2023年3月末のオートリース車両保有台数は約402万台で前年同期比プラスの見込
~法人向けリース車両は3年ぶりに増加へ、個人向けリース車両は堅調に推移~
株式会社矢野経済研究所(代表取締役社長:水越孝)は、国内のオートリース市場の調査を実施し、現況や参入企業の動向、および将来展望を明らかにした。
オートリース車両保有台数の推移と将来予測
1.市場概況
一般社団法人日本自動車リース協会連合会によると、2022年3月末時点の国内オートリース車両保有台数は前年同期比プラスを維持したが、成長率は鈍化傾向を示した。
法人向け需要はコロナ禍の発生以降、オートリース顧客企業におけるコスト削減意識の高まりやリモートワークの普及などの働き方の変化、さらに自動車メーカーによる供給停滞などの影響を受けている。法人向けオートリース車両保有台数は2021年3月末以降減少に転じている。
一方、個人向け需要は堅調に推移している。3密回避に繋がる安全な移動手段としての自動車への再認識や、自動車メーカーや車両販売事業者等によるリース商品・サブスクリプションサービスの増加が個人向け需要を後押ししている。
2.注目トピック
リース顧客の脱炭素化支援、現実解は「HEV中心の提案」と「BEV提供体制の構築」の両輪
脱炭素やカーボンニュートラルに向けた社会的な機運が高まる中、オートリース企業は顧客企業のCO2削減支援に向けて電動車の提案体制の構築・強化を積極的に進めている。
主要オートリース企業各社によるリース保有車両のうち電動車の割合は約2~4割弱となっており、その大半がHEV(ハイブリッド車)となっている※。(※データ出所:矢野経済研究所)
HEVは市場に投入されてから、一定の年月が経過しているため中古車市場が確立されており、初期費用(イニシャルコスト)はBEV(電気自動車)やPHEV(プラグイン・ハイブリッド車)等に比較して安価である。また、メンテナンスに関しても民間整備事業者で取り扱える場合が多い。さらに、日本政府のカーボンニュートラル(温室効果ガスの排出量を全体として実質ゼロにする)の目標達成を考えた場合、電源構成やLCA(ライフサイクルアセスメント)に照らすと、原燃料からCO2排出を伴いながら作られた電気をバッテリー製造時や充電時に必要とするBEVよりも、HEVの方が排出削減効果が高いとの見方もある。
一方で、BEVやPHEV等の電動車は導入コスト、充電インフラ、航続距離、残価設定などの課題が未解決である。しかし、世界全体で脱炭素化への風潮が強まっていることから、BEV等の流通量が拡大することは自明である。そのため、オートリース企業各社は現状、法人顧客に向けて充電機器や充電カード、エネルギーマネジメントなどの周辺サービスを包括したワンストップ提供体制の構築に注力している。今後のBEVの提供においては、バッテリーの性能評価やリースアップ後の販路確保が鍵となることから、様々なパートナーとの連携が重要になってくる。
このように、オートリース企業が法人顧客に対し脱炭素化など環境対応を支援する上では、HEVを中心とした提案と、パートナー企業との連携の下でBEV・PHEV等の提案体制の構築を並行して実施することが現実解となる。
3.将来展望
2022年度は自動車生産におけるサプライチェーンの混乱が前年度から継続し、新車供給が停滞している。オートリースの法人顧客は新車入れ替えを抑制し、再リース(現行車両のリース契約更新)や保有車両のリースバック(顧客名義の保有車両をリース会社名義に切り替える)を進める。一方、オートリース企業側は早期から新車リースへの入れ替え提案に注力し、個人向け需要の活況を自社の成長に繋げる事業者も存在する。
これらを踏まえ、2023年3月末のオートリース車両保有台数は約402万台(前年同期比101.8%)を見込む。
また、今後の新車販売状況、コロナ禍からの経済活動の回復状況、大阪万博などの大規模イベント開催等による需要状況などを鑑み、オートリース車両保有台数は2024年3月末で約411万台(同102.2%)、2025年3月末で約421万台(同102.4%)を予測する。
調査要綱
1.調査期間: 2022年8月~11月 2.調査対象: オートリース主要企業、自動車メンテナンス受託企業 3.調査方法: 当社専門研究員による直接面談(オンライン含)、電子メール・電話によるヒアリング、ならび郵送アンケート調査併用 |
<オートリース市場とは> オートリースはユーザーが自身で指定した車両をリース会社に代理購入してもらい、それを賃借する契約である。オートリースは、設備投資に掛かる初期費用の軽減・平準化という会計面、金融機関の借入枠保全や資金の効率運用という財務面、車両管理業務の負担軽減という管理面のメリットなどから、法人ユーザーを中心に拡大してきた。現在は法人顧客のみならず、個人の利用者(個人事業主含む)を対象にした個人向けオートリース市場も順調に拡大している。 なお、オートリース車両保有台数につき、2017年3月末~2022年3月末実績値は一般社団法人日本自動車リース協会連合会データより引用、2023年3月末見込値、2024年3月末予測値、2025年3月末予測値は矢野経済研究所算出値である。 |
出典資料について
資料名 | 2022年版 オートリース市場の現状と展望 |
発刊日 | 2022年11月30日 |
体裁 | A4 271ページ |
価格(税込) | 198,000円 (本体価格 180,000円) |
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