サウジアラビアの王族がレオナルド・ダ・ヴィンチの《サルバドール・ムンディ》を約585億円で落札、ZOZOの創業者である前澤友作氏がジャン=ミシェル・バスキアの作品を約123億円で落札…世界中の富裕層やセレブリティによる高額アート作品購入が度々話題になります。なぜ彼らはアートに投資し、コレクションするのでしょうか?その魅力をご紹介します。

アートが持つ2つの魅力

心惹かれるアートに出会い、収集することは自身の豊かな人生を象徴する

アートが私たちにもたらしてくれるものとは、一体なんでしょうか? 美しい自然風景と同じように見ると癒される、感動するのはもちろんのこと、そのアーティストが歩んできた歴史や時代背景、制作コンセプトなどを知ることは、社会を読み解く教養にも繋がります。また、新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに自宅やオフィスなど空間を豊かにすることのプライオリティーは高まり、日常的に好きなアートに触れることで、改めて心の棚卸しができることも大きな魅力です。

Photo by Diane Picchiottino on Unsplash
(画像=Photo by Diane Picchiottino on Unsplash)

つまり、私たちは日々ファッションやインテリア、車や時計といったあらゆる購買活動によって無意識的にも自身のアイデンティティーをモノによって形成しているといえます。心惹かれる特別な作品と出会い、自身のコレクションとして加えることもその一つなのです。

さらにアートというものは決して娯楽のみに留まらず、作品を購入・収集することは「保全」となり、アートを通して社会貢献をすることも可能にします。無類のアート好きで知られる世界的K-POPグループ「BTS」のリーダー・RM(アールエム)は、国内外の美術品を収集しており、自身のコレクションから作品の貸し出し、また、韓国文化遺産財団と韓国国立近現代美術館に1億ウォン(約1千万円)を寄付しています。

BTSのリーダー・RMとアートコレクション
(画像=BTSのリーダー・RMとアートコレクション)

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RMのアートコレクション
(画像=RMのアートコレクション)

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RMのこうした活動はニューヨーク・タイムズ紙でも報じられ、文化遺産の保存と普及に貢献したとして、韓国文化財庁から表彰されたのです。他にはレオナルド・ディカプリオ、ブラッド・ピット、ビヨンセ・ジェイZ夫妻、オプラ・ウィンフリー、マドンナなど数々のセレブリティがアートコレクターとして名を連ねています。

コレクターのみならず彫刻家としてもデビューしたブラッド・ピット
(画像=コレクターのみならず彫刻家としてもデビューしたブラッド・ピット)

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左:レオナルド・ディカプリオ(右はディカプリオの親しい友人でアーティスト、ウォルトン・フォード)
(画像=左:レオナルド・ディカプリオ(右はディカプリオの親しい友人でアーティスト、ウォルトン・フォード))

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世界の富裕層の資産ポートフォリオの5%は収集品!資産としてのアートに再注目

ふたつ目の魅力は「資産」としての可能性です。ここで一度アート市場全体の推移を見てみます。パンデミックで一時的に縮小したアート市場は、オンライン販売に活路を見出し、熱狂的なNFTムーブメントを経て、2021年には美術品と骨董品の総売上高は前年比29%増の約651億ドル(約8.8兆円)に達し、パンデミック以前の水準を上回りました。

世界アート市場セールス推移(2009年〜2021年)
(画像=世界アート市場セールス推移(2009年〜2021年))

出典:「The Art Market 2022」

パンデミックは世界中に混乱を招き、私たちに様々な変化を与えました。そしてパンデミックからの経済回復は富裕層人口を増加させ、2021年初めの富裕層人口は5610万人(前年比8%増)、総資産額は約191兆6000億ドル(前年比11%増)となりました。2025年には8400万人を超えると推定されています。

富裕層人口推移(2012年〜2021年)
(画像=富裕層人口推移(2012年〜2021年))

出典:「The Art Market 2022」

こうした流れは、ポートフォリオに5%の収集品(アートなど将来価値が上がることを期待して収集・保管する品)を含めるのが一般的である富裕層にとって、美術品や骨董品への支出を以前より促しています。その結果、資産運用・分散投資の対象として、アートに一層の注目が集まっています。

超富裕層の保有資産の内訳(地域平均)
(画像=超富裕層の保有資産の内訳(地域平均))

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価値が5,815倍に!?現代アートの成長例

一言にアートといってもカテゴリーがいくつか存在しますが、なかでも特に「現代アート」は目下成長中で目が離せないカテゴリーです。2021年後期〜22年前期の世界の現代アートオークション市場は、約27億ドル(約3591億円)を記録。20年前にはアート市場全体の売上の3%に過ぎなかった現代アートは、現在では18%を占めているのです。

世界の現代アートオークション売上の推移
(画像=世界の現代アートオークション売上の推移)

出典:「The 2022 Ultra Contemporary Art Market Report」

バンクシーや奈良美智、KAWS、ダミアン・ハースト、ジェフ・クーンズなど様々な個性をもった作家が現代アートシーンを牽引しています。なかでも「資産」としての文脈において、最も顕著な例として挙げられるのがアメリカ出身のアーティスト、ジャン=ミシェル・バスキアです。

ジャン=ミシェル・バスキア(1960-1988)
(画像=ジャン=ミシェル・バスキア(1960-1988))

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先に述べた前澤氏が2017年に当時約123億円で落札したジャン=ミシェル・バスキアの作品《無題》は、1984年に世界的著名コレクターのスピエガル夫妻が1万9000ドル(当時約200万円)で購入したものです。つまり、33年間でなんと約5815倍も価値が上昇しました。

ジャン=ミシェル・バスキア《無題》(1982)
(画像=ジャン=ミシェル・バスキア《無題》(1982))

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また、前澤氏は《無題》のほかにもう一点、バスキアの作品を所有していました。以下の作品は2016年に5730万ドル(当時約62億円)で入手したもので、2022年5月にフィリップスへ出品。同社が予想していた7000万ドルを超えて、8500万ドル(約109億円)で落札されました。バスキアのアーティストとしての価値の上昇とともに、前澤氏は6年近い保有期間を経て、1.5倍近くのプロフィットを生み出しました。

ジャン=ミシェル・バスキア《無題》(1982)
(画像=ジャン=ミシェル・バスキア《無題》(1982))

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今回はバスキアを例に挙げましたが、自身の美的感覚を磨いてくれる上、美術史を彩る歴史的なアーティストの作品を所有するという充足感は、何にも代えがたいものであることは容易に想像できます。このように情緒的でありつつも資産的な価値を見込めるという、アートならではの魅力が多くの人を惹きつけているのです。

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(画像= concierge)

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文:ANDART編集部