企業にとって資金調達は、事業を継続していくうえで最優先事項であり、資金繰りの悪化は致命的なものとなりかねない。特に中小企業では、経営資源が限られているため、資金調達に悩む経営者は多いだろう。中小企業の場合、資金調達の手段が銀行からの融資や代表者からの借入金などに限定されることが多く、資金繰りの悪化に備えた対応が必要となる。

中小企業の経営者としては、常に資金繰りを把握しておきたいものだ。資金繰り悪化を招く原因や回避するための資金繰り改善策について解説する。

目次

  1. 資金繰りが悪化する原因とは
    1. 資金繰りが悪化する要因
    2. 資金繰りを改善する方法
    3. 資金繰り悪化の兆候をつかむことが大切
  2. 資金繰り表があれば資金不足に備えることができる
    1. 資金繰り表とは
    2. なぜ資金繰り表が必要となるのか
    3. 資金繰りを把握しておけば資金繰り悪化時に備えることができる
  3. 資金繰り悪化の兆候を早い段階でつかむことが大切
資金繰りの悪化を防ぐために中小企業経営者が考えておくべきこと
(画像=Natalia/stock.adobe.com)

資金繰りが悪化する原因とは

資金繰り悪化を招く主な要因には「入金金額の減少」「支払金額の増加」「財務内容の悪化」の3つが考えられる。資金繰り悪化を回避するには、これら3つの兆候を早い段階でつかみ、改善策を施していく必要がある。

資金繰りが悪化する要因

中小企業では、経理担当や財務担当が独立した部署として機能していないことが多く、売上や支払管理、資金繰りの把握を代表者自身で行うことが少なくない。しかし代表者自身がプレイング・マネージャーとして現場に出て事業活動を行っていると、入出金の管理の細かいところまで把握するのは困難だろう。

また顧問税理士が財務内容を確認してくれることもあるが、定期的に報告するだけで日々の管理をしてくれるわけではない。中小企業の資金調達の手段として最も多いのは、銀行からの融資だが融資は申し込みをしてから実行されるまでに一定の時間がかかる。融資が間に合わず、取引先への支払いが滞ってしまうと資金繰りが逼迫して事業継続が困難となり、最悪の場合、倒産することもありえるのだ。

しかし売上獲得や現場作業を経営者の能力に頼らざるを得ない中小企業では、売上増加や現場管理に注力するあまり、資金繰りの悪化に気がつかないケースも多い。資金調達が間に合わずに手遅れとなるようなことはあってはならないことだ。資金繰りが悪化する主な要因には、以下の3つが考えられる。

  • 入金金額の減少
  • 支払金額の増加
  • 財務内容の悪化

なかでも「入金金額の減少」と「支払金額の増加」は気がつきやすいが、「財務内容の悪化」が原因となっていることに気がつかないケースが多いため、特に注意してほしい。

・1.入金金額の減少
【売上減少】
売上が減少する要因としては、商品・サービスの陳腐化による顧客離れや、他社との競争の激化が挙げられる。また新型コロナウイルス感染症の影響のような外部の要因も考えられるだろう。

【売掛金の焦げ付き】
取引先の経営不振や倒産などにより売掛金の回収ができずに不良債権化することも、入金金額の減少につながる。

・2.支払金額の増加
売上増加に伴う仕入代金の増加や外注費の増加、人件費を含めた経費増加などが支払金額の主な増加要因となる。経費削減の対応が遅れるほど支払金額が増加するため、資金繰りに大きな影響を与えかねない。

・3.財務内容の悪化
【入金までの期間の長期化】
商品販売やサービスの提供から代金回収までの期間が長期化すると、売掛債権の回収期間の悪化や、回転率の悪化を招き、資金繰りが悪化する。

【支払いまでの期間の短縮】
商品仕入から代金支払までの期間が短縮されると、買掛債務の支払期間の悪化を招き、資金繰りが悪化する。

【過剰投資・借入過多・過剰在庫】
設備投資などが過剰投資にあたる場合、投資した資金を回収するのに設備計画以上の時間がかかるため、資金繰りが悪化する。また資金調達を銀行融資に頼りすぎて借入過多・借入金増加となれば、毎月の返済額が増加し、資金繰りが悪化することがある。過剰在庫の発生(不良在庫)も回転率の低下から資金繰り悪化を招く要因となる。

資金繰りを改善する方法

資金繰りを改善する方法は、資金繰り悪化の要因ごとの対応策を講じると考えれば分かりやすい。ただし「財務内容の悪化」が原因となっているケースでは、前年度実績や同業他社平均をもとに経営指標の比較検討・分析が必要となることがある。そのため会計士や税理士などの専門家に相談して進めていくのが賢明だ。

・1.入金金額の増加
【売上増加】
売上の増加は、営業努力によって解消するのがメインとなる。自社商品・サービスの陳腐化や他社との競争激化の対策として新たな商品・サービスの提供、マーケティングによる顧客ターゲット層の見直しなどが必要だ。外部的な要因による売上減少は、その要因が解消されれば解決できるだろう。

【売掛金の回収】
取引先の経営不振や倒産などが原因で売掛金の未回収が発生した場合は、現実的に回収が困難になることも多い。いくらかでも売掛金が回収可能であれば、できるだけ回収するしか方法がないだろう。場合によっては、弁護士などに財産の差し押さえなど法的な手段による回収を依頼する必要がある。

・2.資金調達の実施・支払金額の減少
仕入代金の増加や外注費の増加、人件費を含めた経費増加などが原因であれば、仕入先や外注先との交渉や見直し、経費節減の努力が必要となる。仕入価格や外注費の削減が取引先との関係上難しければ、銀行などから融資を受けて資金調達しなければならない。入金までの期間や支払いまでの期間の変更の交渉も必要だ。

・3.財務内容の改善
【入金までの期間の短縮・支払いまでの期間の長期化】
資金繰りの改善には「売上代金の入金までの期間の短縮」「支払いまでの期間の長期化」といった工夫が必要だ。ただし取引先との信頼関係も大切となるため、無理強いはできず慎重に交渉しなければならない。取引先への協力を仰ぎ、売掛金の回収サイトを短くしてもらったり、買掛債務の支払い期間を延ばしてもらう交渉がうまくいったりすれば資金繰りは改善に向かうだろう。

【過剰投資・借入過多・過剰在庫への対応】
設備投資が過剰であれば、その設備投資に対応する借入金の一部返済などを検討することも必要となる。不良在庫の処分もいくらかの金額で売却できるのであれば、検討しなければならない。経費削減の努力によりキャッシュ・フローを改善していく必要がある。

新たな資金調達として融資を受けることで資金繰りの改善ができる。しかし十分にシミュレーションしたうえで借り入れを行わないと、毎月の返済金額の増加により資金繰りをかえって悪化させてしまいかねない。借入総額がそれほど多くなくても複数の借り入れがあると毎月の返済額が大きくなるため、状況に応じてリスケを検討してみよう。

ファクタリングの利用による売掛債権譲渡などの資金調達方法も、入金期間の短縮と同じ効果があり、近年利用する中小企業は増えている。

資金繰り悪化の兆候をつかむことが大切

上述したように売上減少や支払増加による資金繰りの悪化は気がつきやすいが、財務内容が原因となる資金繰り悪化はつかみにくい。そのため中小企業の経営者としては、日々の入出金の状況に注意を払って常に資金繰りの把握に努めなければならない。

資金繰りを把握するには、資金繰り表の作成が有効だ。資金繰り表を見れば過去の実績から数ヵ月後の資金の流れを把握できるため、資金繰り悪化の兆候を一目でつかむことができる。経営リスクを回避するには、「売上が順調に伸びて仕入れが一気に増えた」「借入金の返済が厳しくなってきている」「納税資金の確保が難しい」などといった資金繰り悪化の兆候を資金繰り表からつかむ必要がある。

資金繰り表があれば資金不足に備えることができる

資金繰り表について詳しくみていこう。

資金繰り表とは

資金繰り表は、過去の実績と今後の見込みから現預金の動きを予想して資金の流れを管理・把握するためのものだ。その目的は、現預金の流れと残高の推移に特化して会社の経常収支を確認することにある。例えば資金繰り表上で現預金の残高がマイナスとなった場合は、企業の破たんを意味する。つまり資金繰り表では、最終の現預金の翌月への繰越残高は常にプラスとならなければならない。

銀行などで融資を受ける際は、現金の収支を担当者へ説明するために提出を求められることが多い。

【資金繰り表の例】

資金繰り表の例

なぜ資金繰り表が必要となるのか

資金繰り表は、手元の現金出納帳や預金通帳の入出金の記録を集計して、現金の入出金の流れをそのまま表に落とし込んだだけのものである。今後の入金予定や出金予定を厳密に反映させることができれば、資金繰りの管理・把握に役立てることができるだろう。

資金が不足して支払いが滞ってしまうと企業は破たんすることになる。そのような事態に陥らないためにも資金繰り表で資金の流れを常に把握し、事前に資金調達するタイミングの確認が重要だ。事前に資金不足になるタイミングが分かっていれば、資金繰りの悪化を回避できるだろう。

資金繰り表で資金管理をしていなければ、資金不足に備えた迅速な対応ができない。つまり資金繰り表を作成すれば、現預金の残高を今後も不足しないように管理できるため、将来の資金不足に陥ることなく安定した経営が期待できるのである。

資金繰りを把握しておけば資金繰り悪化時に備えることができる

毎月の試算表などで経営状況の確認はできるが、別途資金繰り表で資金状況を把握する必要がある。なぜなら資金不足になる前の段階で、迅速に対応できるからだ。

資金調達には、一定の時間を要するため、資金不足には迅速に対応しなければならない。例えば月末に売上の入金があるが、支払日は10日、給料日は20日など入金と支払いのタイミングによっては月末に資金が残る予定でも月の途中で資金不足に陥ることもある。利益を計上しているにもかかわらず倒産する「黒字倒産」の企業が発生するのは「勘定合って銭足らず」の状態だ。つまり日ごとの資金繰りを把握していないことが原因といえる。

なお支払日は、個別に把握する必要がある。リアルタイムで実際の数値を把握するには、状況に応じて週単位や日単位での資金繰り表の作成も検討したい。必要資金を調達する前に、資金繰りを常に把握し必要なタイミングに間に合わせなければ意味がない。資金繰り表により資金繰りを常日ごろから把握しておけば資金繰り悪化時に備えることができるだろう。

資金繰り悪化の兆候を早い段階でつかむことが大切

資金繰り悪化の主な原因は、「入金金額の減少」「支払金額の増加」「財務内容の悪化」の3つが考えられる。資金繰り悪化を回避するには、これら3つの兆候を早い段階でつかみ、それぞれの改善策を検討しよう。売上減少や支払金額の増加による資金繰りの悪化は、気がつきやすいが財務内容の悪化が原因となる資金繰りの悪化には気がつかないケースが多い。

特に代表者自身がプレイング・マネージャーとして現場に出て事業活動を行っている場合はなおさらだ。中小企業の経営者としては、日々の入出金の状況に注意を払い、常に資金繰りの把握に努め、資金繰り悪化の兆候をつかむことが重要となる。

毎月資金繰り表を作成して資金の流れを管理すれば、数ヵ月後の資金繰りも一目で把握できるだろう。また資金不足に対する迅速な対応が可能となり、資金繰り悪化時に備えることも期待できる。

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文・加治直樹(1級FP技能士、社会保険労務士)