石原氏

日本M&Aセンターが行うM&A大学。 その卒業生として最前線で活躍するOB・OGバンカーに気になる情報をインタビュー。

今回は群馬銀行 コンサルティング営業部 石原祐介さんにインタビューした。

M&A大学とは
日本M&Aセンターが協業する地域金融機関に向けて行う、研修・出向制度。M&A大学入学者(地銀からの出向者)はM&Aシニアエキスパート研修(JMAC)、評価・概要書研修などの座学と日本M&AセンターとのコンサルタントによるOJTなどを経て、自ら顧客への提案からM&Aの成約、契約の締結までを完結できるM&Aコンサルタントとなることを目指す。

まずは、入行から現在までのご経歴を教えてください。

石原:2014年4月に入行、前橋市内にある広瀬支店で基礎業務を3年弱経験し、その後太田市の強戸支店に異動しリテール領域を主に担当しておりました。入行時より法人業務に携わりたいと考えておりましたので、その後所沢支店では希望が叶い法人渉外業務を3年間経験しました。その後2022年4月より半年間日本M&Aセンターへ出向し、2022年10月より現在のコンサルティング営業部に在籍しM&A業務に従事しております。

M&Aチームはご自身で希望を出されたのですか?

石原:はい、毎年人事に提出する異動先の希望として、M&Aチームと事業承継チームを希望しておりました。

事業承継・M&A業務に関心をお持ちになったきっかけは何かあったのでしょうか?

石原:所沢支店に在籍していた際に、お客様から社内承継の相談を受け本部に連携して対応いただきました。ホールディングスを作る承継スキームだったのですが、本部の専門チームの方々の提案を横で見させていただいたこともあり、専門的な知識と経験を活かして顧客の課題解決に携われる業務はシンプルにかっこいいなと感じ、難しい領域ではあるもののいつか自分もそういった専門性を身につけたいと考えるようになりました。

希望が叶いM&Aチームへの異動、同時にいきなり出向することになったわけですが、出向した際の日本M&Aセンターの印象はいかがでしたか?

石原:出向と聞いて、会社のHPや今回取材頂いているBANKERSの記事を見つけて全部読みました(笑)
日本M&Aセンターにはバックグラウンドの異なる経歴を持つ方が多くいましたが、1つの案件を成約させるために、現場のコンサルタントと社内にいる専門家の方々が1つのチームとなり一体感をもって取り組まれ、地道に論点を潰していく姿勢が印象的でした。私自身もその一員として、チーム一丸となって業務を進めていく経験をさせていただきました。

出向期間の中で、特に印象に残っているディールについて教えてください。

石原:やはり初めて携わった案件ですね。対象会社はHPもなく資料も全く揃っていない中で担当することになったのですが、無事に案件化を終えてマッチングを開始し、ニッチな事業内容の案件でもあったためマッチングには苦戦するだろうと想像していたのですが、候補先が3社出てきて順調にTOP面談まで進みました。 結局双方の意向が合わずに成約までは至らなかったのですが、実際に譲受け候補企業との面談で初めて出てくる譲渡企業オーナーの本音もあり、相手に寄り添いながらいかに上手くディールを進めていくM&Aの難しさを感じ大変勉強になった案件でした。

出向期間中に親しくなった他行のご出向者も多くいらっしゃると思いますが、印象に残っていることはありますか?

石原:私が出向した半年は比較的コロナ禍も落ち着いていたこともあり、各地に行かせて頂き、他拠点の出向者と接する機会を多く持てたので大変ありがたかったです。特に親しくなったメンバーとは今も仲良くさせて頂いております。普通であれば会うことが出来ない方々と一緒の時間を過ごすことができたのは、大変貴重な経験であり皆さんとのご縁も感じます。楽しかった思い出はたくさんありますが、日常の何気ない会話を通して他行の話を聞くことで、自行の立ち位置や進んでいること・課題等を改めて認識することができた貴重な経験だったと感じます。

石原氏

充実した出向期間を過ごされたと思いますが、反対に、もっと出向期間に経験しておくべきだったと感じることがあれば教えてください。

石原:譲渡企業の開拓やディール対応をメインにしていたため、譲受側企業への提案にももっと同行すべきだったと感じます。譲受企業が気にする点≒譲渡企業の案件における論点整理にも繋がるため、強いて言えばそういった視点をもっと持つべきだったと感じております。

それではここからは、現在の貴社におけるM&A業務の取り組みについてお聞かせください。

現在M&Aチームは何名が在籍されていらっしゃいますか?

石原: 管理職を含めた9名体制で、プレイヤーは受託担当とディール担当に分かれており、私は主にディール対応を行っております。プレイヤーの中の1名は現在日本M&Aセンターから出向いただいている方で、出向に来ていただいてから譲渡・譲受けを希望する企業の受託数が大幅に伸びています。受託だけではなくディール対応の経験も豊富な方ですので、身近にこういった方がいるのはとても頼もしいです。

充実の体制ですね。貴行内でM&Aをより推進していくために、注力していきたいと考えていることはありますか?

石原:2021年度より新たにコンサルティング営業部の中の「推進班」という組織を増員したので、その方々との連携を強化していきたいです。推進班の方は事業承継・M&Aを含むコンサルティング領域の各分野について支店の窓口となる方々で、年齢は20代後半~30代前半が多く、1人あたり4~5つの支店を担当・常駐しております。これまでも本部から各支店に対する勉強会を実施してきましたが、支店と本部ではどうしても一定の距離が生まれてしまうという課題がありました。支店と接点を持つ頻度が高い推進班がいることで支店から情報も拾いやすくなりますので、推進班の方々にM&Aに対する理解を深めて頂くような勉強会を実施したり、M&Aチームのみが持っている情報を共有することで具体的な動きに繋がりやすくなるような工夫を今後検討していきたいと考えています。

石原氏

貴行は早くからM&A業務に取り組まれているかと思いますが、今後推進していくうえでの課題などあればお聞かせください。

石原:事業承継・M&Aに対する顧客の関心は年々高まっており、ありがたいことに支店から本部に共有される情報量・ご契約案件共に増えております。しかしながら、成約を目指して案件対応を進めながら同時に支店からの情報を精査して新規顧客との面談を積み重ねていく必要があり、そのバランスを取ることが難しいなと感じます。日々試行錯誤しながら組織内での役割分担等を進めていますが、案件によっては日本M&Aセンター等外部の力も借りながらベストなお相手を見つけるためのお手伝いをしていきたいです。
支店からの情報という点では譲受企業からのニーズを特に多くいただいておりますが、変化する顧客のニーズを本部としてしっかりと管理・蓄積してマッチングに活かしていく必要性も高まっていると感じます。当行でも株式会社バトンズが提供する金融機関専用のM&A支援システムB MASSの導入が決まりましたので、B MASSを有効活用して活動を効率化していきたいです。

日々顧客対応をされる中で、最近感じる変化はありますか?

石原:後継者がいないからM&Aを検討するのではなく、成長戦略の1つの選択肢としてM&Aを検討されている企業は圧倒的に増えてきていると感じます。私たちにとってはありがたいことでもありますが、お会いする前からM&Aに関する情報をご自身で調べられて面談時には基本的な知識を既にお持ちというケースも多いので、その前提に立ち、より専門的な立場からアドバイスをしていく必要性があります。特に譲受企業に対しては、過去の同業の事例を紹介しつつ仮にM&Aを実行した場合に得られる利益等をイメージしていただけるよう仮説を立てて、一歩踏み込んだ提案していく必要があると感じております。

貴重なお話をありがとうございました。
最後に、石原さんの今後の目標を教えてください。

石原:当行グループのパーパスは「私たちは『つなぐ』力で地域の未来をつむぎます」というものなのですが、まさに事業承継・M&A業務のことを表現しているパーパスであると理解しています。今後私自身も経験や知識を増やしていき、地元に必要な会社を前向きな戦略をお持ちの企業に繋いでいくお手伝いをすることで地域を守り発展に貢献するような仕事をしていきたいです。

石原氏