動画を活用したマーケティングが注目されるなか、
YouTubeとTikTokで幅広い世代から注目を集め、
「SNS弁護士」として活躍する、東横こすぎ法律事務所・代表の北川貴啓氏。
動画配信の効果のほか、弁護士を目指した理由や今後の展望などをインタビューしました。
Q1. 北川先生が弁護士を目指したきっかけを教えてください。
ドラマや映画で見る弁護士に憧れを抱いていたことがきっかけです。
兄妹が医療関係の仕事をしていて、
自分も誰かのピンチのときに助けられる仕事に就きたいと考えていたので、
弁護士の仕事はぴったりだと思いました。
また、実は、昔からテレビの世界がすごく好きで、
「自分もいつかテレビに出たい」という目標もありました。
士業の先生をはじめとした専門家や文化人の方がテレビに出ている姿を見て、
自分も弁護士という立場でなら、芸能の世界で活動できるのではと考えたのです。
大学生のときから勉強をスタートし、27歳で司法試験に合格。
一年間研修を受け、28歳から3年間は神奈川県川崎市の事務所で所属弁護士として勤務しました。
その後2016年に、弁護士会の同期が設立した事務所に、共同代表という形で就任。
そして同時に、芸能プロダクションにも所属しました。
現在は、共同代表を務める事務所で仕事をしながら、
法律分野の解説でテレビやラジオに出演しています。
Q2.「SNS弁護士」として、
YouTubeやTikTokでの配信をはじめた理由は何ですか?
テレビ出演を実現するために、ブランディングを強化したいと思っていたためです。
2019年からYouTubeをはじめたのですが、このときに投稿していた内容は、
時事ネタに絡めた法律の豆知識を、アニメーションを使って解説するというもの。
やり始めていくうちに、顧問先の獲得も狙いたいなと思ったので、
企業向けの法務解説動画もアップするようになりました。
Q3. 配信をはじめてから大変だったことと、
どう解決したかを教えてください。
スタートしてから半年ほどの間、思うように再生回数が伸びなかったことです。
このままだといけないと思い、YouTuberやマーケター向けの勉強会やコミュニティに積極的に顔を出し、
SNSの専門知識を持っている人たちに相談をしました。
アドバイスを受けて、発信の目的を「集客」に絞り、
ターゲットは「個人で頑張っているYouTuberやインフルエンサー」にすることを決意。
こういった方たちは、日頃から熱心にYouTubeを見ていますし、
この職業に特化した顧問弁護士は当時まだいなかったので、
知ってもらうきっかけになるのではと考えました。
また、彼らに見てもらえるよう、投稿内容も見直し、
時事ネタを減らして誹謗中傷や著作権などに関する短い動画をアップするようにしました。
そして、2019年後半からTikTokもスタート。
目的とターゲット、投稿内容を見直したことで、徐々に再生回数が伸び、
YouTubeのチャンネル登録者数を約1万3,000人、
TikTokのフォロワーを約2万1,000人に増やすことができました。
Q4. 毎日動画の投稿を続けるコツを教えてください。
作業負担を減らすために、素材をまとめて準備しています。
動画の撮影はすべてスマホ。
踊っている動画は、スタジオを借りて60パターンくらいを撮り溜めしています。
解説動画は自宅で撮影したものをストック。
編集もスマホのアプリで行っていて、裁判所への移動時間や、
土日にまとめて作るなど、スキマ時間を活用して制作しています。
Q5. 投稿をバズらせるために工夫していることは何ですか。
わかりやすさとインパクトを意識しています。
短い動画は、どの世代にも伝わりやすいように、○×クイズで解説。
インパクトを与えるために、寝そべったまま話したり、
ダンスをしながら法律を解説したり、意外性のある動きを取り入れています。
ダンスは、大学生のときにブレイクダンスを経験していたこともあって、
「弁護士が踊っている動画なんて見たことない。自分が個性を出すにはこれしかない!」
と思って始めました。
最初はすごく恥ずかしかったのですが、ありがたいことに動画がバズり、
多くの方が注目してくださるきっかけになりました。
一番再生回数が多いものは、YouTubeだと15万回、TikTokだと52万回です。
実は、注目を集めたぶん、アンチコメントもたくさん来たのですが、
めげずに続けていくと応援してくださる方がそれ以上に増えてきて、とてもやりがいになっています。
また、じっくり見てもらえる長めの解説動画と、瞬発的に再生回数が増える短い動画を、
バランスよく投稿することも心がけています。
長期的に閲覧してもらうためには、10年後、20年後にも、
法律の情報が必要な人に見てもらえるようなチャンネルづくりが重要です。
そのため、短期間でバズる動画だけではなく、10分程度の解説動画も適宜配信し、
長いスパンで再生回数を伸ばしていくことも意識しています。
Q6. 動画の再生回数やフォロワーが増えたことで、
どのような効果がありましたか?
SNS経由で顧問先や案件が獲得できるようになったことと、
若い世代にも知ってもらえるようになったことです。
交通事故や離婚、SNSなどの個人のトラブルや、企業からの顧問弁護士の依頼まで、
月に10〜15件ほど相談をいただき、そこから5件くらいが成約に至っています。
また、特にTikTokの視聴者は中学生、高校生、大学生など、いわゆるZ世代が多いので、
SNSや友人間のトラブルについての相談も多くあります。
若い世代に知ってもらい、将来彼らが大人になってピンチに直面したとき、
私を思い出してもらえる種まきになればいいなと思っています。
弁護士に何か相談をするときって、
一生に一度あるかないかの非常に重要なタイミングであることが多いですよね。
動画があることで、私の顔や話し方、キャラクターを事前に知ることができるので、
安心して相談をしていただけているのだと感じています。
現在、全国各地から相談をいただいているので、
他県はリモートで対応を行い、柔軟にサポートできる体制にしています。
Q7.幅広く相談が来ているとのことですが、
特に得意とする分野は何ですか?
Webに関連するサポートです。
動画配信をはじめたときに、「SNS弁護士」とブランディングしていくからには、
もっとWeb分野に詳しくならないといけないと思い、
文献を読んだり、弁護士の先生方のオンライン講義に参加したりして勉強しました。
現在、案件の半分くらいはWeb関連の個人事業主のサポートで、
トラブルが起きたときの相談や、新しいサービスの規約づくりなどに対応しています。
私自身もWebで発信をしているので、お客様と同じ目線に立って寄り添いながら、
専門的なアドバイスができていると感じています。
Q8. 仕事のやりがいを教えてください。
人生のピンチのときに選んでもらえること。
お客様が困っているときに私のサポートが役に立ち、
感謝の言葉をもらえると非常にやりがいを感じます。
また、SNSをはじめてからは、
学生さんなど若い世代の方から感謝や応援の言葉をいただくことも増えてきました。
「キタガワ先生のYouTubeを見て勉強して、自分も弁護士を目指します」
という手紙をもらったときは、本当に嬉しかったですね。
Q9. 今後の目標を教えてください。
事務所を拡大していくより、個人のブランド力をもっと高めていきたいです。
困ったときに「あの弁護士の先生がいた」とすぐに思いついてもらえるくらい、
個人の力を高めることができれば、結果的に案件が増えて、
売上にもつながっていくのではと考えています。
そして、テレビでバラエティにも出てみたい!
独立した2016年から芸能プロダクションにも所属していたので、
テレビやラジオ出演で法律分野の解説は経験してきたのですが、
スタジオで瞬発的なやりとりをするバラエティにも出てみたいと思っています。
Q10. 座右の銘を教えてください。
「人生の後半戦に備える」。以前読んだ本に書いてあった言葉です。
これから先に楽しいことが待っていると思えば、
今辛いことがあったとしても、目の前のことも頑張ることができます。
- プロフィール
2011年に司法試験合格。神奈川県川崎市内の法律事務所で勤務ののち、
2016年に東横こすぎ法律事務所入所。
共同代表弁護士を務める。「SNS弁護士」としてYouTube、TikTokを中心とした発信に注力。
テレビ、ラジオなどのメディア露出も積極的に行い、
地域エリアの相談から全国各地のWebに関連したサービスまで、幅広いサポートを提供。