新規開拓が必要だとわかってはいても、具体的にどのような流れで取り組めばいいのか、頭を悩ませている経営者は多い。特に最近では、いわゆる飛び込み営業やテレアポだけでなく、SNSやアプリを使うなど新規開拓の方法が多様化している。新規開拓の流れを知り、自社の商品やサービスに合った方法で新規顧客を開拓することで、コストを抑えつつ売上を最大化できるだろう。
目次
なぜ企業は新規開拓すべきなのか?
やみくもに新規開拓に取り組んでも、良い結果につながらないことがある。何事もそうだが、新規開拓でも、最初に目的を整理しておくことが大切だ。自社にとって新規開拓にどんな意味や目的があるか、新規開拓で何を得たいかを明確にした上で取り組むようにしたい。
新規開拓とは
新規開拓とは、これまで取引のなかった新しい顧客にアプローチして、商品やサービスを届けることだ。飛び込み営業や電話営業だけでなく、勉強会や広告など、新規開拓につながる取り組みは多岐にわたる。
新規開拓は企業の存続につながる
新規開拓が必要だと理解はしていても、なかなか新規開拓できていなかったり、具体的な行動につながっていなかったりする中小企業は多い。既存顧客とのつながりだけで事業が回っていると、危機感を抱きにくく、新規開拓が必要と言いつつ、実際には必要性を感じていないというケースも少なくない。
しかし、このような企業は変化に弱く、画期的な技術革新や、コロナショックのような社会的できごとによって、あっけなく赤字に転落し、倒産してしまうことがある。そうでなくとも、時代の変化に対応できず、ゆるやかに売上が低迷し、資金が底を尽きることにもなりかねない。
日頃から地道に新規開拓を続けることは、企業を不測の事態から守り、永く存続させることにつながるのだ。
中小企業が効果的に新規開拓する5ステップ
「新規開拓しろ!」と部下にはっぱをかけるだけでは、報告するための場当たり的な営業になりかねない。まずは新規開拓の目的を従業員と共有し、戦略的に取り組むことが大切だ。続いては、新規開拓の流れを具体的に解説していく。
ステップ1.新規開拓の目的を従業員に伝える
まず、新規開拓に取り組む目的を、自分なりの言葉で経営者が従業員に伝えることが大切だ。
目的の例を挙げると、コロナショックのような不測の事態でも揺らぐことのない強い企業にしたいことや、それが地域に愛される商品やサービス、働いてくれる従業員を守ることにつながること、自分が創業した会社、先代から引き継いだ会社を守りたい、存続させたいと願っていることなどである。
従業員の中にも「なぜ新規開拓が必要なの?」「今のままではいけないの?」という素朴な疑問がある。経営者がその問いに答え、従業員が意欲的に新規開拓に取り組めるようにすることが大切だ。
ステップ2.ターゲットを決める
次に、新規開拓のターゲットを決め、新規開拓リストを作成する。
新規開拓リストを作るにあたり、まずは既存顧客の分析が重要だ。ここは経営者1人で行うのではなく、従業員も巻き込んで、既存顧客と接している従業員、実際に営業を行う従業員の声を大切に決めていくことが望ましい。
たとえば、既存顧客で30~40代の年齢層がボリュームゾーンの場合、工夫次第で10~20代にも商品を届けられるかもしれない。ほかにも、既存顧客と同じ業種の企業にエリアを広げてアプローチすることで、新規顧客の獲得につながることもあるだろう。
年齢層やエリアを絞ることで、効果的にアプローチできる。
ステップ3.新規開拓の方法を決める
続いては、ターゲットに合った新規開拓の方法を決める。かつては飛び込み営業やテレアポが主流だったが、現在はSNSやアプリなど、さまざまな方法がある。新規開拓の方法は次の見出しで詳しく紹介するので、自社の商品やサービスの特性を踏まえて選んでほしい。
ステップ4.実行に移す
ターゲットや新規開拓の方法が決まったら、実行フェーズに移る。従業員の担当を決め、結果を全体で管理、共有する仕組みを作っておくことが望ましい。
たとえば、スプレッドシートで顧客リストを共有し、連絡先や担当者、初回接触日、受注日などを一覧で管理するといった方法がある。必要に応じて新規開拓ミーティングを開催し、進捗や成果について確認、共有する場をつくるのもいいだろう。
ここで大切なのは、従業員のモチベーションを保つことだ。「できないと怒られる」ではなく「できたら褒められる」という空気をうまく作り出し、従業員が新規開拓に意欲的に取り組めるよう配慮したい。
ステップ5.効果検証をする
月に一度、四半期に一度などタイミングを区切って、新規開拓の効果検証をすることも大切だ。必要に応じて、ターゲットや新規開拓の方法も見直すようにしたい。また、人員やツールなど必要なリソースが不足しているときは、採用や人材育成、ツールの整備を同時進行で行う必要があるかもしれない。
営業による新規開拓の方3つ
新規開拓の方法は多岐にわたるため、自社の商品やサービス、ターゲットとなる顧客に合わせて効果的な方法を選ぶことが大切だ。まず、一般的に新規開拓としてイメージされやすい、営業による新規開拓の方法を3つ紹介する。
飛び込み営業
飛び込み営業は、アポなしで直接訪問する方法だ。繰り返し訪問することで熱意が伝わり、商談につながりやすくなる。一方で、飛び込み営業を迷惑ととらえる風潮も強まっているため、イメージ悪化につながらないよう注意が必要だ。
電話営業(テレアポ)
電話でアポをとり営業する方法なら、飛び込み営業より労力や移動時間などを削減でき、効率的に商談につなげられる。一方で、電話をすぐに切られるなど、相手にとっても断りやすいのがデメリットだ。
メール営業
公式ホームページに掲載されているメールアドレスや「お問い合わせ」のメールフォームから営業する方法もある。飛び込み営業や電話営業より労力を削減できるものの、電話営業以上に相手の反応を得にくいのがデメリットだ。
発信による新規開拓の方5つ
続いては、発信による新規開拓の方法を5つ紹介する。発信する内容や媒体によっては大きな反響を得ることもでき、今の時代に合った新規開拓の方法といえるだろう。まだ取り組んでいない企業は、ぜひ積極的に活用していきたい。
勉強会・セミナー
勉強会やセミナーを開催して見込客を集め、セミナー後に営業するのも効果的な方法だ。「個別相談会」といった形でブースを用意すると、参加者も相談しやすくなる。新規開拓を目的とするなら、参加費は無料から数千円程度でも構わない。
展示会・イベント
展示会やイベントを企画して見込客を集め、商品やサービスを実際に見てもらったうえで営業するのも効果的な方法だ。参加者が多くなる場合、受付やアンケートなどで連絡先をきちんと収集し、後日テレアポなど営業につなげられるようにしておくことが大切だ。
ホームページ・オウンドメディア
最近では、商品やサービスを選ぶときにまずは検索するという人が圧倒的に多い。自社の公式ホームページの情報を充実させることで、ホームページを通じて顧客から連絡をもらえることがある。初期投資は必要だが、うまくはまれば労力を最小限に抑えて継続的に顧客を獲得できる優れた手法だ。
また、ホームページとは別にオウンドメディアを運営して新規開拓につなげる方法もある。オウンドメディアとは、見込客を集めるのに役立つ自社ブログや情報発信サイトのことだ。オウンドメディアでSEO対策を施し、検索結果で上位表示されるようになれば、検索ユーザーを自社の商品やサービスに誘導することも可能となる。
SNS・動画配信
SNSや動画配信プラットフォームを通じて自社の情報を発信し、見込客を集める方法もある。FacebookやInstagram、TikTok、YouTubeなどを活用することで、自然な形で自社の商品やサービスに興味を持ってもらえる。
また、インフルエンサーに企業案件として商品やサービスの紹介を依頼する方法もある。
DM
DM(ダイレクトメール・メッセージ)とは一般的に、宣伝を目的として個人宛にメッセージを一斉送信する方法を指す。従来のメール以外に、LINEの企業アカウントを使う方法も人気だ。LINEのDMは開封率が高いことが知られている。
広告による新規開拓の方法3つ
続いては、広告による新規開拓の方法を3つ紹介する。すぐに成果につながらなくとも、広告によって認知度が向上すれば、長い目でみて見込客が増えることになる。
ネット広告
GoogleやYahoo!などの検索エンジンに広告を出すことで、特定のKWで検索したときのトップの広告枠に自社を表示させることができる。また、FacebookやInstagramなどのSNS広告では、年齢やエリアを細かく設定して広告を表示させることも可能だ。
ネット広告では、リターゲティングといって、一度広告をクリックしたユーザーに優先的に広告を表示し繰り返しアプローチすることもできる。
ポスティング・雑誌広告
チラシのポスティングや雑誌掲載など紙媒体を使った広告も、ターゲットとする年齢層によっては相変わらず効果的だ。必要に応じてエリアを変更するなど、予算の適正化に努めることが大切である。
屋外広告
看板や駅広告、電柱広告などの屋外広告も認知度向上に役立つ。しかし、メンテナンスされていないと、かえってマイナスイメージになることに注意したい。また、来店アンケートで来店経緯を尋ね、不要な屋外広告を撤去するのも予算の適正化につながるだろう。
つながりによる新規開拓の方2つ
続いては、つながりを活用して新規開拓する方法を2つ紹介する。
ビジネスマッチングアプリ
ビジネスマッチングアプリとは、人脈づくりに役立つマッチングアプリのことだ。経営者、サラリーマン、フリーランスなどさまざまな人が登録しており、プロフィールで業種や専門性を確認することもできる。新規開拓はもちろん、採用や業務委託につながることもある。
既存顧客からの紹介
既存顧客に紹介を頼むことで、新規顧客と接点を持てることもある。紹介のいいところは、紹介者のバックアップが見込めるため、成約率が高いことだ。紹介によって新規開拓を増やすには、既存顧客の満足度を高めることが重要となる。
中小企業が新規開拓を成功させるコツ
続いて、中小企業が新規開拓を成功させるコツを2つ紹介する。
顧客の声を聞く
既存顧客からのヒアリングが、新規開拓の成功につながることがある。
自社の商品やサービスの良さというのは、意外と社内では気づきにくいものだ。なぜ、競合他社でなく自社を選んでくれたのか、顧客の意見を聞くことで、客観的な自社の商品やサービスの強みを知ることができる。
営業担当者からヒアリングしたり、顧客アンケートを実施したりして、顧客の声を集めると、新規開拓につながるヒントが隠れているかもしれない。
従業員の努力を評価する
従業員が意欲的に新規開拓に取り組めるよう、従業員の努力を評価する仕組みを作ることも大切だ。
評価というと昇進や昇給をイメージしがちだが、表彰や社内報への掲載といった形で報いることもできる。また、目標達成した部署は研修旅行に行けるようにすれば、チームとしての結束力も高まるかもしれない。
新規開拓の注意点
商品やサービスを提供する十分な体制がないままに新規開拓を推進してしまうと、商品やサービスの品質が低下し、業績悪化につながる恐れがある。
マンパワーや生産個数などを考慮して新規開拓を進めるとともに、必要に応じて人員増強や設備投資を行うことも検討したい。また、顧客アンケートなどを通じて、品質低下が起きたときに気づきやすくする仕組みを導入しておくことも大切だ。
新規開拓は事業の永続のために必要不可欠
業績が横ばいで特に困りごとや問題がない場合、経営者も従業員も、なかなか新規開拓に前向きに取り組めないかもしれない。
しかし、強力な競合の登場や商品の不具合などをきっかけに、一気に顧客離れが起こるリスクはどんな企業も抱えている。不測の事態が起きたとき、顧客を自ら獲得する力のない企業は、事業を存続させることができなくなってしまう。
そうならないために、大きな経営課題に直面していないときこそ、地道に新規開拓を続け、顧客獲得のノウハウを蓄積していくことが大切だ。
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文・木崎涼