開業4年で顧問先300社以上、売上2億円超を達成した
キャンバス社会保険労務士法人の創業者兼顧問・五味田匡功氏。
全4回にわたって紹介する、「“五味田流”事務所経営の秘訣」の第3回は、
社労士事務所における営業・販促について解説します。
減り続ける企業、増え続ける社労士事務所
近年、全国的に中小企業の数は減り続けており、1968年には約720万社あった企業数は、
2016年には約半分の386万社にまで落ち込んでいます。
その一方で、社労士事務所は増加傾向にあります。
そのため、社労士一人あたりが対応する企業数は、
2002年には180社でしたが、2016年には89社と半減。
これまで通りのやり方では、顧問契約獲得が厳しい状況になってきています。
こういった現状をふまえ、私たち社労士事務所は、
改めて、営業・販促の基本や、コンテンツづくりのノウハウ、
Webマーケティングのコツ、無駄のない業務効率化を学んで、
企業のニーズを掘り起こし、それに対応できる体制構築が必要です。
コンテンツの作成、販促の重要性
顧問契約を獲得するための基本的な営業活動には、
ホームページやパンフレット、チラシなどの販促物が必要です。
事務所のホームページもなければパンフレットやチラシもない状態では、
人から紹介を受けることも叶いません。
ここで、まずは事務所の宣伝ツールとなる販促物について、
以下の項目を実施しているか確認してみましょう。
□事務所のホームページがあり、常に情報が更新されているか
□来所されるお客様向けの会社案内は最新のものであるか
□サービスごとの宣伝材料が整っているか
□Webと紙で記載内容と見せ方を変えるなどの工夫しているか
□SNSでの宣伝を適切に行っているか
これらは、集客へつなげるための、最初のきっかけづくりのツールです。
どんな営業方法を取ったとしても必要になるものであり、
営業・販促の土台になるので、サービスごとに適切なコンテンツを作成しましょう。
「直接営業」で特に重要となるのはWeb
社労士事務所では、上記の表のように、
「直接営業」と「間接営業」の2種類の集客ルートがあります。
集客ルートは、「この方法がよい」という決まりがあるわけではありません。
各自の目標や立場、持っているリソース、
掛けられるコストなどによって活用すべきルートは変わってきます。
上記の表に挙げた14の営業方法のなかで、
特に重要となるのが、直接営業の「Web」です。
近年ではスマートフォンでの情報収集や問い合わせが主流化しており、
「スマホで見やすい情報提供」を工夫する必要もあります。
まずは初見で良い印象を持ってもらえるよう、
事務所のイメージをしっかり落とし込んだ、
クオリティの高いWebページを準備しましょう。
Webマーケティングについては、
アメリカの経営学者で現代マーケティングの第一人者として知られる、
フィリップ・コトラーが定義した3つの「P」が参考になります。
1.People
サービスを提供する担当者によって差が出ないように、
全員で方針やサービス内容、料金など共通の認識を合わせておきます。
2.Process
顧客への対応の仕方や結果が大きく変わる業務は、
フローのルールなどを事前に確定させておき、事務所内で方針やサービス内容、
料金など共通の認識を合わせておきましょう。
3.Physical Evidence
社労士のサービスそのものは目に見えないものです。
ですが、事務所のWebサイトやパンフレット、
メルマガなど、可視化させることは可能です。
可視化の方法として、たとえば、オフィスの内装なども、
顧客への印象を常に意識するとよいでしょう。
士業事務所のサービスには、サービスの形が目に見えない、
他社のサービスと比較がしづらいといった特徴があります。
しかし、コトラーの「3つのP」を意識することで、顧客からの信頼を得て、
ブランド力の強い事務所を作り上げることができます。
セミナーを開催して、リアルなつながりを構築する
また、直接営業の「セミナー」についても、
社労士事務所にとっては重要なマーケティング方法となります。
顧客にとって、直接事務所に問い合わせをするよりも、
「まずはセミナーに参加してみる」ほうがハードルが低いものです。
そこで、セミナーを開催し、見込み客を獲得することを視野にいれて、
マーケティングを行います。
セミナーは、大きく分けて以下の3つのパターンがあります。
■ 情報発信型
情報を伝えることが目的です。法改正や就業規則のポイントなど、
目的は事務所のブランド力アップです。
■ 集客型
セミナーの集客数にこだわった形式です。
著名なゲスト講師を呼ぶなどして、集客します。
参加者のリストをその後の営業アプローチに使用します。
■ 新規獲得型
1回あたり最低1件以上のクライアント獲得を目指すセミナーです。
助成金や黒字経営などを切り口に、迅速に問い合わせを貰うことを狙います。
セミナーと助成金無料相談などの「入口商材」を組み合わせましょう。
いずれのパターンでも、セミナーを開催する目的を明確化し、
参加してくれた方に何を提供し、どう行動してもらいたいか、
その目的を叶える内容のセミナーを企画しましょう。
「間接営業」で紹介案件を獲得するために必要なこと
間接営業(=紹介)は、事務所のことをよく分かっている人からの紹介なので、
質がよい、一度信頼関係を構築すれば、
その後も関係が途切れないといったメリットがあります。
一方で、社労士事務所のネットワーク構築がうまくいかず、
なかなか紹介を得ることができないという悩みが多いのも事実です。
では、社労士が間接営業で顧問先を獲得するためには、
どのようにネットワークを広げていくべきか、
どうやって案件を獲得していくのかについて、紹介していきます。
・選ばれる社労士になる
みなさんが「紹介をもらいたい」と思っている紹介元には、
同じように多数の社労士がアプローチをしているものです。
そのようななかで、「選ばれる社労士になる」ためには、
どのようにすればよいでしょうか。
まずは、相手と信頼関係をしっかりと構築し、
そのうえで相手にどんなメリットがあるのか、
具体的にどんな案件をどんな状態で紹介をもらいたいのかをしっかりと伝えましょう。
その際、この3つのポイントは必ず押さえておくようにしましょう。
- こちらの目的や希望を伝える前提として、信用を得る
- こちらの要望を伝える際、相手のメリットも明確にする
- もらいたい紹介案件を具体的に伝える
・会計事務所との連携
会計事務所との連携は、社労士事務所の顧客拡大のために最も有効な手段です。
アンケート調査では、90%以上の社労士事務所が
「他士業からの紹介が多かった」と回答しています。
会計事務所と提携をしようとする際に、名刺交換まではできても、
実際に連携するまでには至らないものです。
会計事務所は、1事務所あたり、5~6名の社労士と付き合いがあるといわれています。
このなかから、選ばれる社労士にならなければならないのです。
交流会で税理士と名刺交換した際は、挨拶だけで終わらせず、
交流会後に、必ず提携面談という形で1対1で会うようにしましょう。
提携面談では、相手にどういった顧客がいるのか、
提携社労士の有無や顧客の中で出てきそうな
社労士業務のニーズ等は必ず確認するようにします。
そのうえで相手の会計事務所の状況・ニーズに合わせた情報提供をします。
また、その後の進捗報告や御礼も忘れないようにしましょう。
・営業の標準化
お客様と末永く信頼関係を築くために、職員すべてが適切な営業活動を行えるよう、
以下の4つのフローでマニュアルを作成し、事務所内でのルールを徹底していきます。
■ 問い合わせ対応
■ 初回面談
■ クロージング
■ その後の対応
今回は、社労士事務所における営業・販促活動についてお伝えしました。
企業数が減り、社労士事務所が増え、
システムに業務を奪われつつある現代において、
需要と供給の逆転が起こり始めています。
この逆転現象にいち早く気づき、新サービスの提供や
新体制の構築などの対応施策を取ることが、事務所の成長のカギとなります。
そのためには、まずは営業・販促活動の基本をしっかりと押さえることが何よりも大切です。
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- プロフィール
税理士事務所勤務時代に社労士事務所を立ち上げ、人事労務設計の改善サポートに取り組む。
開業4年で顧問先300社以上、売上2億円超達成。
近年では企業の人を軸とした経営改善や働き方改革に取り組んでいる。