2022年のスポーツアパレル国内市場規模を前年比106.7%の5,841億8,000万円の見込み
~ゴルフウエア、アウトドアウエアが市場全体の成長に大きく寄与~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は国内スポーツアパレル市場を調査し、競技カテゴリー別の市場規模や、参入メーカーや流通の動向、将来展望を明らかにした。
スポーツアパレル市場規模推移・予測
1.市場概況
2022年のスポーツアパレル国内市場規模は、メーカー出荷金額ベースで前年比106.7%の5,841億8,000万円を見込む。
市場の成長要因としては主に以下3つとなる。
①社会環境も含めたコロナ禍からの「回復」
2022年3月にまん延防止等重点措置が終了後、国民に行動制限を要請する政府の措置は出されていない。それ以降、競技系スポーツでは学校部活動をはじめとした多くの層においてコロナ禍前に近い形で活動ができたほか、試合数や大会数も前年から増えている。こうした運動機会の増加により、スポーツアパレルの需要は前年と比較して大きく回復した。また、自宅から外出する機会が増えて、消費者の着飾る必要性やおしゃれをしたいという意欲も高まったことにより、ライフスタイルウエアをはじめとしたファッション性の高いアイテムに対する需要も増大している。
②コロナ禍をきっかけとした需要の「拡大」
コロナ禍以後、ゴルフはいわゆる「3密」にあたらない屋外型のアクティビティとして認知された。そのため、若年層を中心とした新規ゴルファーやゴルフを再び始めた休眠復活ゴルファーが増加している。プレイヤー人口が増加するなかで、企業の新規参入も増えている。これまでのゴルフウエアのカテゴリーの枠や常識に囚われないブランド、そうしたテイストを持つアイテムが提案されており、商品面の魅力向上も相まって、ゴルフウエア市場はコロナ禍前と比較しても成長を遂げる見込みである。
③ライフスタイル需要の取り込みの「拡大」
ライフスタイル需要を取り込んで成長しているのがアウトドアウエアである。アウトドアブランドの中でも特に認知度が高い「ザ・ノース・フェイス(TNF)」や「パタゴニア」など有力ブランドは、街中で着るカジュアルファッションとしても人気が高い。こうしたブランドのアイテムは従来のアウトドア専門店やスポーツ量販店だけでなく、他小売業態にまで広がりを見せており、セレクトショップでもアウトドアブランドの商品を提案したり、ストア別注(特別に注文する)モデルを企画するなどしている。こうした消費者との接点増加がさらにブランド認知を高めるという好循環を生み、アウトドアウエアは普段着として購入する消費者が増加し、市場は拡大を続けている。
特に、もともと規模の大きいゴルフウエア、アウトドアウエアの成長がマーケット全体の成長に大きく寄与する見込みである。
2.注目トピック
実用性の高いスポーツアパレルが人気に
スポーツアパレル市場のアイテムは、スポーツシーンのための競技系カテゴリーのウエアが基本である。しかし、近年、それだけでは手に取られづらいスポーツシーンのためのアイテムであっても、多様な意味で実用性の高いアイテムの需要が大きくなっている。
そのひとつが「スポーツシーン以外でも着用可能なこと」である。
この数年の売れ筋アイテムとして名前が挙がるハーフパンツについても、ストレッチ性の高さや肌触りの良さによって自宅でリラックスして着用できる着心地の良さ、さらにそのまま外出もできるデザインであることなど幅広いシーンで着用可能となる使い勝手の良さが好調につながっているという。また、プラクティスシャツ(サッカーなどの練習着)についても、運動時だけでなく移動時など日常用としても着用しやすいデザイン性を備えたウエアが人気となっている。
もうひとつは、「気温変動に対応しやすいアイテムであること」だ。近年、春夏シーズンであれば暑くなったら薄手のアイテムを、秋冬シーズンであれば気温が本格的に下がったら厚手のアイテムを購入する「当用買い」をする消費者の多さが指摘される。その一方、1日の中で気温差がある日も珍しくないため、スポーツシーンに使えるだけでなく外出先でも脱ぎ着がしやすいクロス素材のパーカーなど、気温の変化に対応できるアイテムの需要が大きかったという声も聞かれている。
このように、シーンや場所の違いを気にせずシームレスに着用できたり、気候面の変動に対応できたりなど、実用性の高いスポーツアパレルのアイテムを購入する消費者が多くなっている。
3.将来展望
2023年のスポーツアパレル国内市場規模を、メーカー出荷金額ベースで前年比104.9%の6,125億8,000万円と予測する。
カテゴリー別にみると、ライフスタイルウエアが前年比108.7%、アウトドアウエアが同106.0%と高く、日常用としての需要が大きいカテゴリーほど成長率が高くなる見通しである。政府が行動制限などを行わない方針であることから、日常の外出や旅行などが活発化すると見込まれることが要因となる。
一方、競技系カテゴリーのウェアについては、プレー頻度や時間などの活動レベルは一層の回復が期待できるものの、中学高校の部活動など若年層の需要に依存するカテゴリーでは少子化の影響も大きいため、市場規模は伸び悩む可能性がある。
調査要綱
1.調査期間: 2022年9月~12月 2.調査対象: スポーツ関連企業(メーカー・卸売業・小売業) 3.調査方法: スポーツメーカーへのアンケート調査、ならびに当社専門研究員による直接面談(オンライン含む)併用 |
<スポーツアパレル市場とは> 本調査におけるスポーツアパレル市場とは、トレーニングウエア、ライフスタイルウエア、ゴルフウエア、アウトドアウエア、サッカー・フットサルウエア、野球・ソフトボールウエア、テニスウエア、陸上競技・ランニングウエア、スイムウエア、バスケットボールウエア、スキー・スノーボードウエア、その他ウエアの12カテゴリーをさす。 なおその他ウエアには、バレーボールウエア、柔道着、剣道着、空手着、ラグビーウエア、卓球ウエア等が含まれる。 |
<市場に含まれる商品・サービス> 商品(トレーニングウエア、ライフスタイルウエア、ゴルフウエア、アウトドアウエア、サッカー・フットサルウエア、野球・ソフトボールウエア、テニスウエア、陸上競技・ランニングウエア、スイムウエア、バスケットボールウエア、スキー・スノーボードウエア、その他ウエア)、スポーツアパレルブランドランキング、小売業態別出荷金額(スポーツ量販店、専門店、直営店、百貨店、eコマース、直営アウトレット店、カジュアル衣料店、施設・インショップ) |
出典資料について
資料名 | 2023年版 スポーツアパレル市場動向調査 |
発刊日 | 2022年12月28日 |
体裁 | A4 443ページ |
価格(税込) | 165,000円 (本体価格 150,000円) |
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