※本記事は、中小企業の経営者から経営、事業承継についてご相談を受ける機会の多い、会計事務所のご担当者に向けた連載記事です。
皆さんこんにちは。株式会社湘南フロンティアで補助金サポーターをしております、藤井と申します。
会計事務所向けに補助金を分かりやすく解説する活動を行っております。
今回は「補助金の需要はこれからどうなる?」というテーマで解説をしていきます。
補助金の需要はこれからどうなる?
結論から言ってしまうと、補助金はこれからもなくなりません!その理由は2つあります。
1.補助金活用を望む人は、世の中にたくさんいる
例えば「お金が欲しいですか?」と聞かれて、「いらない」と答える人は少数派ですよね。同様に「補助金制度はいらないですか?」と聞かれて、はいと答える人も少ないでしょう。
補助金制度は、計画したプロジェクトが補助金の審査を通って採択となれば、その計画を進めるために必要な経費の一部が補助金としてプロジェクト後に交付される制度です。
例えば、総事業費が1000万円のプロジェクトがあって、その半分の補助金が交付されるとします。プロジェクト後、所要の手続きを経て補助金の事務局から500万円が交付されます。
つまり、1000万円かかるプロジェクトを実行するために実質500万円と、費用負担の大幅な軽減につながります。
経営者にとっては、メリットの多い制度であるため、補助金に対する需要は大きいと言えるでしょう。
補助金制度ができる流れ
ここで、補助金制度ができる流れを説明します。
1.国民の要望を政治家が収集する
2.政治家が国民の要望から、政策として提言をまとめる
3.公務員が提言をもとに制度を設計する
4.「補助金」という形で体裁、ルール整備する
5.補助金の募集をかける
補助金を活用することで、自社のプロジェクトの金銭負担を軽減したい、というのが経営者の本心でしょう。その声を政治家が拾い、将来の政策を作るときの参考にしてくれます。
政治家の意見を元に公務員が政策や制度を作るため、新しい補助金が毎年出てくる。このような流れがあるからこそ、補助金は継続的に公募が行われているのです。
2. 国の目標を達成するために補助金制度は作られている
中小企業の経営を支える補助金は、年間数百種類出ているのですが、補助金の種類ごとに「こういう目的で補助金を使ってほしい」という狙いが存在します。
なぜなら、国は民間企業が目標達成に向けた取組みを進めるインセンティブとして、補助金を導入しているからです。
例として、国のIT導入を促進する動きについて説明します。
日本では昔から人口減少、少子高齢化が問題になっています。これが民間企業におよぼす大きな影響の1つが、働き手不足の問題です。
働き手不足を解消するためには、労働者の数を増やさなければなりませんが、国内だけでなく海外からも人材を大量に受け入れない限りは、すぐに問題を解消することはできません。そこで国は、人を増やす方法だけではなく、従業員がより多くの業務をできるように効率化する方法を考えました。
そこで登場するのがITです。ITツールがどんどん普及していくことで、企業は少ない働き手でも、より多くの成果を上げることができます。
つまりITツールの導入により「働き手不足」という社会的課題を解決しようとしているんですね。ただし、ITを使ったことがない中小企業・小規模事業者がいきなりIT導入に資金を投じられるかというと、難しい。そこで補助金の登場です。
こうしてIT導入を普及させるために生まれたのが、IT導入補助金です。
国の補助金制度の課題
補助金制度は非の打ち所がない政策に見えますが、課題があります。
① 政策が分かりづらい
補助金のタイトル、説明文など、国が出す文章・表現が難解で、内容が伝わりにくいという点が挙げられます。
例えば「小規模事業者持続化補助金」という補助金があります。
これがどんな補助金なのかというと、公式では下記のように説明されています。
- 持続的な経営に向けた経営計画に基づく、小規模事業者等の地道な販路開拓等の取り組みや、業務効率化の取り組みを支援するため、それに要する経費の一部を補助いたします。
※商工会議所地区令和元年度・令和3年度補正予算小規模事業者持続化補助金ホームページより抜粋
「持続的な経営」とは何なのか?、「小規模事業者」はどんな企業を指すのか?、「地道な販路開拓」とは何か?など、たくさんの疑問が浮かぶことでしょう。
補助金を申請するためのルールブックである「公募要領」を丁寧に読めば理解できるのですが、一見、何を書いているか、要点を把握できる人はごく限られているでしょう。せっかく良い制度を作っているのに理解しにくい、というのは悩ましいですよね。
② 補助金制度を伝えられる人が少ない
もう一つの課題は、補助金の制度について伝えられる人が少ないということです。
前述の通り、国の政策を正しく理解できる人が少ないので、当然補助金の使い方を説明できる人材は希少です。
例えば、先ほどの小規模事業者持続化補助金であっても、どんな条件をクリアすれば申請できるか、だけでも解説できれば、相手から感謝されるでしょう。
一方で「補助金制度を解説できる人が少ない」ということは「補助金制度を解説できる人の希少価値が高い」とも言えます。
もし補助金について詳しく説明できる、サポートできるなどの優位性があれば、経営者から相談を受けることの多い会計事務所にとっては、顧客拡大の大きなチャンスとなるでしょう。
最後に
今後、補助金のルールをきちんと伝えられる会計事務所が、国の政策を進める上で大事な役割を担っていきます。筆者の意見としては、補助金制度がなくなることはありません。
今から少しずつ勉強して、経営者に補助金制度のポイントをできるように慣れれば、今後の顧問先のサポート領域の拡大や顧客満足度の向上にもつながると考えます。
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著者
岩手大学農学部卒業後、農林水産省入省。
公共事業の入札や施工管理、補助金の制度設計、広報を担当。
官僚時代は補助金説明会の担当をしていたが、補助金を創る側から使う側へ活動の軸足を移したいと思い、独立。
東京商工会議所や銀行の社内勉強会で補助金セミナーを開催。初見の補助金に強く、過去に採択された補助金は12種類を超える。