現代美術家・松山智一氏がキュレーションしたグループ展を東京・六本木で開催、世界的なアーティスト9名の代表作が集結

現代美術家の松山智一氏は、カルロス・ロロン氏との共同キュレーションによるグループ展「ながくとも四十に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ(Die Young, Stay Pretty)」を、東京・六本木のギャラリー「KOTARO NUKAGA」で、3月10日から4月28日まで開催する。開催に先立ち、3月9日に行われた内覧会では、参加アーティスト9名の展示作品が公開されたほか、キュレーションを務めた松山智一氏が展覧会に込めた想いを語った。

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今回のグループ展は、プエルトリコにルーツを持ち、帰属意識や文化的アイデンティティをテーマにシカゴを拠点に活動するアーティスト、カルロス・ロロン氏とニューヨークを拠点にリアリティをもった時代性を表現し活躍するアーティスト、松山智一氏による共同キュレーションの展覧会とのこと。二人の呼びかけによって、フーマ・ババ氏、セイヤー・ゴメス氏、カンディダ・ヘーファー氏、桑田卓郎氏、ジョエル・メスラー氏、マリリン・ミンター氏、エルヴィン・ヴルム氏といったニューヨークのMoMAやヴェネチア・ビエンナーレ等でも展示実績があり、国際的に活躍するアーティストが参加。キュレーションを務めたロロン氏と松山氏を含めた9名のアーティストの作品が展示される。

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展覧会を開催するギャラリー「KOTARO NUKAGA」のKOTARO NUKAGA代表は、「松山氏は、日本のみならず世界中のギャラリーやパブリックスペースで作品を展示をするなど、世界的に注目されている次世代アーティストの一人であり、今後日本を代表して世界の現代アート界を担っていくと思っている。今回のグループ展は、その松山氏がキュレーションを手がけ、普段のギャラリーでは集められないような世界で活躍している現代アーティストの代表作が集結した。現代アートは未来の社会を創造すると同時に、今の社会を鏡のように映すものでもある。ぜひ、最先端の現代アート作品が揃った展覧会に足を運んでほしい」と、一人でも多くの人が世界で活躍する現代アーティストの世界観に触れることを願っていた。

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グループ展のコンセプトについて、松山智一氏は、「私はニューヨークのブルックリンを拠点に約20年活動を続けてきた。ニューヨークは誰でも受け入れるが、その一方で非常に排他的なところでもある。それ故に、多様な価値観やモノの見方、問題意識を持って作品に取り組んでいるアーティストたちと出会うことができた。通常、展覧会のキュレーターは、プロの目線からテーマを作り、そこに作家や作品をはめ込んで紹介していく。しかし、今回は、僕たちアーティストがどのように表現を追求し、それぞれの作家がどのように今を捉えているのかのプロセスと眼差しを共有したいと思い、国際色あふれる9名のアーティストを集めた」と、アーティストの目線からキュレーションを行ったと話す。

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「当初、グループ展のタイトルは、時代を反映するアート作品や、同時代を生きるアーティスト同士が共鳴し合い、互いを映し出すという意味で『リフレクション』にしようと考えていた。ただ、それをそのままタイトルにすることにつまらなさを感じた。作家にとって表現とは変わりゆく今を捉えることであり、作品をつくることは時間軸を超え、生死という無常の概念にあらがう行為ともいえる。これは、徒然草『長くとも四十に足らぬほどにて死なんこそ、めやすかるべけれ』で詠まれた無常観と根底で相通ずるものがあると感じ、この句をタイトルに選んだ」と、展覧会のタイトルへのこだわりを語ってくれた。

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松山氏と共同でキュレーターを務めたカルロス・ロロン氏は、「かけがえのない友人である松山氏が選んだ同展のタイトルを英訳するのに、私は頭を悩ませた。英文タイトル(Die Young, Stay Pretty)は、歌手デボラ・ハリーとギタリストのクリス・スタインが結成し、70年代から活躍するアメリカのロックバンド、ブロンディが作った同名の曲(1979年リリース)から引用している。この曲は、美しくいることへのプレッシャーや、期待、価値観というものが商品化される今日の文化において、今なお意味を持つ。歌詞にある、『永遠に若くあるためには、若くして死に、人々の心に残るしかない。それは人間の性の奇妙さだ』という死生観は、中世の日本人のみに流れるのではなく、時代や文化を超えて、常に人の生き様に投げかけられる問いなのかもしれない」とコメントを寄せている。

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ロロン氏と松山氏、2名のアーティストの根底には、非西洋の文脈から生まれる美学による「美」というものに向き合っているという共通点がある。今回のグループ展は、美術の歴史上、常に検討されてきた「美(美しさ)」という概念とその概念が内包する多様性、そして美は普遍的ではないということついてロロン氏と松山氏の対話の積み重ねから企画された展覧会となっている。

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では、グループ展に参加したアーティストを紹介しよう。パキスタンをルーツとするフーマ・ババ氏は、長きにわたり、現代の人物像の奇妙さをあらゆる美術史的参照を基にした折衷的なオブジェクト、ドローイングなどの制作によって表現してきた。古代と現代の両方の文化的ソースから借用したハイブリッドな形は、哀愁とユーモアを醸し出す。

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セイヤー・ゴメス氏は、現代における社会とわたしたち個人とのコミュニケーションの間における曖昧な交流の性質について、フォトリアリスティックなペインティング形式や、だまし絵、エアブラシ、ハリウッドのセットペインティング手法などコンセプチュアルな実践を通して言及している。

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90年代以降のドイツ写真のみならず、現代写真をけん引してきたベッヒャー派の一人であるカンディダ・ヘーファー氏は、建築物のインテリアを緻密に構成した大判カラー写真で知られている。パリのルーヴル美術館など世界各地の有力な美術館で展示を行い、2002年のドクメンタ11、2003年のヴェネツィア・ビエンナーレのドイツ代表にも選ばれ、国際的な評価を得ているという。

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桑田卓郎氏は、岐阜県多治見市を拠点に活動。茶の湯において不完全な美や自然の造形をたたえる「わびさび」の美学を受け継ぎ、環境、歴史、自然、時間との対話から伝統と現代を融合させ、陶芸の新たな可能性を広げている。なかでも焼成が不十分のため釉薬が溶け切れず鮫肌状に縮れた「梅華皮(かいらぎ)」や陶土に含まれた小粒の長石などが器面に現われる「石爆(いしはぜ)」といった日本の伝統的な陶芸技法を再解釈し、独自の表現にしてきたことで知られる。

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ジョエル・メスラー氏は、自身の幼少期の記憶や人生経験を基にした私的なイメージをユーモアあふれるタッチでレンダリングしなおし、人間の普遍的な意識の要素へと変換する。1980年代のロサンゼルスを思い起こさせるメスラーの作品は、大胆な色彩、様式化されたパターン、鮮やかな具象にアーティスト独自のカリグラフが組み合わされた特徴的なスタイルとなっている。

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マリリン・ミンター氏は、ファッション業界において商品化され、消費される性と身体を通して「美」というものについて批判的な視点に立ち、問題意識を共有する作品を制作。写真と絵画の両方のスキルを活用し、ハイファッション広告に通じる映像言語、艶やかでハイパーリアリスティックな表現によって、現代の美の概念を調査している。

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エルヴィン・ヴルム氏は、日常のオブジェクトを擬人化し、太らせたりするユーモラスな作品で、彫刻の現代的な概念を拡張することでよく知られるアーティスト。2017年の第57回ヴェネツィア・ビエンナーレへ出展、ポンピドゥーセンター、ニューヨーク近代美術館、グッゲンハイム美術館、テートなど世界の名だたる美術館での展覧会へ参加している。

[開催概要]
展覧会名:ながくとも四十に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ(Die Young, Stay Pretty)
会期:3月10日(金)~4月28日(金)
場所:KOATRO NUKAGA 六本木
(東京都港区六本木6-6-9 ピラミデビル2F) 開廊時間:11:00~18:00 ※日月祝休廊

ながくとも四十に足らぬほどにて死なんこそめやすかるべけれ(Die Young, Stay Pretty)公式サイト=https://kotaronukaga.com/