満足せず、諦めず、人を育てる〜MIKATAグループ柴田昇氏の経営哲学〜
(画像=プロパートナーONLINE)

「事業は“人”がつくる」と語る、MIKATAグループ(旧SBCグループ)代表の柴田昇氏。
創業28年を迎え、従業員300名を超える業界屈指のグループへと
成長させた柴田氏の税理士人生を振り返りながら、その経営哲学に迫ります。


税理士人生の始まりは、「会計業界の虎の穴」で過ごした6年間

私の税理士人生は、10年ごとに3度の大きな転機がありました。
最初は、税理士になろうと決めた20歳のとき。
その3年後の1988年には、23歳で大阪の掛川会計事務所に就職しました。
私はそのとき3科目に合格していて、あと2科目は合格見込みという状況でしたから、
就職活動で応募した事務所からはすべて内定をいただいていました。
ただ、業界のことは全くわかっておらず、
掛川会計事務所に決めたのは「事務所の受付がきれいだったから」という理由です。
しかし、掛川会計事務所は、 “会計業界の虎の穴”と言われるほど、
名だたる税理士を輩出した事務所。
都市銀行と組んで富裕層マーケットを開拓し、相続対策に取り組むなど、
当時としては先進的な取り組みをしていました。
受付がきれいというだけで入った私は、
先輩たちにコテンパンにされながら修行を積みました。

もともと独立を視野に入れてこの業界に入ったものの、
仕事をするなかでだんだんと独立したいという思いは消えていました。
なにしろ、20代の若造が上場企業のオーナー社長の相続対策をお手伝いできて、
事務所内では幹部的なポジションを任されるようになっていたのです。
仕事のやりがいにも給料にも満足していました。
でも、30歳になった夏のある日、ふと「独立しよう」と思ったのです。
事務所や提携銀行といったバックボーンがなくなったとき、
自分の腕がどれだけ通用するのかを試してみたくなったんです。
それが、2度目の転機でした。


息子の事故をきっかけに「人を育てる経営」へシフト

私とパートさんの2名で創業したのは、1994年12月16日。
当時はインターネットもそれほど普及していませんでしたが、
富裕層マーケットで相続対策ができる税理士は少なかったこともあり、
紹介でどんどんお客様が増えていきました。

開業から10年後には、職員10名で売上1.5億円ほどの規模になりました。
数字だけ見ると順調に拡大していますが、
当時の私は「自分の事務所だから、自分のために自分で決める」というスタイル。
だから、職員もよく辞める。ただ、当時は私も若かったので、気にしないわけです。
お客様にはすべて自分が対応していて、事務所のことも把握できているし、
パワーもありましたから。
でも、長期的に考えたら、組織としてはいびつですよね。

そんな私に、3度目の転機が訪れました。
40歳のとき、当時小学3年生だった息子が交通事故に遭ったのです。
頭蓋骨を骨折するほどの重傷で、医師には「この3日がヤマです」と言われました。
医師と息子が必死に頑張っているなか、私にできるのは、
集中治療室で動けない息子を励ますことと、祈ることだけ。
「こんなとき、税理士には何もできない」と痛感しました。

幸いにも息子は後遺症もなく回復しましたが、この出来事をきっかけに、
「自分に残されたあと40年くらいの人生で、何ができるだろうか?」
と考えるようになりました。
そして出した答えが、「人を育てること」でした。

そのために、それまでなかった経営計画や経営理念を策定し、
「私たちは何のために仕事をするのか」
ということを職員に繰り返し話しました。
また、資産税だけではなく税務顧問や記帳代行など、サービスの幅を拡大。
資産税は確かに高単価で売上を伸ばしやすいのですが、対応できる人が限られますよね。
ですから、責任者を置いて、いわゆる会計事務所の通常業務にも力を入れ始めたのです。
すると、職員の定着率も上がっていきました。

満足せず、諦めず、人を育てる〜MIKATAグループ柴田昇氏の経営哲学〜
(画像=プロパートナーONLINE)

人を育てるために必要なのは、“諦めないこと”

最初に経営計画や理念について話したとき、職員はポカンと聞いていましたよ(笑)。
それまでそんな話はしていなかったので、当たり前です。
だから、日常の業務に落とし込みながら、繰り返し、繰り返し伝えることが必要です。

現在は、「赤字会社を黒字に。黒字会社をもっと黒字に。そしてひ孫の世代へ。」
というミッションを掲げていますが、言葉を理解して賛同することと、
行動できることは違います。
「税金を払ったら利益がどれだけ残るのか」
「その利益をもっと増やすためにはどうすればいいのか」
といった話を、毎月しっかり経営者としなければいけない。
そういったことを研修や日々のコミュニケーションで伝えていくのが、私の役割です。

人を育てるために大切なことは、“諦めないこと”。子育てと同じです。
親が子どもに「歯を磨きなさい」「靴を揃えなさい」「挨拶しなさい」
と毎日言い続けるのは、愛情があるからです。
親は子を絶対に見捨てない。
職員も、1回教えて変わるようなら苦労はしません。
理念も考え方も、根気強く言い続けることが大事です。
そして、その理念や考え方を、幹部が理解し、実行できていること。
「経営と、人生の、味方になる。」という理念を通して、
指導・育成ができているかどうかです。
それが事務所の文化になるのだと思います。


人を育てるため、拠点展開でポジションを与える

2007年に、初めてのM&Aで名古屋駅前支店を開設しました。
現在ある16拠点のうち、8拠点がM&Aによるものです。
支店展開やM&Aに力を入れ始めたのも、人を育てることが目的です。
人を育てるためには、ポジションが必要。
そして、責任あるポジションに就いて人に教えるためには、
自分自身が事務所のミッション、ビジョン、バリューを理解していなければなりません。

M&Aは、統合後に融合するまでに3年はかかります。
課題を洗い出し、変えること、変えないことを見極めて、
変えるべきことはスケジュールを決めて進めます。
変えるべきことの多くは、仕事のやり方や考え方です。
ここは、現場の職員としっかりコミュニケーションをとりながら進めることが重要です。
だから、支店長として指揮をとるのは、
私たちの考え方がしっかりと身についている職員でなければいけないのです。

満足せず、諦めず、人を育てる〜MIKATAグループ柴田昇氏の経営哲学〜
(画像=プロパートナーONLINE)

〔MIKATAグループのあゆみ〕

1994年 柴田会計事務所、株式会社柴田ビジネス・コンサルティング 設立
2005年 税理士法人SBCパートナーズ 設立
2007年 初のM&Aで名古屋駅前支店を開設
2009年 浜務松支店 開設(M&A)
2011年 東京支店 開設
2015年 横浜支店 開設
2016年 昇道商諮詢(上海)有限公司 設立 行政書士法人SBCパートナーズ 設立
2017年 豊川支店 開設(M&A)
2018年 なんば支店 開設
    司法書士法人SBCパートナーズ 設立
2019年 三島支店、徳島支店 開設(いずれもM&A)
    SBCパートナーズ税理士法人 設立
2020年 東京本社(現 恵比寿支店) 開設
2021年 福岡支店、新橋支店、上越支店(いずれもM&A)
    SBCパートナーズ社会保険労務士法人 設立
2022年 渋谷支店 開設
    東京本社を千代田区丸の内に移転
    栄支店 開設(M&A)
    MIKATAグループへとリブランディグ


現状に満足せず、業界の価値を上げていく

現在、300名を超えるグループになりましたが、10名のときも、
100名のときも、300名規模になっても、ずっと課題はあります。
けれど、経営者にとって一番の敵は、現状に満足すること。
人間、「こんなもんでいいか」と思ってしまったら、あとは衰退するだけです。

そのモチベーションを保つためにも、規則正しい生活を送って、元気でいることが大切。
私はトライアスロンをしているのですが、それは経営のパフォーマンスを上げるためです。
自然のなかで1日過ごし、そのパワーを経営に還元しています。

2022年9月には、SBCグループからMIKATAグループへとリブランディングを行い、
ミッション、ビジョン、バリューを再定義しました。
考え方や目指すべきものは、最初に経営理念をつくった20年前から変わっていませんが、
改めて言語化したことで、説得力が増したように思います。

〔MIKATAグループのミッション、ビジョン、バリュー〕

●ミッション
赤字会社を黒字に。黒字会社をもっと黒字に。そしてひ孫の世代へ。
●ビジョン
経営と、人生の、味方になる。
●バリュー
いつも、お客様目線で。
いつも、学びつづけて。
いつも、誠実に丁寧に。

そして、気持ちも新たに、次の目標である「2030年に売上200億円」を目指します。
その実現には、人材の育成が最も重要だと考えています。
事業は間違いなく“人”で決まります。人がいないと始まりもしないし、実現もしない。
ですから、採用と育成、定着の強化に徹底して取り組んでいきます。

さらに、近年希望者が減っている会計業界を人気のある業界にしたいと考えています。
そのためには、平均所得を底上げすることも必要です。
また、何よりも、経営者の人生に寄り添って
サポートするという私たちのビジョンを体現することで、
子どもたちに「会計人になりたい」と思ってもらえる業界にすること。
グループ一丸となって、その一翼を担いたいと思っています。

プロフィール
柴田昇氏
柴田昇氏
MIKATAグループ 代表
1964年生まれ。1988年9月、大阪市の掛川会計事務所に入所。
事業承継、相続対策など富裕層向け税務サービスに携わる。1994年12月に30歳で独立。
柴田会計事務所、株式会社柴田ビジネス・コンサルティングを設立。
相続・事業承継を中心に、オーダーメイドのソリューションを提供。
海外を含む16拠点、300名超のグループへと成長させる。
プロパートナー
記事提供
士業の成功をサポートする実践経営マガジン
『月刊プロパートナー』
月刊プロパートナーは、顧客獲得のためのマーケティング手法や営業力強化の実践的なメソッド士業事務所の経営に必要な情報、ノウハウをわかりやすく解説する最強の実践型の経営マガジンです。
その他にも他士業や他業界との連携など、今日から使える情報が満載です。