炭国でもあるロシアによるウクライナ侵攻が供給不安に拍車を掛け、急上昇・高止まりの状態となっている。また、原料であるチップ、パルプ、古紙の価格も軒並み上がっている。加えて、世界的なコンテナ不足による海上輸送費の高騰や急激な円安進行がこれら製造コストを大幅に押し上げる状況となっている。

こうした状況から、製紙メーカー各社では、印刷・情報用紙や段ボール原紙、白板紙、包装用紙などほぼ全ての品種において2022年に2度の価格改定を行ったが、価格への転嫁分以上の製造コストの上昇に苦しんでいる。そのため製紙メーカー各社では、印刷・情報用紙においては、2023年に入り3度目の価格改定を実施している。

印刷・情報用紙については、これら一連の価格改定が需要減を加速させる可能性が高い。製紙メーカー各社においては、新価格を浸透させるためにも、今後の需要減を見越した生産能力削減による需給バランスの維持が重要事項となっている。

3.将来展望

2023年(2023年1月~12月)の紙・板紙の製紙メーカー出荷量(国内出荷+輸出)は、前年比1.9%減の2,320万tになると予測する。

段ボール原紙は、国内需要が安定的に推移すれば、世界的な需要の高まりに牽引される形で増加すると考える。主にパッケージ用途の原紙となる白板紙、包装用紙は微減から横ばい基調で推移すると見られるものの、海洋汚染問題に掛かるプラスチックの代替需要を捉えられれば、巻き返してくることも想定される。ティシュペーパーやトイレットペーパー、紙おむつなどの原紙となる衛生用紙もインバウンド(訪日外国人客)需要の回復が期待できるため、堅調に推移すると考える。一方、情報媒体としての紙は、コロナ禍において販促のデジタル化、業務のデジタル化が進行・定着してきている中で、需要構造自体が改善することはないと見る。また価格改定の影響により、更に紙からデジタルへの移行が進むことも想定されることから、2023年の紙・板紙市場全体は減少すると予測する。

調査要綱

1.調査期間: 2022年10月~12月
2.調査対象: 紙パルプメーカー、紙および紙製品等の流通業者、総合商社、新聞社、紙器・紙製品メーカー、その他関連業者
3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)、電話によるヒアリング、郵送アンケート調査ならびに文献調査併用
<紙・板紙市場とは>
本調査における紙市場は新聞用紙や印刷・情報用紙、包装用紙、トイレットペーパーなどの衛生用紙、工業用・家庭用雑種紙を、板紙市場は段ボール原紙や紙器用板紙、雑板紙を対象とする。なお市場規模は製紙メーカー出荷量(国内出荷+輸出)で算出している。
<紙・板紙市場とは>
紙・板紙、製紙原材料(チップ、パルプ、古紙)、製紙用薬品(情報用紙薬品、サイズ剤、表面サイズ剤、紙力増強剤、コーティング顔料・填料、バインダー薬品等)

出典資料について

資料名2023年版 紙パルプ産業白書
発刊日2022年12月29日
体裁B5 1024ページ
価格(税込)143,000円 (本体価格 130,000円)

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