長引く新型コロナウイルス禍も徐々に正常化の兆しを見せ始め、企業活動も活発化してきている。景気回復というと、基本的には東京をはじめとした都市部にある大企業が先に実感し、追って地方の中小企業に波及しがちだ。地方企業はこの時間差を利用して、次なる反転攻勢に向けて社内外の態勢を整えておきたい。

目次

  1. 地方企業が抱えている課題
  2. 収益力を高めるために必要な視点
  3. 「販売先を拡大」という選択肢
    1. 新規事業を展開するよりリスクが少なめ
    2. 今まで開拓していない販路の獲得を目指す
  4. 「新規事業を展開」するポイントは?
    1. 自社の強みをうまく生かせるか確認
    2. 投資コストに見合っているか入念に検討を
    3. 経営者自身の「弱さ」も認め、新しい感覚を導入する必要あり
  5. 売上の向上ではなく「コストを減らす」という視点
    1. 売上とコストの関係を改めて考える
    2. コスト削減計画の作り方は?
  6. コンサルを使うべきか否か、も検討を
  7. 地方特有のメリットも生かして
地方企業が儲ける方法は? 販路、新規事業など手法を解説
(画像=LALAKA/stock.adobe.com)

地方企業が抱えている課題

地方へ波及するのに時間差があるのは、都市部は企業活動が盛んになる条件がそろっているからだ。それでは都市部と地方では何が異なるのか。

1つには、企業の大きさや数、マーケット規模が圧倒的に違う。例えば、上場企業のうち4社に3社は東京都と大阪府、神奈川県、愛知県、埼玉県の5都府県に本店を置いている。一般論として、企業規模が大きかったり、数が多かったり、マーケットが大きかったりすると、その分ビジネスチャンスは多くなる。

また、地方では人材の採用も難しい。地方では特に若者の人口が少ないために採用候補者の母数が形成しにくく、思うように優秀な人材を集められないことも多い。国立大学は全国各地に配置されているが、特に優秀な学校は都市部にある。私立大学はその流れがより顕著だ。

このように、地方企業は市場環境や人材面などに起因し、大都市部の企業と比べて収益力が劣ることも少なくない。これは地方でビジネスを展開する上で、ある程度は仕方のないことだ。

収益力を高めるために必要な視点

自社の収益力を高める方法はさまざまあるものの、大きく分けて2つの視点が必要である。第一に、既存の製品やサービスを「売る相手を増やす」「売る層を広げる」というものだ。

これは自社が提供する製品やサービスは従来から変わっていないにもかかわらず、売り方やPRの方法を工夫することで新たな顧客を獲得し、売上や利益を増やす方法である。もちろん、労力やコストはそれなりにかかるが、次に紹介する方法と比べれば手軽と言える。

次に、もっと本格的で規模の大きな方法は、新たな事業を展開することだ。こちらは具体的にどんな方法をとるかによって、必要な時間やコストが大きく異なる。

例えば、新製品の研究開発には数年の期間を要することもある。場合によっては新たに人材を採用し、育成しなければならないかもしれない。また、新サービスに乗り出すなら、企画するだけでなく、事前の準備やテストマーケティング、広報などさまざまなフローを経て実現に向かうことになる。

以下で、これらについて、より具体的に紹介する。

「販売先を拡大」という選択肢

新規事業を展開するよりリスクが少なめ

上述の通り、売る相手を増やす方法では、自社が提供する製品やサービスを、基本的にはそのまま横展開することになる。そのため、全く新しい事業に打って出る場合と比べると、リスクは小さいと言える。

地方企業の場合、人材の頭数や質の面で制約が多いことはすでに述べた。そんな中で新規事業を始めるとなると、限られた人的資源がそちらに投入されるほか、仮に事業化するとしても、社員教育などが新たに必要になるかもしれない。既存事業の延長であれば、これらのコストを節約できるメリットがある。

今まで開拓していない販路の獲得を目指す

販売する先を増やすと言っても、その方法はいくつかある。例えば、自社がコーヒー豆を喫茶店向けに卸しているとする。最近は地方にもスターバックスやタリーズなど、チェーンのコーヒーショップが増え、地場資本の喫茶店はどんどん減っている。このままでは自社の業績は先細りが必至だ。

この時、取りうる方法として、まず「営業エリアを広げる」という方法がある。これまでは基本的にA県内の喫茶店を対象としてきたが、今後は隣のB県の喫茶店も営業対象に加えるということだ。

これは同じビジネスを面的に大きくするだけなので、過去に培ってきたノウハウをそのまま活用できる。ただし、B県の喫茶店にも昔ながらの仕入れ先はあるため、製品やサービスに後発で取引をひっくり返すだけの魅力があるかどうかは検証しなければいけない。

一方で「売る業種を変える」ことも考えられる。例えば、対象をレストランなどの飲食店や宿泊施設にも広げ、食後のコーヒー用に豆を売るといった方法だ。最近は、オフィスでの利用に活路を求めるコーヒー豆卸業者もある。これまで、コーヒーに力を入れていなかった業態をターゲットにすれば、そこは未開の地であり、大きなシェアを獲得できる可能性もある。

あるいは「売り方を変える」という方法もある。コロナ禍では食事の宅配サービスが次々と現れた。コーヒーも食卓を彩るものの1つなので、このような宅配サービスとコラボしたり、単独で宅配サービスを始めたりする手法が、これに当たる。

「新規事業を展開」するポイントは?

自社の強みをうまく生かせるか確認

一方、自社を巡る状況を大きく変えるには、新たな事業を始めるという方法がある。新ビジネスでは、これまで接点のなかった相手と取引が始まる場合もあり、単純に売上高や利益が増えるのみならず、会社としてビジネスの幅や奥行きが増す効果も期待できる。

そこで大前提として大切にしたいのが、新たに参入しようと考えているビジネスが既存事業に関係あるか、関係ないか、という点だ。経営学では前者を「関連多角化」と言い、後者を「非関連多角化」と呼んでいる。

関連多角化は分かりやすい。自社の既存事業と重なり合う部分のあるビジネスを手掛けるので、自社の強みを生かしたビジネスを設計できる。ここでは、既存事業とのシナジー(相乗)効果が見込まれる。「1+1=2」ではなく、「1+1=3」になるような展開を目指す。

一方、非関連多角化は、どちらかと言うと、リスク分散の観点が強い。例えば、宿泊施設とレストランを経営しているケースでは、いずれも人々が外出することを前提にしているため、コロナ禍のような状況になると、共倒れになってしまう。

それでは、レストランではなく食品スーパーを展開していたらどうなるか。食品スーパーは利益率こそ高くないが、経済社会の移り変わりに対し、大きくは連動しない安定したビジネスだ。もしもリスク分散という観点を重視するなら、あえて既存の強みからは少し離れた分野で事業を考えてみると良いだろう。

投資コストに見合っているか入念に検討を

もちろん、新事業の場合は常にそうだが、投資コストに見合ったリターンを期待できるかどうかは念入りに調べる必要がある。

仮に、それなりの数の客がついても、採算が合わなかったり、市場規模が思ったよりも小さくて永続性がなかったりすると、投資を回収するのもおぼつかなくなる。そのビジネスの先行きや現在の市場の調査を欠かしてはならない。

経営者自身の「弱さ」も認め、新しい感覚を導入する必要あり

「デジタルネイティブ」という言葉がある。幼い頃からパソコンやスマートフォン、タブレット端末に親しんだ世代を指す言葉だ。このような層は、高校生になってようやく「ガラケー」を買ってもらったり、働いて初めて「ポケベル」を持ったりした世代とは、感覚やスキルが全く異なる。

経営者は孤独であり、ともすれば自分の殻に閉じこもってしまいがちだ。過去の成功体験に引きずられることも多い。しかし、昔は昔だ。時が流れ、次々と異なる感覚を持つ世代が出てきてマーケットで存在感を高める中、以前に成功したビジネスモデルが今も成功するとは限らない。

新たな事業を考える上では、経営者自身が過去の成功体験に固執せず、仮に自分が「食わず嫌い」をしている分野であっても、例えば若い社員が強い関心を示しているなら、彼らに話を聞いてみるような姿勢が望ましいだろう。

売上の向上ではなく「コストを減らす」という視点

利益を増やす方法は、何も売上を増やすばかりではない。売上高が変わらなくても、それにかかるコストが減れば、利益を増やすことができる。

売上とコストの関係を改めて考える

上記の「関連多角化」の分野では、既存の経営資源を効率良く活用できる事業展開を進めることで「1+1=3」を目指した。一方、これをコスト面に着目して適用すると、従来は「1+1」の結果として「2」のリターンを生んでいたところ、例えば「1+0.5」の結果として「2」のリターンをつくり出すことも期待できる。

これはA事業に加えてB事業を始めても、管理コストが2倍になるわけではないことに起因する。また、事業を拡大することで単位当たりのコストが下がる「規模の経済」も作用する。例えば、現有の生産設備の稼働率が上がったり、仕入れ量が増えることで取引先に対する交渉力が高まったりするため、コストが下がるのだ。

コスト削減計画の作り方は?

独立行政法人中小企業基盤整備機構が運営するウェブサイトによると、中小企業は大企業に比べ、材料費や人件費の高騰分をそのまま価格に転嫁することは難しい。細分化、単位化によってムダ・ムラ・ムリをあぶり出し、コストを削減して財務体質を改善しておくことが必要だ。

まずは、ABC(活動基準原価計算)でコストを把握する。これは、製品やサービスごとの間接コストを正確に計算するための方法だ。間接コストを活動単位に細分化し、どれだけのリソース(資源)を消費するかを明らかにする。

注意すべき点は、いきなり全ての企業活動に適用すると、処理に手間がかかって計画倒れになりやすいので、重要な分野から順に取り組むことだ。

次に、「ムダ(時間や労力、経費などを本来必要のないものに利用している状態)」「ムラ(ムダとムリがばらつきながら発生している状態)」「ムリ(目標達成に必要な時間や労力、経費などが不足している状態)」を洗い出し、完全に止めてしまうか、よりコストの小さな方法に乗り換えることを検討する。

もっとも、「コスト削減」は、経営者にとっては利益アップのための金科玉条であっても、従業員からすると、これまで当然だったものがなくなるのをストレスに思うことがある。数字面の効果を追うのは大切だが、それにより従業員間に不満がたまらないか注意しなければならない。

コンサルを使うべきか否か、も検討を

この点、地方の特に中小企業では外部人材に頼って上記の施策を進めることも考えられる。

確かに、自社内に人材が乏しい場合、外部コンサルタントの手を借りるのも有効に見えるが、コンサルティング業界は都市部を中心に発展しており、最先端の事例について、地方では事例が少ないことがある。

その意味で、安易に外部人材を活用しても、効果が薄い場合もある。自社が検討している分野に本当に詳しい専門家がいるのか、入念に調べたいところだ。

地方特有のメリットも生かして

以上のように、地方企業が直面する課題としては、マーケット規模が限定されており、しかも社内外の人的資源が乏しい場合がある、という現状をみてきた。

このように列挙すると、地方でビジネスをするのはマイナス面ばかりのように映る。しかし、地方には地場企業同士の深い結び付きや付き合いの長さといった特徴があり、それをうまく生かせば、他社と協業してスムーズに新事業を創出できたり、必要な資源の調達が容易になったりする場合もある。

教科書的なコスト削減や事業計画を大切にする一方、地方ならではのメリットを生かす方法も考え、コロナ後の世界での生き残りを模索したいところだ。

事業承継・M&Aをご検討中の経営者さまへ

THE OWNERでは、経営や事業承継・M&Aの相談も承っております。まずは経営の悩み相談からでも構いません。20万部突破の書籍『鬼速PDCA』のメソッドを持つZUUのコンサルタントが事業承継・M&Aも含めて、経営戦略設計のお手伝いをいたします。
M&Aも視野に入れることで経営戦略の幅も大きく広がります。まずはお気軽にお問い合わせください。

【経営相談にTHE OWNERが選ばれる理由】
・M&A相談だけでなく、資金調達や組織改善など、広く経営の相談だけでも可能!
・年間成約実績783件のギネス記録を持つ日本M&Aセンターの厳選担当者に会える!
・『鬼速PDCA』を用いて創業5年で上場を達成した経営戦略を知れる!

✉️経営、事業承継・M&Aの無料相談はこちらから

文・岡本一道(金融・経済ジャーナリスト)

無料会員登録はこちら