社長のための経営戦略の本
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(本記事は、椢原 浩一氏の著書『今と未来の利益を増やす社長のための経営戦略の本』=あさ出版、2021年6月20日刊=の中から一部を抜粋・編集しています)

貢献利益を重視せよ

利益を増やす最重要管理指標

貢献利益は言葉通り、事業や顧客で生み出された利益が、会社全体の利益にどれだけ貢献しているかを表すものです。

「いくつかある事業が、それぞれどれだけ会社全体の利益に貢献しているのか」のように、事業別貢献利益を算出するのが一般的にはよく聞かれます。

事業別だけでなく、部門別、顧客別、商品別などのセグメントがあり、その会社の事業内容や何を改善したいのかによって、その切り口が違います。

切り口を間違うと、せっかく計算した貢献利益も役に立ちませんし、何よりこわいのは、誤った経営判断をしてしまうことです。

「改善した会社がこういう方法で貢献利益を出しているから」というような安易な考えで計算をせずに、あなたの会社に最も適切な切り口を見つけてください。

本書でご紹介している事例のクライアントの旅館では、館別、部屋別貢献利益。そして、宿泊部門、調理部門、売店部門、管理本部でどれだけ儲けているかを事業別貢献利益として算出するように取り組んでいます。

これらの貢献利益から選択と集中戦略を実行した結果、8カ月めには、4年連続赤字だった会社が単月黒字になり、毎年、季節資金として借り入れが必要になる時期も、自己資金で資金繰りを回すことができるようになるなど、短期間で目に見える成果が表れました。

何を改善したいのかを明確にして、それに必要な切り口で貢献利益を算出し、それを活用することで、あなたの会社も同じように利益を増やすことができるはずです。

「数値は目的のためにある」ことを忘れないでください。

売上は、ほぼ100%の会社が管理していると思います。

粗利も、ほとんどの会社が管理しているようです。

限界利益となると、私の経験からいうと、3割くらいしか管理していないのではないかと思います。

貢献利益は、大企業クラスでは90%を超えると思いますが、中小企業では10%もないと思います。

それくらい、中小企業は貢献利益について関心が低いようです。

私が新卒で入社した当時、キーエンスの経営理念は5つあり、そのなかの一つに、「最小の資本で最大の経済効果を上げる」がありました。

ここでいう「経済効果」は、〝付加価値〟のことを指しています。

付加価値は、限界利益とよく似ていますが、キーエンスでは、この付加価値を重視していて、日常の営業活動でも売上だけではなく、付加価値目標の達成状況を毎日管理するほど重要視していました。

同時に、当時のキーエンスは、事業部制を採用し、事業部ごとの採算性管理を行っていました。この事業部門別採算性管理でも付加価値に加え、貢献利益が使われていたと記憶しています。

もし、あなたが、自身の会社の経常利益を増やしたいと本気で考えるのであれば、最重要管理指標は、貢献利益です。

今と未来の利益を増やす社長のための経営戦略の本
著者:椢原浩一(くにはら・こういち)
経営コンサルタント。KRB コンサルタンツ株式会社代表取締役社長。
認定事業再生士(CTP)。黒字メソッド® 実践会主宰。
1964 年大阪生まれ。
指導社数1019 件、相談件数3575 件、再生件数352 件、一年黒字改善率91.3%の実績を持つ。(2021 年1 月現在)
なかでも、「黒字化」「リスケからの再建」「第二会社による事業再生・事業承継」に関しては、日本屈指のスペシャリスト。
「黒字化」は、一年で黒字にする「黒字メソッド®」を確立し、9割を超える。
「リスケからの再建」については、黒字メソッド® によるBS、PLの改善、金融機関との信頼構築を指導し、数多くのリスケ脱却を実現。
「第二会社による事業再生・事業承継」は、100%の成功率を誇り、債務ゼロ化の再生社数は、日本トップクラス。
さらに、黒字メソッド® と世界最高の経営理論を基に作り出す経営戦略は、資金繰りで悩む企業はもとより、環境変化に適応する黒字成長企業を輩出している。
著書に『会社にお金を残す経営の話』(あさ出版)他多数。


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