1月19日、東京電力は、運転開始から30年を経過する柏崎刈羽原発3号機の設備管理等の状況に関する審査書類に149ヶ所の誤りがあったと発表、原子力規制委員会に対して謝罪した。原子力規制委は記載された131ヶ所が既に審査を終えている同型の2号機のデータの流用などである点について「書類の信頼性に関わる重大な問題である」と指摘、再発防止を要請した。新潟県の花角英世知事は情報流用が組織の判断のもとで行われていたことを問題視、東電の原発運営能力についてあらためて疑念を呈した。
それにしても、である。なぜここまで安全そしてルールに対して不誠実であり続けるのか。自主点検記録の改ざん、隠蔽、最悪レベルと指摘されたテロ対策の不備、安全対策工事の完了を発表した後で発覚する未完了や不適切施行、、、問題が発生するその度に、経営幹部は頭を下げ、安全への意識改革を誓い、再発防止策を発表する。一体、いつまでこうしたことが繰り返されるのか。
東電だけの問題ではない。昨年12月には、日本原子力発電㈱敦賀原発2号機の安全審査においても不備が発覚した。敦賀2号機の審査は、資料の書き換え問題を受けて2年間中断していた。しかし、審査再開後に提出された新たな資料にも157ヶ所の不備が発覚、原子力規制委は再度の審査中断もあり得る旨、同社に注意喚起している。
昨年、国は原子力政策の転換を発表した※1。開催中の通常国会には原発の運転期間延長を認める法案が提出される。福島第一原発汚染水のALPS処理水の海洋放出の準備も進む。一方、安全性、経済性、あるいは安全保障の観点からも政策転換への賛否は割れる。海洋放出の是非が問われた2021年3月、筆者は事業者の資質、情報の公開性、原子力行政の責任の所在の明確化が汚染水処理問題を考えるための前提である、と書いた※2。何度でも繰り返そう。ここに対する信任こそが議論の出発点である。
※1 「政府、原子力に舵をきる。私たちは未来に何を残すのか、責任は軽くない」今週のひらめき視点 2022.10.2 – 10.6
※2 「汚染水の海洋放出問題、原子力政策に対する信頼の回復が鍵」今週のひらめき視点 2021.3.14 – 3.18
今週の“ひらめき”視点 1.22 – 1.26
代表取締役社長 水越 孝